田子浦地区の中丸には、弁天さんをまつった小さな社(やしろ)があります。弁天さんは漁師(りょうし)の多かった昔、大切な海の守り神でした。
今回は中丸の弁天さんのお話です。
漁師が大漁(たいりょう)を願う
昔、中丸には海に出て魚をとる漁師が大勢住んでいました。
ある年、魚がほんの少ししかとれなくなり、人々は暮らしに困ってしまいました。困った漁師たちは、
「なんとかして、魚がたくさんとれる方法はないかな。」「そうだ、海の神様にお願いしよう。」「それがいい、そうしよう。」
と相談して、中丸の小さな丘に弁天さんをまつりました。漁師たちは毎日お供えものをして、一生懸命お祈りしました。
幾日かたって、たくさんの魚がとれるようになり、村の人々は大喜びしました。
「弁天さんのおかげだ」と、お礼のお参りもしました。
静まった大波
あるとき、ものすごい台風が来て、大波が家のすぐ近くまで押し寄せて来ました。村の人々は、夢中で弁天さんの丘へ逃げました。
真っ暗な海は、まるで魔物が暴れ狂っているようで、人々は恐ろしさに震えていました。そのとき、
「弁天さん、助けてください。」と、だれかが言いました。みんなも声を合わせてお願いしました。
すると急に、荒れ狂っていた大波は静まり、みんな助かりました。
不幸なことがあるとお参り
弁天さんの近くに住む貫名仁治さん(70歳)は「弁天さんは江戸時代からまつられるようになったと聞いています。今じゃこの辺も漁師が少なくなって、何か不幸なことがあると、お参りする人が多いね。」と語ってくれました。
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( 写真説明 ) 中丸の弁天さん
( 写真説明 ) 貫名仁治さん