語ってくれた前島重一さん
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天間田代区の公会堂となっている山神社の東側に、矢筒石と呼ばれる石があります。
今回は、この石に伝わるお話を、天間田代の前島重一(じゅういち)さん(80歳)に語っていただきました。
薬の液が出る石
昔、天間に鈴木平左衛門という人がいました。この人はよい政治を行い、大豪族となりました。鈴木氏は以後も栄えたのですが、十何代かの後、自分の利益しか考えない悪徳の人が当主となりました。
あるとき、この当主は天間の横道に矢筒石という石のあるのを知り、自分の物にしようとしました。
矢筒石は特殊な養分を含んでおり、底にたまった水を飲めば胃病が治り、顔につければ、そばかすが治るといわれていました。
その石を掘り起こすというので、村人たちは大反対をしました。
しかし、当主は遠くから大勢の大工を呼んで、石の掘り出しを始めました。すると、急に旋風が吹き、けが人が出ました。その後も工事のたびに風が吹き、恐れた工事人たちは皆逃げてしまいました。
あきらめきれない当主は、別の職人を連れてきて、石を途中から切断し、ついに屋敷に運び込みました。ところが、当主はこうした横暴がたたり、人々から見放され一家離散の運命に見舞われました。
石が物のけに
それから失筒石は田んぼの中に放置されたまま年月がたちました。
あるとき、由比町の茶人が矢筒石に目をつけ庭石にしました。ところが、やはりこの家にも不幸が続くようになりました。ある晩、この家のおばあさんが「私は石です。元のところへ帰りたい」という物のけに目覚めました。翌朝、おばあさんは家族にこの話をし、すぐに石を元に戻しました。
昭和の初め、当時の青年団が現在の山神社に手厚く移しました。
頼朝が休んだところ
また、昔、源頼朝が富士の巻き狩りのとき、このあたりで休憩し、この石に失筒をさして休んだという話も伝わっています。
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( 写真説明 ) 矢筒石