橘田権治さん
沖合いを低気圧が通ると、暴風雨が森に荒れる。時に夕立があり、森の若葉の匂いが一層深くなる。そうかと思うと暑い日が2、3日続く。
モリアオガエルの卵塊(らんかい)は日照りには表面が固くなり、雨が降ると熟成した塊(かたまり)が崩(くず)れて水の上に一片ずつ落ち、早くも小さなオタマジャクシとなって泳ぎ出す。
森にはイボタの花、アワブキ、ヤマボウシ、カマツカ、エゴノキの白い花が次々に咲き、道のべにはシモツケ、ササユリ、サンショウバラの淡紅色、それに薄紫と黄のヤマオダマキが咲き始める。サクラ、モミジイチゴの実が熟し、イカルの群が集まる。
ある霧の朝、広場から道にかけておびただしい桜の実の核だけの糞(ふん)が散らばっていた。どこから来たのかテンの群が夜中、桜の実をあさり、またどこかへ去った宴(うたげ)の跡と見えた。肉食のくせに時折ノブドウ等を大量に食べるという。彼らの糞は鳥と違って、白い尿が混じっていない。
梅雨に入ると、毎日霧深い日が続く。シジュウカラやヒガラの一番ビナもこの頃巣立っていく。
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( 写真説明 ) テン