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【広報ふじ昭和63年】ふるさとの昔話

伝法・中村町のほおなでの槙(まき)

 約15年ぐらい前まで、伝法中村町に二抱えもある大きな槙(まき)の木が、道端に茂っていました。里の人々はほおなでの槙といって大切にしていました。


ほおをなでる木

 昔、村の人が夜おそく一人で槙の木のそばを通りました。この付近は家がなかったので、夜になると通る人もなく気味の悪いところでした。
 村人が槙の木の下まで来ると、突然だれかがすうっとほおをなでました。はっとした村人は、真っ暗な道を夢中で走り、家の中へ駆け込みました。そして、何も言わずにガタガタ震えていました。
 心配した家の人がよく聞いてみると「槙の木の下で、怪しいものにほおをなでられた」と言うのでした。
 このことはすぐ評判になり、「私もなでられた」「おれもだ」と言う人が大勢でてきました。
 その後も、ほおをなでられる人が何人も続き、お化けに違いないと言うことになりました。
 それから、だれ言うとなく「ほおなでの槙」と呼ぶようになりましたが、お化けの正体を見定める者はありませんでした。


確かに枝が垂れてたよ

 吉原上中町の渡辺初蔵さんは「槙の木は玄龍寺の南側にあって、高さが7メートルぐらいだったな。確かに枝が垂れてたよ。槙の木があったあたりは今でこそにぎやかだけど、昔は一面畑で寂しいところだったもんだ。当時の子供たちはみんな恐がったよ」と語ってくれました。

渡辺初蔵さん
- 写真あり -
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