ことしの4月から公的年金制度が変わります。
今回の改正は、今後、高齢化社会を迎える中で、公的年金制度を長期的に安定したものに改革することを目的としています。
主な改正点は、「基礎年金」制度の導入(従来の国民年金の適用を広げ、すべての国民が加入する)、給付水準と保険料負担の適正化、婦人の年金権の確立、障害年金の充実などです。
また、昨年の12月20日、共済年金改正法も成立し、国民・厚生年金改正法とともに4月からスタートします。
基礎年金制度を導入
今回の改正で導入される基礎年金とは、今までの国民年金に自営業者等だけでなく、サラリーマンやその奥さんなども含めた20歳から60歳までの人すべてが加入し、国民みんなで年金の基礎部分を支えていこうというものです。
今までの公的年金制度は、サラリーマンなどを対象とする厚生年金、船員を対象とする船員保険、公務員などを対象とする共済年金、及び自営業者、農業者を対象とする国民年金に制度が分かれていました。
そして、各制度ごとに給付と負担の設計が行われていたために、結果的に制度間にさまざまな格差が生じていました。また、制度が職域を中心としてタテ割りでつくられているため、産業構造の変化や就業構造の変化に対応できない部分がありました。例えば、国鉄共済組合や船員保険の被保険者の減少は、制度の財政基盤を不安定なものにしていました。
その他にも、制度が分かれているため、一人の人が複数の年金を受けるケースなどが生じており、その適正な調整を迫られていました。
こうした問題を解決するために導入されたのが基礎年金制度です。
この結果、厚生年金保険等は国民年金の上に乗り、加入期間分の「報酬比例の年金=支払った保険料額に応じた年金」を支給する2階建ての新体系となります。また、船員保険は厚生年金に統合されます。
〈基礎年金制度のメリット〉
・制度間の格差が是正できる。
・就業構造の変化による影響を受けにくい。
・一人一個の基礎年金が確立される。
以上のことなどが基礎年金制度のメリットといえます。
給付と負担の適正化
今回の改正で、年金の給付と負担を適正化するために、サラリーマン世帯の場合、標準的な年金額が現役勤労者の平均賃金の68%という、現在の水準程度が将来にわたって維持されるようになりました。
現在、年金受給者の平均加入年数は32年ですが、今後は40年程度が一般的になると考えられます。
現状の給付水準をそのまま続けていくと、将来の年金額は、現役勤労者の平均賃金の8割以上にもなります。さらに、奥さんが国民年金に40年間加入していたとすると、夫婦合計の年金額は現役の平均賃金の109%にもなってしまいます。
このような高水準の給付を支えるためには、現役世代の保険料負担を大幅にふやさなければならなくなり、負担面からみても、現行制度の構造的水準は高過ぎるといえます。このような負担増を是正するためにも、給付や負担の適正化が必要です。
婦人の年金権を確立
改正前の制度では、サラリ−マンの奥さん(専業主婦)は、国民年令に任意加入しない限り、自分名義の年金は持てませんでした。今回の改正では、サラリーマンの奥さんを含む全国民が国民年金に加入し、それぞれの名義の基礎年金を受けられます。
これにより、万が一サラリーマンの奥さんが離婚したり、障害者となった場合でも、従来のように国民年金に任意加入していないと無年金になるということはなくなり、奥さん名義の老齢年金や障害年金の支給を受けることができます。
障害年金の適用を拡大
20歳未満で障害者となった人は、今まで20歳を過ぎても低額の障害福祉年金しか受けられませんでした。
これらの人たちも改正後は、20歳以後に障害者となった人と同額の障害基礎年金が支給されることとなりました。
共済年金も同時スタート
共済年金改正法は、高齢化の到来で給付と負担のバランスが崩れ、制度が行き詰まるのを防ぐとともに、年金の官民格差を是正することを目的としています。国民・厚生年金改正法と同時に4月からスタートします。
- 図表あり -
( 図表説明 ) 新しい年金制度のしくみ