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【広報ふじ昭和62年】ふるさとの昔話

水のない須津川

 須津地区を流れる須津川は、伏流水(ふくりゅうすい)といって水が地下を流れてしまうため、いつもは水が流れていません。今回は、この須津川に伝えられているお話です。


大切な須津川の水

 昔々、ある暑い日のことでした。
 一人の旅の憎が、汗をふきふき須津川のほとりまでやってきました。
 ちょうどそのとき、一人のおばあさんが川のほとりで水をくんでいたので、お坊さんは、「おばあさん、その水を一杯私にいただけませんか」と頼みました。しかしおばあさんは、「こんな大切な水を、縁もゆかりもない旅の人にくれることはできない」と、けんもほろろの答えでした。
 お坊さんは仕方なく、また、とぼとぼと西の方を指して歩いていきました。


親切な女の人

 そして赤渕川のほとりにきました。ところが、この川には水が一滴もなく、からからの河原でした。
 がっかりしたお坊さんでしたが、川の土手伝いに女の人がやってきたので、ぜひ水を欲しいとお願いしました。すると女の人は、「それはお気の毒なこと」と急いで須津川まで行って茶だるに水をいっぱい入れてきました。そして、「さあ!腹いっぱいお飲みなさい」と言って、茶だるのまま差し出しました。


お坊さんの法力

 冷たい水でのどを潤したお坊さんは、心からうれしそうに、「東の川には水が流れているのに、お願いしても一杯の水ももらえませんでした。この赤渕川には水がなくて、皆さんが困っているのに、こんなに親切にしていただいて」と、お礼を言って西の方へ旅立って行きました。
 その翌朝、この女の人が赤渕川をのぞいてみると、不思議なことにきれいな水が流れていました。驚いた女の人は、急いで須津川まで行ってみました。すると、須津川の水はかれてからからに乾いていたそうです。

- 図表あり -
( 図表説明 ) 茶だる
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