原田の永明寺(ようめいじ)には不思議な話が幾つか伝わっています。今回は 「永明禅寺史」から鎧が淵の主の話を紹介します。
淵に飛び込んだ小坊主
永明寺の西側、滝川に鎧が淵というところがあります。ここは、昔、大きな淵になっていました。
昔々のことです。和尚さんが小坊主に「鎧が淵に木が覆いかぶさっている。道や墓地が暗くなるので枝を切りなさい」と命じました。
翌日、小坊主は木によじ登り山刀(やまがたな)で枝を切っていましたが、誤って山刀を淵に落としてしまいました。怒った和尚さんは、「潜って拾ってきなさい」と言いました。
鎧が淵はとても深く、水のように冷たい水が渦を巻いています。その上、この淵には主が住んでいる言いわれているので、小坊主はとても潜る気にはなれません。因っていると、何と水面に山刀が浮いているではありませんか。小坊主は慌てて淵に飛びとみました。
機(はた)を織っていた主
ところが、山刀は幻で、淵の底には立派な御殿があり、奥で美しい女の人が機を織っていました。
小坊主が近づくと「おまえは、山刀を拾っていかないとしかられるので返してやるが、私のことはだれにもしゃべるでないぞ。私はこの淵の主たが、おまえの山刀で織物がこんなに切れてしまった。今度、落としたら許さないぞ」とと言い、山刀を返してくれました。
小坊主はお寺に帰ると、和尚さんに「3年の間、おまえはどこへ行っていた」としかられました。
主がいるから近寄るな
原田の大石隆男さん(66歳)は、「子供のころ、主がいるから近寄るなと言われたよ。でも、みんなで遊びに行き、高さ5メートルぐらいの淵から飛び込んだね。武士が鎧を隠したところという説もあるよ」と語ってくれました。
大石隆男さん
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( 写真説明 ) 鎧が淵