【広報ふじ昭和63年】ちょっと考えてみましょう… 空き地と暮らし
一昔前までは、町の空き地は子供たちの格好の遊び場でした。しかし、暮らしの変化とともに空き地は町から消え、一方、郊外には宅地造成などによって新たな空き地が発生しています。
そして、この空き地などの管理についてはさまざまな問題が生じてきました。環境衛生上の問題や火災予防などの問題がそれです。今回は、この空き地のあり方について考えてみましょう。
遊びの空間 楽しい思い出
かくれんぼ、缶けり、縄跳び、鬼ごっこ…一昔前まで空き地は子供たちにとって貴重な遊びの空間でした。
日だまりに顔を出したツクシ、白い綿帽子のタンポポ、モンシロチョウに赤トンボ、十五夜の晩に家に持って帰ったススキ、スズムシやクツワムシの鳴き声…空き地は私たちに季節をやさしく教えくれました。
空き地へ行けば、みんなに会える…子供たちは集い、知恵を出し合って遊びを考えました。空き地という空間は、子供たちのコミュニケーションの場として大きな役割を持っていました。
町の中の空き地 消えた子供の姿
わが国の高度経済成長は、私たちの暮らしに大きな変化をもたらしました。建設ラッシュで町から空き地は消え、住宅は郊外へ郊外へと伸び、団地や分譲地が方々に造成されました。ちなみに、地目上での田と畑の総面積は昭和45年に比べて27%も減少し、一方で宅地は同年比32%の増加を示しています。(昭和62年1月1日現在)
また、経済成長に伴う生活レベルの向上は、高学歴化社会を生み出し、子供たちは勉強に塾にと遊びを忘れ、町からの空き地の消滅とともに、子供たちの姿も空き地から消えてしまいました。
草は伸びる。虫は喜ぶ種は飛ぶ
郊外の田や畑を埋め立て造成した宅地には、次々と家が建てられました。ところが、主にこうした新興住宅地で、新たな問題が生じてきました。
例えば、分譲地などで全区画が完売されたとしても、一斉に家が建つことはまれです。購入者にはそれぞれの事情や目的があり、その結果、区画内に空き地を挟んで飛び飛びに家が建つというまだら現象が生じます。この空き地は、もともと田や畑、原野などですから、春早々に草が芽を吹き、梅雨時ともなれば驚異的な速さで成長します。草が伸びれば虫が発生し、虫たちは農薬で駆除されることもなく近所の家に進入します。草はやがて風に乗って種を住宅の庭や近くの田畑にまき散らします。
ゴミのたまり場非行の温床
草が生い茂ると人間の背丈を超え、外側から中を見通すことはできません。そのため、こうした空き地は、ゴミや不燃物、猫や犬など動物の死骸の捨て場となることが多く、周囲に異臭を放つこともあります。
もっと深刻なのは、青少年のシンナー乱用に格好の場所となることです。更には、盗品の隠し場所であったり、中には、盗んだオートバイを持ち込み、分解して改造車をつくり、乗り回していたという事例も報告されています。
枯れ草は火災の導火線
空き地の周囲に住む人たちにとって、一番の心配は火災の発生です。
冬になると草は枯れ、寒風にさらされカラカラに乾燥し、非常に燃えやすい状態になります。万一、火が付けば瞬く間に燃え広がり、周りの家々に燃え移る危険性が十分にあります。枯れ草火災の主な原因としてはタバコの投げ捨てや子供の火遊びが挙げられます。
このため、中央消防署では毎年町内会や学校などを通じて、枯れ草の刈り取りをお願いするとともに市内約500か所の空き地の所有者に対して火災防止のための呼びかけをしています。
地主さんと考えるゆとりの空間
かつて、子供に大切な社交の場を提供してきた空き地の機能は、現在薄れつつありますが、暮らしの中での空き地を見詰め直したとき、日当たりや風通し、遮音などの点で、程度の差はあるにせよ、空き地空間は周囲に住んでいる人々にとってゆとりの空間でもあるのです。草の適正な処理さえ可能ならばずっと失いたくない空間なのかもしれません。
このゆとり空間の適正な維持は、土地の所有者である地主さんとの話し合いによって可能です。お互いの立場を理解し協力、信頼関係を結ぶことが、よりよい生活空間を生むのです。
空き地の相談は市民相談室へ
地主さんと連絡を取りたいが、名前や住所がわからなくて困っている等の相談は、市民相談室で受け付けています。
市民相談室 電話番号 51-0123 内線 2243
- 写真あり -
( 写真説明 ) 草が歩道まで…
( 写真説明 ) 草の中はゴミの山
日ごろからの信頼関係が大切
造園業 渡辺典男さん(若松1)
- 写真あり -
住宅地に隣接して土地があるのですか、手が足りず十分な管理ができません。幸いにも近所ということで皆さんに事情を話し協力してもらっています。私もカヤを敷いたりお茶を植えたりして、草が出ない工夫をしています。また、定期的に人を頼んで草を刈っています。やはり大切なことは、日ごろからの信頼関係てすね。
消火栓と空き地の草にはいつも注目
消防団12分団長 秋山 薫さん(中野1)
- 写真あり -
私の地区はこの20年ほどで急速に宅地化が進み、林や原野が分譲地や団地に変わりました。分譲地などには空き地も自立ちます。
消防団員をやっているため、地区内を車で走っているときなど、消火栓と空き地の草はすぐ目にとまりますね。春と秋の火災予防週間には、巡回しながら、空き地の正しい管理を呼びかけています。
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