今では知る人も少なくなりましたが、原田の宇東川地区には「ネギをつくってはいけない」という言い伝えがありました。今回は、その言い伝えをめぐるお話です。
ネギ畑に落ちた氏神様
昔、宇東川地区の氏神様が、白い馬に乗って社殿へ帰ろうとしたとき、馬が何に驚いたのか、急に暴れ出しました。
不意をつかれた氏神様は、握り締めていた手綱(たずな)を放して、馬から放り出されてしまいました。
氏神様が落ちたところはネギ畑で、ネギの汁が目にしみ、氏神様は目をつぶしてしまいました。
そんなことがあってから、宇東川地区の人たちは、「氏神様に申しわけがない」とネギをつくらなくなり、白い馬も飼わなくなりました。
怒りにふれた強情男
あるとき、強情な男が、「そんなばかな、おれはそんなこと信じないぞ。」と言って、畑にネギをつくりました。
しばらくすると、強情男の家の人が次々に病気になったり、心配ごとが続くようになりました。
さすがの男も「これはネギをつくったので氏神様が怒ったのかもしれない」と思い、畑のネギを全部抜き取ってしまいました。
すると病人はたちまち元気になり、不幸なことも起こらなくなりました。
ネギは少し抵抗あるね
宇東川町1丁目の秋山只雄さん(71歳)は「ネギはつくっちゃいけないと昔の人はよく言っていました。気持ちの問題で、私自身も、ネギをつくるのは少々抵抗があります。でも今は、話を知っている人が少なくなり、ちらほら見かけるよ。」と語ってくれました。
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( 写真説明 ) 秋山只雄さん