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【広報ふじ昭和62年】富士市域の自然ってどんなかな!

自然調査研究会に委託して10年がかりで調査

 人間が生きていくための基盤である自然……この自然がいま地球上から少しずつなくなっているといわれています。
 市は、富士市域自然調査研究会に委託して、この自然が富士市域ではどうなっているのかを10年がかりで調査してきました。
 調査によると、富士市は、富士山、愛鷹山と自然に恵まれているとはいえ、住宅地域周辺はごく小さな範囲でしか自然が残っていない、と報告されています。
 私たちは、残された貴重な自然を保護し、次代に引き継いでいかなければなりません。

4部門別に詳しく調査

 調査は、地質・地形、気象、植物、動物の4部門に分けて詳しく行われました。
 地質・地形部門は、富士愛鷹両火山の基盤を中心に地質・地形や富士市域全体の地形、そして富士市及びその周辺地域のローム層についても調査しました。中でも愛鷹火山については詳細なルートマップもつくりました。
 気象は10年間の気温、降水量、風などを観測し、まとめました。
 植物は種子植物、シダ類、水生植物及び帰化植物などの植生調査をしました。
 動物についても鳥類、哺乳類を中心に7分類の調査をしましたが、今回はそれぞれ詳しく調査した中から、気象、植物、鳥類に的をしぼって概要を掲載します。

気候

富士市域は冬暖かく夏涼しい

 富士市域の気候は、夏は高温多湿の南東風が太平洋側から吹き、冬は寒冷で乾燥した北西風が吹く日が続きます。
 市域の最寒月は1月です。(丸火は2月)
 日本海側の富山、金沢などの月平均気温の平年値と比べると、標高500メートルの丸火でさえ1度以上も高い。それに対し8月はやや高いか、ほぼ同じぐらいの気温です。富士市域は、冬暖かく夏涼しいといえます。
 特に著しいのが丸火で、標高のほぼ等しい飯田市、高山市などと平年値で比べると1月では3度から6度も高く、8月では逆に1度から2度低くなっています。
 雨量は年によって大差がありますが、年間の総降水量の平均値は2,000ミリから2,100ミリで、全国的にみて多いほうです。
 富士山・愛鷹山の両山麓の多い富士市域は、一般に標高が増すにつれ降水量もふえる傾向にあります。それが集中的になった場合、家屋の浸水、川のはんらんによる田畑の被害などが発生しています。
 その顕著な例が1974年7月の七夕豪雨や1976年8月の集中豪雨でした。

植物

 今回の調査で確認した種子植物は、約1,500種でした。これに他の文献に記載されている種類を加えると、1,800種を超えるものと推定されます。静岡県の種子植物数は約3,600種ですから、その2分の1が富士市に分布していることになります。
 海岸・低湿地から愛鷹山・富士山までを持つ富士市は、植物相も豊かであるといえます。


照葉樹林

 低地は工場、市街地であるため照葉樹林は失われ、岩松にある水神社にその面影を残しています。
 ここは、タブノキ、スダジイの照葉樹に混じってハリギリ、イヌシデなどの夏緑広葉樹もあります。
 低木層にはアラカシ、ヒサカキヤブツバキが生育しています。
 そのほか、桑崎、今宮の浅間神社、鵜無ヶ渕神明宮、実相寺、永源寺の裏山などに、小規模ながら良好な照葉樹林が残っています。
 スダジイ二次林は、丘陵地の排水のよい斜面や沢沿いの斜面に残っていて、岩本山の南西面と愛鷹山の須津川に見られます。


亜高山性針葉樹林と高山帯

 富士山の亜高山性針葉樹林帯は、標高約1,800メートル以上です。トウヒ、コメツガなどの常緑針葉樹に、落葉針葉樹カラマツが混生し、さらに夏緑広葉樹のダケカンバ、ナナカマドが入っています。
 2,500メートル以上の高山帯は、いわゆる火山荒原の不安定な砂れき地にオンタデなどが島状に群落をつくり、続いてイワスゲ、コタヌキラン、フジハタザオなどが生育しています。さらに安定した所ではカラマツ、ダケカンバなどの風衝性の低木が見られます。
 しかし、富士山は、他の高山に比べて高山植物が少ないことがわかりました。


めずらしい植物

 富士市域の分布上まれな植物、絶滅のおそれのある植物を挙げるとかなりの種類になります。
 特にラン科植物はハコネランを初め、フジチドリ、キソエビネ、ウチョウランなど、一般に産量が少なく、開発や近年の野草ブームもあって絶滅のおそれが高いので厳重な保護対策が必要です。


特に保護したい植物群落

・浮島ヶ原の湿原植物
・照葉樹の自然林として市街地近くに残されている社寺林
・大河のアシタカツツジ群落
・岩本山のアキザキヤツシロラン群生地
・岩本山のモチツツジ群落
・鷹岡のカタクリ群生地
・須津川の照葉樹の二次林
・市街地近くにある農用二次林
・自然度も高い丸火自然公園のクリ、コナラ二次林
・愛鷹山の自然植生
・天照教社東側のミズナラ林
・富士山の自然植生

鳥類

富士川河口にはたくさんの鳥が

 調査地域は、富士山、丸火自然公園、愛鷹山南麓、富士川河口及び浮島ヶ原の五地域で行いました。

(1)富士山地域
 この地域全体において水のある場所がほとんどなく、鳥相は乏しい。その中で宝永第二火口には、アマツバメやハリオアマツバメがいます。また宝永第一火口の上部左壁にイワツバメの集団が確認されました。これは日本一高い所の集団と思われます。

(2)丸火自然公園地域
 ここでは、高山に住む鳥や冬鳥がよく見かけられる中で、マヒワの群、アトリ、旅鳥のノゴマなどの珍鳥も見られました。
 夏鳥で以前は南麓全域でよく見れたサンコウチョウが、近年は、毎年確実に見れるのは丸火自然公園のみになりました。

(3)愛鷹山南麓地域
 愛鷹山南麓についても、須津川流域の調査のみに終わってしまいましたが、そこで観察した野鳥は、19科36種で、トビ、ヤマドリ、キジ、キセキレイ、ウグイス、メジロなどでした。

(4)富士川河口地域
 富士川河口で観測した野鳥は、34科166種でした。1984年の状況を生態別と種類別に区分すると、最も多いのが冬鳥で56種、次が旅鳥で47種でした。
 冬鳥5,000羽のうち、ガン、カモ科種類でカルガモが最も多く、2,020羽、次がコガモの1,391羽でした。
 旅鳥47種のうち、30種類をシギ、チドリ科で占めています。
 ここの特徴は、河口と海が接する地点に河口をふさぐ形に砂れきの堤防が横に長く伸びて、海から寄せる波が河口に入らず、内側に広い静かな水面ができています。
 水面には、ウミウ・カモ・カモメ類が羽を休めたりえさをとったりしています。また中州には雑草が茂り・カワラヒワ・スズメ・ホオジロのえさ場にもなり、これを捕食するチュウヒ、ハヤブサも姿を見せます。

(5)浮島ヶ原地域
 観察した野鳥は32科、116種でした。葦の原が次第に消えて田畑に変わるとオオヨシキリ、コヨシキリなどは他に移り冬から春までコミミズク、ノスリなどのタカの仲間が見られました。また9月から11月上旬の狩猟解禁前は、田にタシギ、コガモ、カルガモなどが見られますが、狩猟解禁と同時に翌年春まで水鳥の姿は見ることはできない地域です。

- 写真あり -
( 写真説明 ) 富士川河口は鳥たちの楽園
( 写真説明 ) 天間から見た富士山のふったて雲
( 写真説明 ) 桑崎浅間神社のシイ・タブノキ林
( 写真説明 ) 浮島ヶ原のダイサギ
( 写真説明 ) アシタカツツジ
( 写真説明 ) 盛り上がった笠雲
添付ファイル
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