「ザザザァー、ザザザァー」とまるでバケツで水を振りまけたような大雨。この大雨は、何度となく本市に浸水被害をもたらしてきました。特に、伝法沢川が合流する小潤井川流域の吉原地区市街地は、上流部の開発が進むにつれ、治水機能が低下し、浸水被害が多発するようになりました。
そこで、市は、市街地の治水対策として、上流部にある大渕の片倉地区を流れる伝法沢川にダムをつくり、下流部の浸水被害を防ごうと、昭和57年度から3年計画で、片倉雨水貯留ダムの建設を進めてきました。
3月14日、この片倉雨水貯留ダムが完成、下流部の住民にとって、治水対策の心強い味方となり、その効果が期待されます。また、このダムは、河川に直接貯留ダムをつくるという全国でも初めての試みとして注目されました。
片倉雨水貯留ダムの概要
★所在地 富士市片倉町
★河川名 伝法沢川
★集水面積 6.35キロ平方メートル
★総貯水量 5万4,000立方メートル
★型式 重力式コンクリートダム
★堤高 14.5メートル
★堤頂長 46.5メートル
★総事業費 11億8,000万円
★着工 昭和57年12月
★完成 昭和60年3月
◎災害対策はまちづくりの基本 川口 弘さん 青島(65歳)
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まちづくりの基本は災害対策だと思っています。災害対策はこれからのまちづくりに欠かせないものです。
その意味では、片倉ダムに大きな期待を寄せています。機能を発揮するのはこれからですが、その効果を見守りたいと思っています。
◎大いに期待しています 高田七蔵さん 新追町(72歳)
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子供のころからよく遊んだ潤井川には愛着がありますが、大雨のたびに浸水には悩まされ続けていました。しかし、片倉雨水貯留ダムの完成で、ひと安心。東名横の貯留池ができただけで違いますので、片倉のダムには大いに期待しています。
■治水対策のエースに
富士市の地形は、富士山麓の丘陵地のため、山間部に降った雨が、短時間のうちに、急激に平たん部の吉原地区市街地に出水する特性があります。
このため、市街地を流れる伝法沢川下流の小潤井川や和田川、田宿川、松原川などの河川の流域地区は、大雨が降るたびに浸水被害が出ていました。
市は、毎年度、河川改修工事を行っていますが、上流部の開発が進むにつれ治水機能の低下は目に見えています。また、家の密集している地域の川幅を広げることは、非常に困難性があります。
そこで、市街地の治水対策として計画されたのが、片倉雨水貯留ダムです。
■小潤井川流域の浸水は軽減
片倉雨水貯留ダムは、堤の高さ14.5メートル、堤頂の長さが46.5メートルで、総貯水量5万4,000立方メートルで、重力式コンクリートダムです。
大雨の時は、貯留ダムに雨水をためて徐々に流して水量を調整し、30年に一度あるかないかといわれる時間雨量65ミリの豪雨にも耐える能力を持っています。
伝法沢川は、市街地を流れる小潤井川に流れ込んでおり、市街地の治水対策としては、貯留ダムではまだ完全とはいえませんが、かなりの洪水調整機能を果たすと期待されます。
また、治水対策として、河川に直接雨水貯留ダムをつくるのは、全国でも初めての試みだけに、その効果が注目されます。
■今後の対策は
今後の治水対策は、中小河川の改良や整備とともに、水門の新設、改良を進めていきます。和田川や岩本山地域の治水対策も流域調査や雨水解析調査の検討結果に基づき、国・県とも協議し、改修計画を立て早期事業化に向けて努力していきます。
■富士の新名所に
ダムの周辺には、公園を設置したり、記念碑を建てるなど、景観面にも考慮がなされ、富士市の新しい名所として市民に親しまれる場所となりそうです。
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( 写真説明 ) 昭和51年8月の集中豪雨