【広報ふじ平成元年】お父さん、出番ですよ
お父さんは仕事、お母さんは家事と子育てというのは、一昔前の家族のパターンとなってきているようです。現に、スーパーで買い物をするお父さんや、土曜日には保育園に子供の迎えにくるお父さんが見られるようになりました。
こうした背景には、労働時間の短縮や女性の社会進出などによる価値感の変化が考えられ、家族の関係や役割が微妙に変化しつつあると言えます。
そこで実際、父と子の関係はどうなのか、市内3の小学5年生123人にアンケートを行いました。今回は、その結果を参考に父子関係を考えていきたいと思います。
さて、お父さん、出番ですよ。
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小学5年生123人に聞きました あなたのお父さんは?
この「お父さんアンケート」は、9月の13・14日に市立丘小学校・吉永第一小学校・田子浦小学校の3校に担当者が直接おじゃまし、各校の5年生1クラスずつ計123人に記入していただきました。
お父さんの休み、父と子の触れ合いの様子、子供の要望などを率直に聞いてみました。
Q−1 あなたのお父さんは何曜日が休みですか
週休2日は約3割
休日で一番多いのは「日曜日」で、35%のお父さんが休みです。
これに対し、週休2日のお父さんは、隔週休みまで含めると約3割ぐらいでした。
「特に決まっていない」という答えが約2割ありますが、これは自営業の人以外に日曜出勤の多いお父さんや交代勤務のお父さんが子供の目から見て「特に決まっていない」と映っているのかもしれません。
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Q−2 あなたのお父さんは前と比べて休みがふえましたか
6割が変わらない
6割のお父さんの休みは、ふえも減りもしていません。減った人が13%で、ふえた人は2.4%です。
子供から見ると、お父さんの休みは「減ることはあってはふえることはあまりない」という感じでしょうか。
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Q−3 あなたのお父さんは休みのとき主に何をしていますか
家でこまめに働く反面余暇も積極的に過ごす
一番多いのは家の仕事で27.7%。休みの日にも家でこまめに働くお父さんの姿が目に浮かびます。
また、スポーツと趣味、レジャーを合わせると42.3%に達し、余暇を積極的に過ごしているお父さん像もうかがえます。
その一方で何もしないお父さんは18.7%。ふだんの仕事の疲れで何もする気がおきないお父さんもいるのでしょうね。
その他の意見の中には 「休みの日も家で会社の仕事をしている」というモーレツお父さんが3人いました。
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Q−4 では、あなたがお父さんと一緒にいる時間は,ふえましたか
共通の時間をなかなか持てない
お父さんと一緒にいる時間が減ったと答えた子供が、ふえたという子供を上回りました。
この結果を質問2の結果と合わせて考えると、お父さん自身の休みがふえた人が14人いたのに対し、一緒にいる時間がふえた人は25人いることから、子供と一緒の時間を持とうとしている様子かうかがえます。
しかし、逆に休みが減った人は16人なのに、一緒にいる時間が減った人は41人もいることから、共通の時間を持てないお父さんもそれ以上に、ふえているということになります。
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Q−5 あなたはお父さんとどんな事を一緒にしますか、一つか二つ書いてください
スポーツや買い物を一緒に
質問5の答えは複数回答を認めたこともあって、25種類166件の答えがありました。
同じような答えをまとめると、一番多かったのはキャッチボールで30件(18.1%)、以下買い物25件(25.1%)特に何もしない16件(9.6%)勉強10件(6%)などの順でした。
答えをジャンル別に整理し直すと、スポーツの54件(32.5%)、ゲーム・ファミコンの19件(11.4%)などが多い答えでした。
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Q−6 あなたはお一父さんが好きですか
好きな人が大多数
お父さんを「好き」と答えた人が93人(75.8%)で、多数を占めました。
お母さんに配慮して「どちらでもない」と答えた親孝行な子供もいたようで、ほとんどの子供が、お父さんを好きと考えていいと思います。
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Q6-1 「好き」と答えた人に聞きます なぜ好きですか、理由を1つ書いてください
やさしいからが一番
答えは21種類ありました。一番多かったのは「やさしいから」の23件(24.7%)で、以下、主な答えは「勉強や、わからないことを教えてくれるから」が17件(18.3%)、「遊んでくれるから」が15件(28.1%)でした。
同じような傾向の答えをまとめてみると「どこかへ連れて行ってくれるから」などを含めた「遊んでくれるから」という答えは27件(29%)、「やさしいから」「明るい性格だから」というお父さんの性格を理由にした答えも27件ありました。なお、この答えは女の子に多くみられたのが特徴でした。
一方、「勉強やわからないことを敢えてくれるから」「困ったときに力になっているから」というような、お父さんに頼りにしている答えも22件(23.7%)ありました。
「物を買ってくれるから」「お金をくれるから」という現実的な理由をあげた子供が11人(1.8%)おり、現代っ子ぶりがうかがえました。
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Q−7 あなたがお父さんにしてほしい事を1つ書いてください
お父さん、遊んで
子供たちのお父さんへの要望を聞いたわけですが、33種類の答えが寄せられました。
一番多いのは「遊んでほしい」「どこかへ連れていってほしい」の各20件(16.3%)で、次は 「ファミコンのカセットなどいろいろな物を買ってほしい」が13件(10.6%)でした。要望についても同じ傾向の答えをまとめてみると、レジャーも含めた「遊んでほしい」は53件(43.3%)で半数近くを占めました。
以下、「早く帰ってきてほしい」「もっと休んでほしい」という様な触れ合い時間の増加を求める答えが17件(13.8%)、「たばこを吸わないで」 「長生きしてという健康を祈るものが八件(6.5%)ありました。
その他の答えでは、「子供に物を頼まないで」「自分の非は認めて」という厳しい意見や、「夜、お母さんと遊びに行かないで」という夫婦仲がよすぎるお父さんへの要望もありました。
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まとめ
これから21世紀に向かって余暇の時代になると言われますが、この結果をみる限り、大多数のお父さんは仕事に追われているようです。
しかし、限られた時間の中で多くのお父さんは、家の仕事や余暇活動あるいは親子の触れ合いにと能動的に生活している様子がうかがえます。このアンケートは、あくまで子供の目から見たお父さんの様子であり、必ずしも正確でない点があろうかと思いますが、「お父さんは、まあ頑張っている」と言えるのではないでしょうか。
紹介します 父と子のユニークな関係 元気印の父と子全員集合
一昔前なら家の大黒柱として大事にされたお父さん。ところが時代は変わり、職場では仕事、家庭でもサービスを求められ、疲れているお父さんも多いとか。
しかし、その反面、どんなタイプにせよ「お父さん」、「パパ」あるいは「おやじ」として元気いっぱい頑張っているお父さんも大勢います。
ここでは、市内のいろいろな父と子を紹介します。
親が一生懸命にやれば必ず子に伝わる
荻沢幸男さん、成昭君、英幸君(久沢西)
18年来、ボランティアで少年野球「鷹岡ストロングホークス」を指導し、鬼監督として名をはせている萩沢孝男さん(46歳)。長男の成昭君(富士宮北高3年)と次男の英幸君(鷹岡中2年)が、「物心ついたときには野球をしていた」と言うほど、野球に情熱をかけていました。
ところが、「小学生になっても当然野球をやるもの」と思っていた2人の子供は、ひょんなことから相次いで柔道部へ。「親子で共通の話題を」と思っていた荻沢さんですから、最初は戸惑いましたが、応援するうちにいつしか自分も柔道へ。元来熱血漢の荻沢さんのこと、すぐに熱中したのは言うまでもありません。萩沢さんは「親が一生懸命にやれば必ず伝わるものがある」と語ってくれました。
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( 写真説明 ) (左から)中2では市内チャンピオンの英幸君、章男さん、高校生チャンピオンの成昭君
エッチな話もへっちゃら何でも話せる父と子
菅井良美さん、大士(ひろし)君、由里香さん(西比奈町2)
「大士、お前なんで目をはらしてんだ」「エへへ。友達とけんかしたんだ。先生にひどく怒られたよ」こんな調子で菅井家では、親子が何でも話し合います。子供にとっては親に知られたくない失敗談や、親にとっては子供に聞かれると困る性の話まで、とにかく何でも話題になっています。
これというのも、「明るい家庭は会話から」という菅井良美さん(40歳)の方針からです。長男の大士君(吉原三中1年)は、それが当たり前として育ってきたので、自分から何でも話します。ですから、菅井家の夕食どきは、にぎやかなこと。菅井家に親子の秘密はありません。
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( 写真説明 ) 吉永一小校区の子供会会長も務める良美さん(中央)と、大士君(左)、由里香さん
親子のチームワークで高級肉牛の育成をめざす
服部晴太良さん、要一郎さん(八王子町2)
富士市でもだんだん少なくなってきた畜産農家。服部晴太良さん(66歳)・要一郎さん(40歳)親子は、昭和34年から畜産を始め、現在は肉牛約75頭を飼う市内有数の畜産農家です。飼育作業は機械化され、昔に比べれば随分楽になったと言いいますが、なんせ生き物相手の仕事、気が抜けません。2人のチームワークが欠かせないわけです。
作業は親子で分担していますが、飼い方も自然と個性が出るとのこと。服部家の特別なノウハウでもあるのかと尋ねれば、声を合わせて「そんなもん、長年の勘だよ」と言い切ります。牛肉の自由化など畜産農家にとって厳しい環境については「高級な肉牛づくりをすればなんとかなるよ」と自信の笑い。ことしの畜産共進会でも見事市長賞を受賞しました。
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( 写真説明 ) 市長賞に輝いた牛と晴太良さん(左)、要一郎さん
手ほどきを受けた将棋で父を追い抜いたけど……
島田克吉さん、雅輝君(富士中島上)
将棋を父親から習った人も多いことでしょう。島田雅輝君(富士高3年)も、将棋好きのお父さん克吉さん(44歳)から小3のとき手ほどきを受けました。当時、克吉さんの将棋仲間が家によく来たこともあって、雅輝君は大人の間でもまれ、めきめきと腕を上げました。
小5のとき、初めて参加した小学生の県大会で東部2位となり、それからは親子で毎晩のように将棋板を囲みました。以後、県では絶えず1位か2位の腕前です。
雅輝君がお父さんに勝ったのは中2のとき。「最近では負けると悔しいのでほとんどやりません」(克吉さん)とのこと。しかし、雅輝君にとってお父さんは怖い存在。将棋のように立場が変わるのはまだ先のようです。
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( 写真説明 ) 攻めの将棋の克吉さん(左)と臨機応変型の雅輝君
自主性を大切にしざっくばらんな父と娘
熊谷芳夫さん、志保さん、奈保さん、早由里さん(水神)
熊谷芳夫さん(42歳)は、3人の娘に囲まれた優しいお父さん。芳夫さんの子育て方針は、子供の自由をできるだけ尊重すること。「自主性を大切にしたいので、勉強しろなんて言いませんね。でも、時に自由を通り越してわがままを言うことがあります。夏休みにそんなことがあったので、長女の志保(高1)を電気工事現場(自営)へ通れて行ったら、理解したようです」とピリッとした点も。そうしたしつけからか、父子関係は明るく、ざっくばらん。中2の次女奈保さんといまだに一緒におふろへ入ることもあるとか……。
また、今、親子でよく話題になるのが、ラッパ。志保さんはサックス、奈保さんはトランペット、そして消防団に入っているお父さんは消防のラッパ。それぞれ全く逮う楽器ですが、ラッパ談義に花が咲きます。
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( 写真説明 ) 左から芳夫さん、早由里さん、この日はサックスを手にした奈保さん
お父さん談義 ミステリアスなお父さんになろう
人間は十人十色。人それぞれ違った個性があるように、父と子の関係についてもいろいろなタイプがあって当然です。ですから、親子関係や父親の役割に 「これが絶対正しい」などというものはありません。
また、親と子の関係は、そのときの社会環境や経済環境によっても大きく左右されます。
しかし、その一方で昔から脈々と変わりない親子関係の部分もたくさんあります。
今回の特集の締めくくりとして、「父親とは何ぞや」と考えながら父親を実践している富士東高校教諭の丸茂湛祥さんにお話を伺ってみました。
丸茂湛祥(まるもたんしょう)さん(伝法・49歳)
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県立富士東高校の国語の先生。文芸・美術・音楽などにぬきんでた才能を持ち、その実績から今春「教育文化奨励賞」を受賞。富士市を代表する文化人の一人。立正大学の講師、本蔵寺の住職、伝法保育園の理事もかね大変忙しい。大学3年・1年・高校2年の3男の父。
母親的になってきた父親
−子供たちと身近に接する立場から、最近の父と子の関係をどう見ていますか
父親が母親的になってきていますね。そして、子供と平等なイメージが強くなってきています。父親と母親の役割は違うのですから父と母が同じ立場になる必要はないと思います。母親が子供を抱きかかえるのなら、父親は背負うような違いかな。
−では、最近のお父さんをどう思われますか
私は父親が、極端に言えは子供にこびて触れ合っているような感じがします。親子が触れ合うこと自体はとても大切なことですし、子供の立場を考えてあげるのもよいことです。でも、子供の御機嫌をとるかのようなことはよくないんじゃないでしょうか。
−丸茂さんの考える父親はどういうイメージですか
父親は子供と遊んでやることも大切ですが、一人の人間として子供が持つことのできない世界を持っていることが大事です。ミステリアスな部分を持っているお父さんということかな。子供がそれをかいま見て「へえーお父さんてすごいんだな」と言うようなね。まあ、それは文化的なものでもスポーツでも趣味の活動でも、何でもいいわけですよ。お父さんの実力を見せつけることによって、自然に畏敬の念と言うか信頼感のようなものが子供心に育っていくのではないでしょうか。
家族のアイデンティティを
−丸茂さん御自身は父親としてどんな振る舞いをしてきたのでしょうか
私は4つのとき父が戦死したので父親像がありません。それで、学生時代を過ごした京都の友人の家庭が印象深かったので、まずそれをまねしました。その家は、元旦に父親を先頭に家族で謡曲をうなるのです。それを我が家にも取り入れ、うちの正月は今でも謡曲で始まります。
−「鶴亀」などうなるわけですね
そうです。うちではほかにもいろんな日を決めています。5月20日は、エンドウ豆の好きだった祖母の命日なので、エンドウ豆の御飯を食べるとか、9月15日はうちの保育園が火事に遭ったのでみんなで冷たい物を食べるとか、ほかにも幾つか行事を決めて家族のアイデンティティのようなものをつくりました。
ピグミー族は日本人より劣るか?
−子供たちと日常的に触れ合った話はありますか
何年か前になりますが、私は子供たちの思考が足りないと思い、家庭文化講座を一時期毎晩聞きました。私が読んだ本でおもしろかった部分のコピーとかを、妻と子供を前に聞かせるのです。また、「土人のピグミー族は日本人より劣っているかどうか」などを論じ合ったりもしました。
−子供たちは嫌がりませんでしたか
子供たちは、最初はいやいやつき合うという感じでしたが、慣れてくると意外におもしろがって、友達を連れてきたりもしました。うちはお寺ですから、子供たちに得度もさせなければなりませんから、仏教やお経の話もしましたね。まあ、子供の側からすれば、「おやじがするんじゃ聞かないとまずい」という被害者意識もあったんでしょうね。(笑)
−女性の社会進出と父親の役割については、どうですか
女性の社会進出には、経済的な問題と社会的な役割という二面性がありますね。夫婦は感情と信頼を相互に持ち、子供たちが安心できる家庭をつくらなければなりません。女性が働けば、男性の協力は欠かせませんし、生活の中で合理的にしなければならない点が出てくるでしょうね。しかし、合理化する度合いで、本来人間として楽しむべき生括の部分〜食事や団らん、余暇流動など〜を忘れてはいけませんね。お父さんが料理の好きな人なら、家族でカレーをルーからつくってみるなどすれば楽しいんじゃないかな。
本物の生活を大切に
−これから21世紀に向かって余暇の時代が来ると言われますが、父親の役割や家族はどうなると思いますか
世の中どんどん便利で快適になってきています。でも、「このままでいいのかな」って私はよく思います。食べ物の四季はなくなってきているし、家にいるだけで映像上のいろいろな体験ができてしまうなど、どれをとっても人間本来の生活実感がなくなっています。
−本物を忘れてしまうわけですね
生活実感のある本物の生活を大事にすべきですね。それにはお父さんが率先して汗をかき、本物の生活を示すベきです。きっと人々は合理的になりすぎた生活に息詰まりを感じ、余暇は原始的な手づくりの生活を求めるようになるでしょう。
−ありがとうございました
- 写真あり -
( 写真説明 ) 熱心に語ってくれた丸茂湛祥さん
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