須津地区の赤渕川と沼川の合流点付近を清勇(青柳ともいう)といい、昔は、うっそうとしたところでした。
今回は、ここに伝わる川天狗のお話です。
おい、魚をくれ
ある夏の、今にも雨が落ちてきそうな暗い晩のことです。虎さんは清勇に釣りに来ました。
「よく約れるな」といっぱいになったびくを下げて、虎さんは帰り支度を始めました。
すると、後ろから「おい、魚をくれ」という声がしました。振り返ってみると、すぐ後ろに恐しい顔をした川天狗がいました。
ほう、こんな顔かい
びっくりした虎さんは、びくを抱えて一目散に逃げ出しました。
すると向こうから、ほおかぶりをした隣の金さんがやって来ました。「どうした?そんなに息を切らして」「川…川天狗が出たんだ。それがなあ、物すごいんだ」「ほう、こんな顔かい」といいながらほおかぶりをとって、虎さんの顔をのぞき込みました。それは、恐しい川天狗の顔でした。
「ううーん」と虎さんはその場へ気を失って倒れてしまいました。虎さんの帰りがあまりに遅いので近所の人たちが捜しにやってきて、空っぽのびくを大切そうに抱え土手の上で気を失っている虎さんを見つけました。
今は面影がないね
川尻2丁目の鈴木康正さん(77歳)は「清勇には大きな松があり、そりゃもううっそうとしていたよ。きつねやかっぱ、天狗などにばかされた話はたくさん伝わっているね。今では面影がないのが寂しいよ」と語ってくれました。
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( 写真説明 ) 鈴木康正さん
( 写真説明 ) 「昔はこの辺に清勇橋があったよ」