宮下には、「お伊勢塚」さんといって、病気を直す神様が祀(まつ)られています。昔は、多くの人がお参りに来ましたが……。
これは、宮下に住む佐野さんが、子どものころ、よくお年寄から聞かされた話です。
語ってくれた人 佐野忠夫さん(66歳) 宮下
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病気の旅人が…
いつごろのことだかわからんけどな、昔な、いくんちもいくんちも雨の日が続いたことがあったそうだ。
そのころぁ富士川は、渡し船でむこう岸の岩渕へ渡ったもんだけどな、みゃあんち(毎日)雨だもんで船場あ旅人でいっぴゃあで、宮下まで来たんだって。そのころのたびゃ(旅は)難儀だったようだ。その中でな、お伊勢参り途中の1人の重い皮膚病をもった年寄がいたそうだ。
あんまり汚にゃあもんでな、どこの家(うち)でも泊めちゃあくれにゃあので、雨に打たれて、とぼとぼ杖を頼りに宮下村まで来てな、ある家のとば□に立ってなあ、「ひと晩とめてくだせえ」と頼んだそうだ。その可哀想な姿を見て、情け深いその家の人達は気持よく泊めてやってな。やれお風呂だ、ぬくてえおかゆだ、とそりゃあ親身に世話してやったそうだけんどなあ、なにしろひどく病んでいる上に、雨に叩(たた)かれて何日も歩いて来たもんでなあ、身体か弱ってしまったのだな。とうとうそれから間もなく死んでしまったそうだ。
死ぬ時にな、「どうか私をここへ祀(まつ)ってください。そうすれば、今後私と同じ病で苦しむ人たちを救ってあげられる…」こう言い残したので、その家の人をはじめ、村の人たちがカを合わせて、そこへ祠(ほこら)を建ててやったと。
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