大渕・富士本西のヒノキ林の中に、静かにたたずむ大きな一本の杉の木があります。
今回はこの一本杉の話を河野政信さん(富士本西・66歳)に語っていただきました。
河野政信さん
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どこからも見えた杉
昭和25・6年ごろまで、富士本と鷹岡や杉田(富士宮市)をつなぐ大切な道がありました。私が子供のころでも、人々は馬に米や麦を背負わせ、杉田のすりや(精米所)に行ったり、遠足といえば必ずその道を通るという重要な生活道路でした。
その道の目印となったのが、一本杉です。当時の富士本周辺は、畑が多く、道のわきにスッと伸びた一本杉は、大層目立ちました。 その姿は富士や吉原の町からも見ることがでさました。
遠足で聞いた由来
実相寺へ遠足に行った帰りのことです。私たちは一本杉にたどり着くと、木陰で休憩しました。
すると、いたずら坊主が一本杉におしっこをしました。それを見ていた先生は「こらっ」と注意し、この木の話をしてくれました。
「昔々のこと、ある夫婦が道に迷ってしまいました。お母さんはおなかに赤ちゃんがいたので、やっとの思いでここまでたどり着きました。ところが急に生まれそうになり、その場で生みましたが、赤ちゃんは既に死んでおり、お母さんも亡くなってしまいました。お父さんは遺体を運ぶこともできず、その場に穴を掘り、手厚く葬りました。そして一本の杉を植えました。それがこの杉だよ。」
元気がなくて残念
現在の杉は高さが約30メートルありますが、周囲をヒノキに囲まれ、まったく目立ちません。また、雷に木の半分をそがれてしまい、元気がないのが残念です。
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( 写真説明 ) 現在の一本杉