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【広報ふじ昭和63年】ふるさとの昔話

和田川のおその水道

 昔の和田川は、水量が多く、ところどころが深い渕になっていました。新橋の下手には「おその水道」と呼んだ深い渕があったといわれます。今回はこの渕に伝わるお話です。


身を投げたおその

 江戸時代のころです。吉原宿は大変繁盛してにぎわいました。
 この宿場におそのという若い芸者がおり、売れっ子で、みんなからかわいがられていました。
 ところが、おそのはいつしか体が弱くなり、働けなくなりました。 
 すると主人は、稼ぎがないと言って、殴ったり、け飛ばしたり、毎日いじめました。
 おそのは悲しくなって、主人を恨みながら、ここの渕に身を殺げて死んでしまいました。それから間もなく、おそのの幽霊が出るといううわさが広まり、夜遅くここを通る人がなくなりました。


出なくなった幽霊

 この渕は吉原宿の東のはずれで東海道です。幽霊の評判が広まって、吉原宿がさぴれては困るし、第一おそのがかわいそうだという声が人々の中から起きました。
 そこで、ある寺のお坊さんがほこらをを建てて「おその地蔵」をまつり、お経を読んでおそのの霊を慰めました。すると幽霊は出なくなりました。


深い渕があったよ

渡辺つるさん
- 写真あり -

 依田橋の渡辺つるさん(90歳)は「残念ながらおそのさんの話は聞いたことがないよ。でも、昔は和田川の水が多くて深い渕もあり、身殺げしたら死んでしまうような場所もあったね。昭和の初めごろは砂利船が通ったり水車もあって、人々は川をもっと身近に感じていたね。東海道筋にはうっそうとした松林があり、幽霊のうわさがたてば、そりゃあ恐かったでしょうね」と語ってくれました。

( 写真説明 ) 和田川(新橋付近)
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