江尾の東名高速道路の南側に直径20メートル、高さ10メートルほどの雑木が密生した小山があります。地元の人はここを天狗の住む「ごぜの森」と呼び、今でも近づきません。今回は、この「ごぜの森」にまつわるお話です。
天狗の住む森
昔、京の帝(みかど)に駿河のごちそうを一足飛びに届けたという天狗が江尾の小さな森に住んでいました。
天狗は夜になると時々怒って、嵐のように木をゆさぶります。朝になって村の人がいってみると、あんなにガサガサゆさぶったのに木の葉は一枚も落ちていませんでした。
また、あるとき村人の一人が、この森で草を刈ってきました。するとその晩、みすぼらしい姿をした坊さんがやってきて、「今日刈った草を森へ返せ、返さないとたたりがあるぞ」といって帰りました。村人は気にもとめずにいると、間もなくその家に病人やけが人が次々に出て、思いがけない不幸が続きました。村人たちは、「あの森のたたりに違いない」とうわさし、以来だれもこの森の草や木に手をつける者はなくなりました。
言い伝えでは、昔、この森にごぜ(盲人で民家の軒先(のきさき)で歌って歩く人)を葬(ほうむ)ったから、ごぜの森というのだそうです。
草や木は今でも切らない
「ごぜの森」の南に住む後藤唯雄さん(82歳)は、「ごぜの森の草や木を切る人は今でもいないよ。子供のころは、うっそうとした暗い森でとても怖いところだった。10歳ぐらいのとき、かくれんぼに夢中になり入ってしまったことがあった。中には大きな石があったよ」と語ってくれました。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 後藤さん
( 写真説明 ) 今でもあまり人が入らないごぜの森