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【広報ふじ昭和63年】富士市の林業

木ってやさしいね

 富士山のすそ野を取り囲むグリーンベルト地帯。この広大な森林は、私たちの生活にはかり知れない恩恵を与えてくれています。
最近、近代化された生活の中で、人々の木に対する欲求が急速に高まっています。なぜでしょう。人と木の関係は私たちが考えている以上に深いのかも知れません。そこで、今号では、本市の大切な資源であり産業である林業を通して、森林の役割、森林と私たちの暮らしとの関係について考えてみましょう。


●暮らしに潤いを生む「木」

 緑を見ると心が安らぐ、木に触れるとほっとする…。これは人間だれもが感じる共通体験です。
 私たちの暮らしは、合理化、効率化を優先させる近代化が図られ、年々便利になっています。病院や学校なども、次々と鉄骨・鉄筋コンクリート造りに変わっています。
 こうした鉄やコンクリートなどの無機質な建物があふれる中で、私たちはどこか“落ちつき”を失いがちになっています。それは、人間の心と体が別の素材を、何か懐かしい素材を求めているからなのかも知れません。
 最近の「木」への関心の高まりは、こうした素材見直しの気運の中で、「木」の特性が再評価され、私たちの暮らしに潤いをもたらすものとして注目されてきたからでしょう。


●「木」の持つ優しさ

木は生きている
 木は、山から切り出され木材となってもその特性は失われません。木は呼吸をしています。つまり生きているのです。

木は熱を伝えにくい
 木の熱伝導率は、金属に比べてずっと低いため、気温の変化にあまり左右されません。

適度な弾力性
 また木には適度な弾力性があるので、その上を歩いても、あまり疲れません。コンクリートや石の場合、歩くうちに疲れがたまったり、転ぶとけがをすることもあります。

湿度を調節する
 木は呼吸していますから、例えば部屋の空気が湿ってくると、木はその湿気を吸収し、空気が乾くと水分を吐き出してくれます。これは自然のエアコンと言えます。
―自然が育てた木は、このように快適な生活を私たちに提供してくれます。
 私たちのように呼吸している木、どんなに時代が進んでも、人が最も身近かに感じる素材は木だと言えそうです。私たちの「心」と「体」が自然と木のそばにいたいと思う…。そんな優しさを木は持っているのです。



●富士市の半分は森林です

 富士市の森林面積は1万648ヘクタールで、林野率は49.4%。市の面積の約半分が森林ということになります。
 また民有林の人工林率は82%と高く、大規模な植林が行われてきたことがうかがえます。樹種はヒノキが88%と圧倒的に多く、スギは9%にすぎません。樹齢も20〜40年生が大部分で、これは昭和20〜30年代の植林によるものです。
 経営規模は一部を除き、極めて零細で5ヘクタール未満の所有者が全体の94%。面積で35%を占め、林業と農業の兼業がほとんどです。



●森林は私たちの暮らしを守っています

 春のワラビ取り、夏のキャンプ、秋のキノコ狩りやハイキングなど、四季折々に、私たちは森の恩恵を直接受けていますが、実は、森林にはもっと重要な働きがあるのです。

郷土を守る
 森林は、土中深く張りめぐらされた樹木の根で土や石をしっかりつかみ止めています。
 また森林に降る雨は、初め木の葉や枝に止まり、緩やかに幹を伝わって落ちてゆき、地表の落ち葉やコケ類などに吸収されるので、豪雨の時でも地面を流れる水量は少なく山崩れや土砂の流出を防ぎます。一方、海岸線に延びる海岸保安林は、私たちの家や田畑を風や潮の害から防いでくれます。

水資源を守る
 水の利用には、飲料・農業・工業用水などがありますが、どれも私たちの幕らしと深いかかわりを持っています。
 私たちは、この大切な水が不足しないように守らなければなりません。それには、川の流域によく茂った森林(水源林)が必要です。森の土地はスポンジ状で、一坪当たり一トンの水を吸収すると言われ、山に降った雨を一度に流さず、蓄えてから少しずつ流す役目をしてくれます。また、雨は窒素・リンなどの物質を含んでいますが、森林に降った雨水は土壌にゆっくり浸透する間に含有物の多くが 取り除かれ、微量のミネラルの加わったおいしい水になります。
 このように、森林は洪水や干ばつを防ぎ、私たちの命と財産を守ってくれているのです。
 全国一の製紙産業が富士市に育ったのも豊かな森林資源と地下水に恵まれたからにほかなりません。



●健康を守る

 人は森に不思議な魅力を感じます。遠くの森を眺めるだけで心が休まり、森の小道を歩けばすがすがしい気分になります。最近の健康ブームで「森林浴」という言葉も知られるようになりましたが、これは、樹木のだすフィトンチットという芳香物質が作用し、人間の健康によい効果を与えると言われています。
 さらに、樹木は炭酸ガスを取り入れ、人間に大切な酸素を吐き出してくれます。
 このような森林の働きに注目し、本市では保健休養林として、丸火自然公園をまた須津川渓谷大棚の滝周辺を須津山休養林として整備し、広く市民に開放しています。「休」という字は「人」に「木」と書きます。気軽な憩いの場として、あなたもご利用ください。



●森を守る人 森を育てる人

 私たちの生活に欠くことのできない森林。この森林を火災や盗木などから守るため、本市では、林野消防隊(2隊、隊員計37人)や山林監視人(6人)が協力し合いながら火災予防と巡視活動をしています。また緑化思想の普及と後継者育成のため、緑の少年団の結成、中学校林や青年の山が造成され、植林、下草刈り、枝打ちなどに活躍しています。



●建築用柱材の一大供給基地を目指して

 現在、本市では官民一体となって、この広大な富士南ろくの森林地帯を建築用柱材の一
大供給地にしようと計画を進めています。
 しかし、良質の柱材を生産するのには40〜50年という年月がかかり、しかもその間、下草刈り(10年生ごろまで)枝打ち(20年生ごろまで)間伐(35年生ごろまで)などの手入れが必要です。そして間伐から10年以上たってようやく商品として現金化できるのです。親の代に植栽した苗は、子・孫の代になって初めて伐採期を迎えるわけです。そして、また伐栽した場所に翌年植栽します。
 この年ごとの繰り返しがやがて50年のサイクルを完成させ、林業家は安定した収入を得ることができるのです。本市の林業は、その最初の伐採期を迎えようとしています。



●始まっています 富士ヒノキの里づくり

 木曽や天竜などの木材の名産地に負けない富士ヒノキの産地化を目指して、森林組合などを中心に多方面にわたる研究や計画が実施されてきました。間伐材を使った、さまざまな木製品の製作や販売もこうした活動の一つですが、中でも富士木材センターの設置が本市の林業に与えた影響は大きく、近くに市場ができたことで、枝打ちされた良質材は極めて高価であることが目の前で実証され、林業経営に対する林家の考え方を一変させ、富士ヒノキの里づくりを大きく前進させました。



●明日へ広げよう富士山のグリーンベルト

 自然と調和した人間の暮らし……私たちの生活が近代化・都市化すればするほど、このテーマは重要な意味を持ってきます。
 富士ヒノキの里づくりは、森林の持つ公益性と経済性を追求するだけでなく、世界に誇る富士山のすそ野を常に緑で覆うことになるのです。林業50年のサイクルの確立で、私たちの子孫は限りない恩恵を森から受けられることが約束されます。さあ、明日へ広げましょう富士山のグリーンベルトを…。



◇私たちも森林を育てています

中学校林を管理している市立吉原北中生徒会の皆さん
- 写真あり -

 私たち吉原北中生徒会は毎年、全校生徒で学校林の下草刈りを行います。これは北中の開校記念に先輩たちが植林したもので、ことしで八年目になります。作業は1年から3年年まで縦割リグループで行い、グループ長の指示で仕事を進めます。
 私たちが1年生の時に比べると木はずいぶん伸びました。成長がはっきりわかります。広い植林地の草を刈り終えた時は、ほんとうに気分がいいですね。


◇一番恐ろしいのは山林火災

山林監視人・勝又忠一さん(大渕3丁目)
- 写真あり -

 山林監視人は私で2代目、父親と合わせるともう30年以上この活勤を続けています。仕事は、盗木や火災から森林を守ることで、月に2・3回巡視します。山の中を歩くので、市有林なら地形から境界線まですべて頭に入っています。森で一番恐ろしいのは火災。たき火やたばこに注意するよういつも呼びかけをしています。山林火災の少ないのが私たちの自慢です。


◇親子力を合わせて良質材を育てます。

林業経営に取り組む渡井正彦、正孝さん親子(一色)
- 写真あり -

 林業は私の息子で4代目になります。私の代になってからは、まだ一度も伐栽していませんが、あと10年もたてばいい柱材が採れますよ。
 良質材を育てるには、下草刈りや枝打ち、間伐をしっかりやることですね。
 現存は主に農業で生活していますが、息子も林業研究会などに参加して前向きに取り組んでいますので、親子力を合わせて、木曽や天竜に負けない富士ヒノキを育てたいてすね。



■金原明善翁(きんばらめいぜんおう)ら大規模植林地
- 写真あり -
明治35年から金原明善翁ら静岡県山林協会が造林したもので、本市における大規模植林の発祥地として市の指定史跡になっています。(勢子辻)

■富士木材センター
- 写真あり -
 県東部地域の市町村から切り出された木材の集荷市場で、富士ヒノキ産地化の拠点施設となっています。


★間伐材でこんな製品が
- 写真あり -
( 写真説明 ) 写真、左からごみ箱・もろ箱・ティッシュボックス・プランター・縁台
( 写真説明 ) 湯飲みと小鉢


- 写真あり -
( 写真説明 ) 木の素材を生かした市立大渕第二小学校新校舎
( 写真説明 ) 毎年、富士市植樹祭に参加する緑の少年団。現在、大渕第二小学校、今泉小学校の2校で結成されています。
( 写真説明 ) 丸火自然公園
( 写真説明 ) 間伐材を敷き詰めた歩道(市役所公園広場)
( 写真説明 ) 足踏み健康器(田子浦小)
( 写真説明 ) 総て富士ヒノキ材で建てられた住宅です。10年後にはもっと身近に…



−お知らせ−

富士ヒノキ商標図案を募集
◎募集方法
・富士ヒノキ材の商標にふさわしいもので創作作品。
・大きさは10.5センチメートル角材に刷込みできるもの。縦書のこと。
・色彩は一色。色は自由。
・作品の裏面に住所、氏名、年齢、作品説明を記入する。
◎応募期限 昭和64年1月末
◎表彰(1)優秀作品−会長賞と5万円(1点)(2)佳作−賞状と賞品(5点)
◎問い合わせ、応募先 市内本市場441-1 富士地区林業振興対策協議会 電話番号 65-2202

富士市産業まつり 農林水産フェア
とき:11月6日(日曜日)8時半〜13時半
ところ:富士市公設地方卸売市場
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広報広聴課 (市庁舎8階北側)
電話:0545-55-2700 ファクス:0545-51-1456
メールアドレス:kouhou@div.city.fuji.shizuoka.jp
〒417-8601 静岡県富士市永田町1丁目100番地 電話 0545-51-0123 ファクス 0545-51-1456
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