【広報ふじ昭和63年】新富士駅の6か月
乗降客は1日平均約1万人 新富士駅まずは順調なスタート
多くの市民の歓喜と期待の中で開業した新幹線新富士駅は、オープンから6か月を経過しました。
乗降客は当初の予想を上回る、一日約1万人を数えるなど、まずは順調なスタートと言えます。
また、新富士駅にあわせてつくられた都市施設ステーションプラザFUJIの利用状況もまずまずです。このように多くの皆さんの利用でにぎわう新富士駅ですが、これから対処しなければならない課題も残されています。今回は、開業して半年たった新富士駅の現状と課題をお送りします。
大幅に上回る利用者
富土市の新たな玄関口となった新富士駅は、開業から6か月が経過しました。
駅の利用は多く、乗降客は開業から3か月間の平均で、一日1万399人にも達しました。これは、JRの当初見込6,000人を大幅に上回るだけでなく、同時開業した掛川駅などほかの4駅と比較しても群を抜いた数字となっています。中でも、8月12日には、これまで最高の1万8,280人の乗降客を記録しました。
新富士駅が在来線との接続がない新幹線単独駅であることを考え合わせると、この数は、大変な利用状況といえます。
ビジネスと団体客が多い
乗降客の特徴は、工業都市富士市を象徴して、全国各地からのビジネス客が多い点です。
また、これまで静岡駅や三島駅を利用していた団体客などが新富士駅に切りかわってきています。
なお、団体乗降客が延べ乗降客に占める割合は約15%で、極端に高いというわけではありません。
地元の利用客も予想以上
4月末から5月にかけては、関西・四国・九州から中学年の修学旅行者が多く見られました。この間、毎日600人、多い日には1,000人が利用しました。旅行コースは、富士山周遊(富士五湖)から東京ディズニーランドへの観光、または、伊豆・箱根を回って東京へ、あるいはこの逆コースがほとんどです。
夏休みは富士登山でにぎわいました。新富士駅を降りて定期バスを利用し、富士登山に向かった人は1,352人を数えました。来年以降、富士登山の出発点としてますます定着していくと思われます。
また、肝心な地元の利用客についても、予想以上に積極的な利用がみられます。新富士駅では、ほかの新幹線各駅と乗車券の売り上げ状況を比較して、富士市を中心にした富士宮・庵原等のエリアは、利用率が高いと見込んでいます。
ステーションプラザFUJIも好調
好調な乗降客を反映して都市施設ステーションプラザFUJIの利用も大変多くなっています。
1階の常設展示場では市内の主要企業14社が11部門で展示を行っています。訪れたお客さんからは、富士市の工業はすばらしいと好評を得ています。
また、ほかの企画展示場・ギャラリーなどの施設の中では、特に第1・2サロン室が、お客さんのもてなしや会議などに大変頻繁に利用されています。
ステーションプラザFUJIはみんなの施設です。積極的に御利用ください。問い合わせは、電話番号 62-0456へ。
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( 写真説明 ) 乗降客は同時開業した5駅の中で最も多い
新富士駅の乗降客数(昭和63年3月13日〜6月12日)
一般乗降客数 81万2,393人(8,830人)
団体乗降客数 14万4,346人(1,569人)
延べ乗降客数 95万6,739人(1,399人)
*( )は一日平均
掛川駅の一日平均 4,978人
三河安城駅の一日平均 2,927人
尾道駅の一日平均 2,188人
東広島の一日平均 1,394人
多方面に及ぶ波及効果 ぐっと伸びたね 富士市の背(せい)
新富士駅の開業は、市民の皆さんの生活を便利にさせるだけではなく、地域に大きな波及効果をもたらすと期待されていました。そして、開業から6か月。予想を上回る乗降客で活況を示す新富士駅は、富士市の産業・経済・文化・交通などにさまざまな変化を与え始めています。
各方面の現場の声を通して変化の兆し、これからの課題などを紹介します。
観光案内
実相寺や博物館を紹介します。課題は観光地の整備かしら。ステーションプラザFUJIで観光案内をする 稲葉小夜子さん
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7月5日からステーションプラザFUJIの一角で観光案内を行っています。大石寺にみえた人が時間があるからとか、ビジネスの都合で時間ができたという人がよくいらっしゃいますよ。短時間で回れる観光地を尋ねられることが多いですね。お客様の希望により、実相寺や永明寺、竹採塚、ディアナ号のいかり、田子の浦港、博物館などを紹介しています。ただ交通の便が悪く、観光地もトイレや休憩場所の整備という点で課題があるので、よく説明しています。
ビジネスのお客さんからは、大変便利になったと好評をいただいています。まだ、ビジネスホテルが近くにないので、宿泊の問い合わせも結構ありますよ。
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( 写真説明 ) 新富士駅前の案内板
産業振興
時間が有効になり、お客様も2割ふえました。
東芝富士工場 総務課長 中山佳久さん
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本社が東京なので、何といっても出張が楽になりました。新富士駅まで歩いて10分、東京まで1時間15分ですから、時間が有効になったのが一番のメリットでしょうね。
また、お客様も昨年とことしでは2割もふえています。これが全部新富士駅の影響とは言えませんが、大きな原因の一つでしょうね。最近のセールスは、実際お客様を製作現場に案内しますので、お連れしやすくなったとも言えますね。東京の人は、根底に箱根の向こうは遠いという意識があるようで、「意外に近いね」という声をよく聞きます。
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( 写真説明 ) ビジネス客の目立つ乗降客
富士の名産品
市民の皆さんが、店を意識してくれているんですよ。
新富士駅内の土産店社長 勝亦弘次さん
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商売としては、まあまあでしょうか。店には全国からお客さんが見えますよ。
富士のお土産といっても全国的に有名というものがなく、お客さんから「何が特産か」などと尋ねられます。富士のやぶ北茶などを勧めると喜ばれますね。
また、ぶらっと遊びにくる人が多いのにも驚きますよ。「○○を売ったらどうか」などとアドバイスをくれる人もあって、市民の皆さんも自分たちの街の顔というような意識を持ってくれているのでしょうね。土産物では、紙の街なのに紙工芸品がありません。絵はがきやしおりすらないので、何か紙の都らしいものができないかなあと考えています。
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文化活動
駅コンサートを開きました。文化の出入口になりますね。
楽家 辻村典枝さん
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6月に関係者の協力をいただいて駅コンサートを聞かせてもらいました。「新富士駅に文化の薫る場所があったらいいな」という夢が実現したことになります。駅コンは初めてなので、準備はおっかなびっくり。「音響はどうか」「人が集まるか」など心配はつきませんでした。当日は一般の人も足をとめてくれ大成功でした。これからも、ぜひ続けていきたいと思います。文化は時間をかけてはぐくむものですから新富士駅の影響がすぐあらわれることもないでしょうが、これからできる文化会館とともに、市民文化の出入り口になっていくでしょうね。
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( 写真説明 ) 6月18日に行われた駅コンサート
都市計画
まちづくりには地価の抑制が大事ですね。
横割で薬局を自営 木ノ内孝彦さん
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新富士駅開業後の富士見大通りや富士駅と新富士駅をつなぐ道路の交通量の増加にはびっくりしています。感じとして今までより2・3割ぐらいふえたのではないでしょうか。
また、私が一番行政に期待するのは、地価の抑制策です。新富士駅の開業以来、地元では異常な地価が話題になっています。地価が高くなると、どうしても建物の高層化が考えられ、駅から富士山の景観を邪魔するという状態が生まれます。在来線との接続も困難になるばかりです。地価問題は国・県とともにぜひ取り組んでください。それから、新富士駅はあそこに住んでいた人たちの協力があったからこそできたことを忘れてはならないと思います。
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( 写真説明 ) 交通量の増えた富士見大通り
市民の皆さんと行政が一丸となって新富士駅を生かしたまちづくりを
前ページの市民の皆さんの御意見などにもあらわれていたように、新富士駅はおおむね期待どおりの効果を発揮している反面、開業以来の課題や新たな対処を必要とする問題もあります。富士駅との接続方法、道路網・観光地の整備、新富士駅周辺の区画整理や景観問題など、駅舎のオープンによって新富士駅を中心にしたまちづくりは始まったばかりともいえます。
21世紀に向けて、新富士駅をどうまちづくりに生かしていくかは、私たちの重大な役割と言えます。当面の対応策などと合わせて、みんなで新富士駅をめぐるまちづくりを考えてみましょう。
区画整理を第一に
新富士駅を中心としたまちづくりの基盤整備として一番重要なのは、駅前の区画整理です。新富士駅は建設の経過として、まず誘致に主力が注がれてきました。駅舎が完成した現在、21世紀を展望する都市施設の整備を行うために、区画整理は欠かすことができません。
さて、新富士駅という新しい交通拠点の誕生により、交通体系にも変化が見られます。東名インター・国道1号・国道1号バイパスをつなぐ富士見大通りの交通量が増加したことです。
こうした状況を予測して、既に61・62年度の2か年にわたり、建設省に静岡県と富士市が協力して富士南部地域交通網計画調査を実施しました。これは、将来に向けて交通混雑の緩和と輸送力の増強を図るべく交通体系を検討したものです。
その結果、国道1号バイパスを立体構造化し、国道139号と市道富士鷹岡線を国道1号バイパスまで延長する建設工事を早期に実現します。
また、新富士駅と富士駅とを連絡する交通方法や、この地域の高度な土地利用と機能的な市街地の形成を行うことも重要な問題です。この間題の検討のため、国・県・公共公益機関・学識経験者による調査協議会を近く発足させます。
景観条例の制定を目指す
新富士駅のテーマは「美しい富士山を世界の人々に」。目の前に雄大な富士山を仰ぐ新富士駅は、富士山の景観がとても大事です。
しかし、一方で周辺にビルや屋外広告物などが立ち並び、景観を損なう心配もあります。
現在、市は、駅から富士山の景観に影響を与えると思われる建築物、看板などについては、行政指導を行っています。建築物などの高さ・色彩などについて、景観を損なわないよう建築主に協力をお願いしています。
また、近い将来、景観の形成を目的とした景観条例の制定を目指し、作業も進めています。これは、民間の建築物等の規制・誘導などが不可欠であるため大変難しい問題です。
「新富士駅に降りたが、富士山は建物や看板の陰になって見えなかった」という状態にならないことを基本として、市民の皆さんの間でも議論を深めて、御協力をいただく必要があります。
観光のあり方を検討
富士市は工業都市であるため、ともすれば観光はこれまで忘れられがちでした。ところが、新富士駅の開業を機に、短時間で回れる観光コースなどへの要望が出てきています。
市は昨年、民間の調査機関に観光基本計画の作成を委託しました。その計画をもとに、現在プロジェクトチームによって観光のあり方を検討しています。
ただし、皆さんが有名な観光地を御覧になればわかるように、観光地の開発には民間資本が欠かせません。行政のみでは、おのずから限界があり、今後民間資本との協力が課題です。
11月に駅前広場か完成
現在新富士駅では、駅前広場北口・南口の修景施設工事が進められています。
北口広場は「出会いと旅立ちの広場」というテーマで石と水と緑を使い、山と渓谷を表現します。山と渓谷は二つの半円形の池と円形の一部を切り取った石組み彫刻2基で表現しています。周囲にはツツジなどを植栽し、やわらかい雰囲気をつくっています。
南口広場は「憩いと安らぎの広場」のテーマを彫金打ち出し彫刻で表現しています。作品は市民憲章を描いた本に市の花バラがついた形となっています。
修景施設の落成式は11月1日を予定しています。
新富士駅を起爆材に
新富士駅は修景施設の完成をもってすべて完成します。駅自体は完成しても、新富士駅を起爆材としたまちづくりは、これからが本格的な出発になります。新富士駅を中心にしたまちづくりの課題は決して少ないとはいえません。
しかし、新富士駅の恵まれた状況を上手に活用し、行政と市民が一体となって対処すれば、決して克服できない問題ではありません。
21世紀に向かって新富士駅の真価が問われるのは、これからなのです。
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( 写真説明 ) 新富士駅と富士山の景観は大切
( 写真説明 ) 北口広場
( 写真説明 ) 南口広場
私と新富士駅
四国のおばあちゃんも呼べるよ 臼杵(うすき)大介君(元吉原中1年)
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夏休みにお父さんの実家がある四国に行きました。新富士駅から岡山まで新幹線、それからは瀬戸大橋を利用しました。新富士駅と瀬戸大橋の開通で、「これまで八時間かかったのが、3時間も短縮しました。四国のおばあちゃんに新富士駅の話をすると、おばあちゃんもぜひ来てみたいと言っていました。今度は東北に行ってみたいです。
都市対抗野球を観戦 芳賀(はが)智代さん(神戸2・会社員)
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私は大昭和製紙野球部のチアガールをしています。そんな関係で、都市対抗野球の開会式を見に行きました。新富士駅も東京ドームもすてきでした。またもう一回は友人と東京ディズニーランドへ行きました。ディズニーランドまで約2時間。日帰りで十分時間がありましたよ。
新富士駅ができて本当に便利だなあと思います。
富士周辺の名所・史跡を勉強 須山次男さん(比奈・タクシー運転手)
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お客さんのトップは企業関係の人たちですね。大石寺の参拝者も利用します。夏は富士登山や富士五湖方面が多かったね。
車中で、お客さんに周辺の名所や史跡についてよく尋ねられます。そこで私たちも、観光資料を用意して質問に答えられるよう勉強しています。何といっても、お客さんにとって私たちは富士市の顔ですからね。
下宿より経済的な通学 岡山菊世さん(森下・主婦)
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新富士駅ができたので、これまで下宿していた大学生の息子が、自宅から通学するようになりました。時間的に通学が可能なのはもちろん、定期代と下宿代を比較すると、むしろ経済的なくらいです。新幹線は乗り心地がいいですし、これまで事故がないのも魅力です。
また、私自身も東京の生まれなのでよく利用しています。
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