一般に脱腸と言われているもので、乳幼児や高齢者に多くみられ、鼡径部(太もものつけ根あたり)に主に小腸などの腹腔内臓器を含む腹膜の袋(ヘルニアのう)が脱出する病気です。ほっておくと徐々に大きくなりヘルニア内容が戻らなくなる嵌頓(かんとん)などの問題が出てきます。以前はヘルニア帯を使うこともありましたがそれでは完全に治すことは困難で、脱出部の筋肉の萎縮などの害が目立ちます。現在では麻酔の発達により安全に手術ができるため、手術が確実な治療法です。小児ヘルニアでは自然治癒が20〜35パーセントくらいあると言われています。しかし、治るものはほとんどが1年以内であり、1年以上認められる場合は、手術をするのがよいでしょう。
嵌頓ヘルニアは、ひどくなると脱出した腸などの循環障害や腸閉塞となり、嘔吐、腹部膨満などの症状を起こしたりしますので、早期に腹腔内へ戻す(整腹)が必要です。特に自分で症状を訴えられない乳幼児は注意が必要です。
嵌頓をくり返す乳幼児は、1歳未満でも手術をするのがよいでしょう。
小児の手術では、ヘルニアのうを単に根元から取るか、それに軽度の周囲補強を加えるものでよいのですが、成人では、ヘルニアのうの切除と共に脱出部周辺の腹壁を確実に補強する方法が選択されています。 《富士市医師会》