工業と科学技術の発展は、私たちに豊かな暮らしを与えてくれましたが、反面、大気汚染、水質汚濁、悪臭、騒音などの公害をもたらしました。本市もかつては、公害のまちとして全国にその名をとどろかせたときがありました。しかし、今では青い空ときれいな水を取り戻してきています。今号は、本市の公害の概況についてお知らせします。
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( 写真説明 ) 「よりよい環境を」と青空に願いを込めて風船上げ
大気汚染
大気汚染の主な原因に、工場、事業所、自動車などから排出される二酸化硫黄、二酸化窒素、浮遊粒子状物質と、これらの汚染物質が光化学反応を起こして生じる光化学オキシダントがあります。
市は、このような大気汚染の状況を監視するため、市内13か所に測定局を設け、測定を行っています。また、昭和62年度からは、自動車排出ガスが環境に与える影響などを調査するため、自動車排出ガス測定局を2局設置しました。
二酸化硫黄は、排出規制の強化や低硫黄原料への転換、脱硫装置の設置により、工場、事業所からの排出量が大幅に減少しています。
特に、昭和53年度からは9年間連続して環境基準を達成。濃度についても40年代後半の5分の1以下となっています。
二酸化窒素は、昭和53年度から、新環境基準が設定されて以来、すべての測定局で環境基準が達成されています。
しかし、濃度については横ばい状態が続いているため、今後さらに各種排出規制の徹底、強化などの防止対策を進めていきます。
浮遊粒子状物質は、大気中に浮遊する粒子状の物質で、大気中に長時間滞留し、人体の呼吸器に影響を及ぼすことから昭和47年に環境基準が設定されました。
原因としては、工場、自動車等の燃料の燃焼過程、物の破砕などによるものと、風による土砂の舞い上がりなど自然現象によるものが考えられます。
濃度変化は、横ばいです。また、環境基準については、市内測定局のうち未達成測定局もあります。
光化学オキシダント発生の原因物質は、工場、自動車等から排出される窒素酸化物、炭化水素類といわれており、これらが太陽光線(紫外線)の作用を受けて生成される汚染物質ですが、その汚染メカニズムは、いまだに解明されていません。
市では、光化学オキシダントの緊急発生時における関係機関への連絡体制を確保し、被害の未然防止に努めています。
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( 写真説明 ) 自動車排出ガス測定局
悪臭
悪臭とは、工場や事業場活動などに伴って発生する「不快なにおい」 のことです。生活環境をそこなうおそれのある臭気で、感覚公害といわれています。
発生源は、本市の地場産業である紙・パルプ製造業、そして、化学工業、薬品工業、食品工業、さらには、養豚、養鶏の畜産業など多種多様にわたっています。
市では、昭和55年「富士市悪臭公害防止対策指導要綱」をつくり、規制の強化を図っています。
においは、人によって感じ方が違うため、本市では、人の鼻による臭気測定「三点比較式臭袋法」という全国でも珍しい測定法を取り入れるなど、市民の協力のもとに悪臭防止対策を進めています。
水質汚濁
本市の水質汚濁は、法令に基づく排水規制の強化や企業努力による処理設備、管理組織の整備、岳南排水路の設置などにより、大幅な改善がみられました。
昭和61年度の測定結果をみると、環境基準の類型指定がされている沼川、潤井川、田子の浦地先海域では、いずれも環境基準に適合しています。
また、その他の主な河川では、田子江川、早川もほぼ良好な水質が保たれています。
和田川は、市内の河川では特に汚濁が目立っていましたが、岳南排水路の整備により昭和49年までに改善が見られました。
しかし、主な流域が市街地にあり、家庭雑排水、浄化槽排水等の流入が多いことから、満足すべき水質とはいえず、今後の対策が課題となっています。
小潤井川についても水質規制強化により水質の改善がみられていますが、河口部においていま一歩の数値となっています。
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( 図表説明 ) COD負荷量(経年変化)
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( 写真説明 ) 水質検査をする職員
公害の苦情
苦情の内容は、昭和40年代と比べると大きく変化してきています。大気汚染については、工場などの煙突から排出される汚染物質の被害から家庭用小規模の焼却炉あるいは、露天焼却から排出されるばい煙による被害へと変わってきています。
水質汚濁については、油の流出事故や管理不足によるものがふえてきており慢性的な汚濁物質のタレ流しは減少してきました。
また、騒音や悪臭といった感覚的公害は、生活に起因する近隣騒音などの発生が目立ち、都市型公害へと変化してきています。
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( 図表説明 ) 苦情内容の変化
公害用語
COD(化学的酸素要求量)…海中や河川の汚れぐあいを示す数値で、水中の有機物などの汚染源となる物質を酸化剤で酸化するとき消費される酸素量をmg/lであらわしたもの。数値が高いはど汚染物賃が多い。