富士駅北地区、柚木(ゆのき)と浦町(うらまち)の境あたりに、柚木神社があります。近くの旧家、牧田家に伝わる古文書によると、この神社は治安2年(1022年)創建、柚木という地名の由来となった神杜だと書かれています。
鈴木喜作さん(91歳)
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大きなユズの木
昔々、千年ほども昔、柚木村のあたりが、まだ富士川の河原だったころの話です。
ある年、大水が出て甲州(山梨県)の方から、一本のユズの木が柚木村へ流れてきました。ユズの木はそこにそのまま根づいて、だんだんに大きくなりました。とうとう、回りが3抱え、高さは5丈8尺(約17メートル)、枝は五十歩四方に広がるまでになりました。その上、この大木の周りには、ユズの木が千本も自然に生えてきて、林になってしまったそうです。生命力の強いこのユズの木に対して、村の人々は、「不思議なユズの木だなあ。きっと神様が宿っているに違いない」と、柚木神社を建ててあがめていました。
ユズの葉の霊験
そのころ、国中に大地震が起こって死人がたくさん出たり、ひでりが続いて作物がとれず、飢え死にする者が出るほどの飢饉になりました。それを見て柚木村に住んでいた秀安という人が、ユズの葉をとって全国へ配ったところ、たちまち地震はおさまり、雨もザーザー降って、作物がよくとれるようになりました。
お上では、柚木神社に感謝し、祭礼の費用だとして、毎年、秀安に黄金50枚をくださったということです。
地名になった柚木神社
近くに住む鈴木喜作さん(91歳)は、「昔から、ユズの木が枯れると新しく植えて、ユズを絶やさないようにしてきたんじゃないかな。病気にならないよう、お米がたくさんとれるようにって、毎年9月9日にお祭りをやっているよ。柚木という地名は、柚木神社からきているんだよ」と話してくれました。
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