橘田権治さん
晴れた朝、広場は霜で真っ白になる。富士は終日雪煙をなびかせ、池はカチカチに凍り、戸外の水道もすべて凍ってしまう。すっかり葉を落とした雑木林には光が弾み、リスが跳びまわり、シジュウカラ、エナガの群れが舞い渡る。道は落葉で埋まっている。林の奥でアカゲラもドラミングをはじめた。雪は一冬4回か5回積もるが、せいぜい10センチそこそこ。雪の朝、森は白サンゴの林の様になる。雪が凍って枯木立を木花で包む広場にはウサギ、タヌキ、キツネの足跡が縦横についている。ある雪の降る夜、自然館の外壁をコツコツたたく音がする。そっと戸外を見るとキツネが一匹、人の気配にふりかえりながらブッシュの中に隠れた。あくる朝戸外を見ると、東の森から台所の外をうかがい、青少年の家のカマド付近をうろついた足跡が、ふたたび森の奥へと続いていた。