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【広報ふじ昭和61年】富士川断層 連日監視結果から

いまのところ断層の動きはごくわずか

 東京大学地震研究所は市地震防災対策室の協力を得て、東海地震の発生源とみられる富士川断層の動きを、毎日観測することによって地震を予知しようと、数年前から市役所の屋上と富士川町役場、富士宮東高の3か所から14測点を観測してきました。
 昨年2月25日発行の広報ふじで、この観測方法について紹介しましたので、今回はこれまでの観測結果について、地震研究所の恒石先生の解説でお知らせします。
地震予知は

 東海地震の発生を事前にキャッチするためには、適切な観測を継続する以外に方法はありません。
 どのような観測が必要であるかは、東海地震がどうして起こると考えられるかという問題と結びついています。
 今から132年前の安政大地震の際に富士川の河口で著しい地殻変動が起こりました。
 蒲原町側の西岸が隆起し、富士市側の東岸が沈降したのでした。詳しく調査してみると、そこには富士川断層という、日本で最も活動的な活断層が存在していることがわかったのでした。
 この断層は、駿河湾の中から富士川の河口へ上陸し、さらに北方の富士宮市に続いています。
 地震の際の動き方も、上下方向よりも水平方向の量が大きい「左横すべり断層」であることもわかってきました。


地震は断層が動くときに発生

 歴史的にみても次の東海地震は今すぐではないにしろ、着実に近づいてきていることは確かです。
 地震は断層が動くときに発生するものですから、東海地震を予知するためには、発生源となる富士川断層の動きを監視することが最も有効な方法であると言えます。
 このような考えをもとに数年前「富士川断層連日監視システム」がつくられました。
 市役所の屋上に観測室を設け、毎日の観測を続けて3年近くのときが経過しました。
 今回は観測の結果がどうなっているかを紹介します。


毎日14測点を観測

 観測の仕方については昨年2月25日の「広報ふじ」でやや詳しく紹介しましたが、市役所屋上の光波測定室から富士南中学校、松岡の早房マンション、鷹岡小学校までの距離を毎朝レーザー光線で観測し、土地の伸び縮みの様子をとらえようとするわけです。
 このような設備は、富士川町役場と富士宮東高校にも置かれていて、測線図に見るように合計14の測線が観測されています。
 私たちには、大地は不動のように思えますが、精密な観測を長期間続けてみますと、微妙な伸び縮みの様子を検出することができます。

グラフを見てみましょう

 各線とも縦座標では伸びを上向き、縮みを下向きに取ってあり、ひと目盛りが10ミリメートルの変化を表わしています。
 いくつかの測線に大きなうねりのような変化のあることに気がつきます。
 このうねりは1年周期で波うっていることから、本物の大地の動きではなく、大気の状態による見せかけの現象と考えられます。このうねりを差し引いてみますと、長期間に伸びる測線や縮む測線を認めることができます。
 例えば、富士川町役場から鷹岡小学校までの北東方向のOG測線は伸びています。一方、第2清掃工場への南東方向のOC測線は縮んでいます。
 これらの動きは地殻変動であり、少しずつひずみが蓄積されていることを示しています。
 富士川断層をまたいでいないOD測線は距離の変化を見せていません。



変化の仕方はごくわずか

市役所からの3本の測線は、断層を横断していません。これらは断層の東側の土地のひずみを見るためのものだからです。グラフの下側の3本がその結果ですが、この変化を何と表現したらよいでしょうか。1年周期のうねりは著しくありません。全体として変化の仕方はおとなしく、QKとQAの測線はやや右下がりで縮みの傾向を示しているといったところです。富士南中学校へ向けたQK測線は、初年度に一たん大きく縮んだ後ほとんど回復しています。
 全部の測線を通じて言えることは、数年間の変化がたかだか10ミリメートル程度だということです。
 数キロメートルの長さの測線の距離変化がこの程度だということは、富士川断層が異常な動きを示していないということになります。



短期間に数センチ変化すると要注意

 地震の前後では数十センチメートルの変化が考えられます。その1割が前兆現象として現われるとして数センチメートルになります。
 今後数センチメートルの変化が比較的短期間に現われた場合には、異常と認めなければなりません。
 東海地震の発生に先立って、前兆的な地殻のひずみが検出できるとすれば、こと人命に関して地震はもはや恐ろしい存在ではなくなるでしょう。そこに観測の重要性があります。

庁舎に地震計を設置

 市地震防災対策室は、昨年9月庁舎に地震計を設置しました。
 通常地震が発生すると気象庁から各地の震度が発表されます。震度は、体感及び周囲のゆれ方、被害の状況などによって決められますが、この方法は専門的な人でないと判断しにくいということがあります。
 今回庁舎に設置された地震計は、機械的に計測し震度や発生時間、波形などが記録されるようになっています。海岸線を持つ富士市としては、気象庁が発表する津波警報や注意報が時間がかかることや、地震発生から2、3分後に津波が押し寄せた日本海中部地震の教訓を生かし、庁舎の地震計が震度4以上を表示した場合、市独自で海面の監視や避難命令を出して市民の地震防災に役立てていきます。

- 図表あり -
( 図表説明 ) P富士宮東高校 O富士川町役場 Q市役所 G鷹岡小学校 K南中学校 A早房マンション
添付ファイル
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