増川3丁目の円照寺に「黒仏(くろぼとけ)」と呼ばれる仏像があります。これは、高さが9センチメートルぐらいで、ヒノキの一刀彫りでつくられ、お寺の初代ご本尊でした。今回はこの「黒仏さん」に伝わるお話です。
落馬させる仏さま
昔、増川・江尾の一帯は浮島沼が広がり、根方街道は北の山すそを周るようにありました。当時、根方街道は重要な道で、旅人も多く往来しました。
いつのころか、馬に乗った旅人が円照寺の前を通るとき、寺のご本尊の方を向いて礼をしないと、必ず落馬すると言われるようになりました。
馬に乗った旅人は、必ず礼をして通りましたが、ある日、「そんなばかなことがあるか」という旅人が礼をせずに通りました。すると、やはり落馬してしまいました。
仏像を北向きに
なぜ落馬するのか理由がわかりませんでしたが、あるとき、住職が道路の方を向いていたご本尊の仏像を、反対の北向きにしてみました。
すると、その日から落馬する旅人がなくなったということです。
信心深かった地域の人
円照寺の住職日比光生(ひびみつお)さん(60歳)は「お寺を改築するまで、黒仏さんを北向きに安置しておく場所が本当にありました。今は南を向いています。この仏像の特徴は、自然に黒くなり目を閉じている点かな。詳しいことはわかりませんが、仏師の作ではないようで、昔、この地域の人がいかに信心深かったかがわかります。」と語ってくれました。
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( 写真説明 ) 黒仏さん
( 写真説明 ) 「黒仏さんは本当に北を向いていたんですよ」と日比さん