【広報ふじ昭和57年】ねたきり老人の実態調査から
最も大変は入浴
お年寄の日常生活の実態を明らかにし、これからの福祉政策に役立てるため、市は民生委員の協力を得て、毎年「在宅老人実態調査」を行っています。
ここでは、昨年行ったねたきり老人の実態調査結果についてお知らせします。
−調査方法−
調査は、昭和56年7月1日現在で、294人全員のねたきり老人を対象に行いました。調査方法は民生委員による訪問調査です。
●介護は嫁が37パーセント
ねたきり老人294人のうち、性別では、男性136人、女性158人で女性が男性を22人上回っています。
これを年齢別にみると、左の図のとおり。70歳から74歳までが一番多く72人(24.5パーセント)、次いで、75歳から79歳までの62人(21.1パーセント)、80歳から84歳までの56人(19.1パーセント)の順となっています。
ねたきり老人の介護者については、嫁が一番多く37.6パーセント。次に、配偶者32.2パーセント、娘12.9パーセントの順です。
●必要な介護法の習得
歩行については、全く歩けないが半数以上を占め54.1パーセント、付添が肩をかせば歩ける27.6パーセント、手で支えれば自分で歩ける15.6パーセント、杖等を使えば自分で歩ける2.7パーセントとなっています。
このようなことから、日常生活の状態により、何らかの介助をすれは歩行できる老人が45.9パーセントになります。したがって、今後、介護者に介護方法及び、機能回復訓練等の知識を習得させることが必要と思われます。
●入浴車派遣事業も
食事については、手助けすれば自分でできる34.7パーセント、付添・介助を必要とする30.9パーセント、自分では全くできない21.1パーセント、普通に自分でできる13.3パーセント。このようなことから、食事については、86.7パーセントの老人が多少なりの介護を必要としていますが、時間がかかっても、極力老人自ら食事をとらせるようにしむけていく工夫が必要です。
入浴については、入浴できずきれいに拭く(47.2パーセント)と付添・介助を必要とする(45.6パーセント)で、92.8パーセントを占めています。このようなことから.市としては、在宅入浴サービス事業として、巡回入浴車派遣事業や簡易移動浴槽貸与・給付事業を行っています。
●多い脳卒中と高血圧
ねたきりになった原因別状況では右表のとおり、脳卒中と高血圧で、37.7パーセントを占めています。
ねたきりになってからの期間では、1年から2年まで29.6パーセント、1年未満22.8パーセントですが、5年以上の老人は、29.9パーセントいます。
ねたきり老人を介護しているみなさんに、大変な仕事の順位をたずねたところ、入浴が最も多く34.8パーセント。次に、オムツ交換の18.6パーセント、着替えの17.0パーセントでした。
このようなことから、今後、在宅入浴サービス事業の充実が、より必要と思われます。
- 写真あり -
( 写真説明 ) ヘルパーによる健康診査
( 写真説明 ) 巡回車による入浴サービス
- 図表あり -
( 図表説明 ) 年齢別寝たきり老人数
( 図表説明 ) 介護者の状況
( 図表説明 ) ねたきりになった原因別状況
思いやりの心を
民生委員 百瀬昌一さん(70歳)今泉緑ヶ丘
- 写真あり -
世の中の機構や人間関係が複雑になるにしたがい、社会にとけ込めない老人が増えているのが現実。人間は、誰もが年をとっていき、やがては老人となるのだから、すべての人が老人に対して、思いやりを持たなければいけないと思う。また、老人も社会のお荷物とならないように心がけなければいけない。
人の幸せというものは、あたたかい思いやりのある家庭で、家族といっ緒に暮らすことにあるのでは…。
入浴を楽しみに
技術家庭奉仕員 大島きみ子さん(30歳)傘木
- 写真あり -
土曜日・日曜日を除く月曜日から金曜日までの毎日、入浴車でねたきり老人の巡回訪問をしています。私たちが来るのをお年寄は、とっても楽しみにしているんです。雨の日などは準備も大変ですが、お年寄の顔を見ると苦労も忘れます。ただ、入浴の前に健康診査をやるんですが、血圧が高い場合は入浴できないんです。そんなとき、お年寄が涙を流して残念がります。この仕事は、とてもやりがいのある仕事です。
介護者にも安らぎを 心身障害児(者)を預かる短期保護事業
病気になった。冠婚葬祭がある−このような時、心身障害児(者)のいる家庭では、大変困ります。市が、今年から始めた心身障害児(者)短期保護事業は、このような悩みを解決しようとするものです。
●社会的に弱い立場の人が
心身障害児(者)を持つ家庭にとってその苦労は大変なもの。市が昭和54年4月に行った、心身障害児(者)の調査によると、市内には、なんらかのかたちで心身に障害をもつ人が、671人います。
このうち、家庭にいる在宅障害児(者)は約62パーセントにあたる416人、福祉施設に入っている障害児(者)は38パーセントの255人でした。
障害者の比率を種別でみると、精神薄弱84%、肢体不自由3%、重度の心身障害10%、自閉症・その他3%となっています。
●本当の幸せって
今井に住む野辺誠一(のべせいいち)さん(58歳)の二男、美行(よしゆき)さん(25歳)も重度心身障害者の1人です。
美行さんは、自宅で両親と家族に面倒をみてもらっている在宅障害者。
ふだんはお母さんがつきっきりで食事や排便など、身のまわりのことをいっさいみていますが、お母さんが病気になったときなどは、誠一さんが仕事を休んで面倒をみています。また、どうしても夫婦で出席しなければならない冠婚葬祭の時などは、姉の修代(のぶよ)さんが学校を休んで面倒をみたこともあったそうです。
野辺さん宅では、10数年前に一度美行さんを施設に入所させましたが、やはり家庭で面倒をみるのが、子どもにとって一番幸せなのではないか−ということで、すぐに連れ帰ったそうです。
重度の心身障害者をもつ親にとって、子どもから目を離すことはいっときも許されないのです−とその苦労を野辺さんは話します。野辺さん一家は現在まで、家族で一度も旅行などへ出かけたことがないとのことです。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 今井本町 野辺誠一さん
●施設依存から在宅重視へ
今までの福祉に対しての考え方は,施設を造って、そこに障害者を入れるという、いわゆる施設依存型が中心的でした。特に、富士市の場合は、福祉施設がととのっているため、このような傾向が強いといえます。
障害者にとって、施設に入ることが本当の幸せにつながるのかというと、必ずしもそうばかりとはいえません。ある障害者福祉施設の職員は「私たちが、施設でどんなによく面例をみても、親には絶対にかなわない。」また、「施設に入ってしまうと、家族や地域の人たちと接触が少なくなり、孤立しがちです。」と話します。
これからの福祉は、障害者が自分の家で安心して生活できるような福祉、いわゆる在宅福祉を中心にすすめるべきだという声が高まりつつあり行政としてもその方向にすすんでいます。
市が独自で始めたこの心身障害児(者)短期保護事業も、在宅福祉行政の一つといえます。
在宅福祉へのワンステップ
大きな支えとなる短期保護制度
では、この心身障害児(者)短期保護事業について、その概要をお知らせします。この事業は、心身障害児(者)を介護している人が、病気、冠婚葬祭などの理由により、一時的に障害者の介護ができなくなったとき、施設で心身障害児(者)を預るというものです。預る施設は、大渕岩倉の社会福祉法人、誠信会。預る期間は7日以内です。
費用は、1日当り4,000円ですが、このうち個人負担は1,200円。残りの2,800円は市が負担します。
申込み先は、市児童課 内線 344
この事業について、野辺さんは「障害児をもつ家庭にとって、このような制度ができたということは、大変ありがたく、心のよりどころにもなっています。急用のときなどは今まで、家族や親戚にたよらざるをえなかった家庭も、このような制度があれば安心です。」と話しています。
最後に野辺さんは、「私たち家族は、重度の障害を持つ息子にとって、一番の幸せは何かということを常に考えてきました。これからも、この子を中心に生活していきたい、と思います。」と熱いまなざしで話していました。
お年寄や障害者の部屋の増改築に資金を融資します
市と富士信用金庫は、老人及び障害者の専用居室等を、増改築又は改造するための必要な資金を貸付けます。
◇対象者
○60歳以上で専用居室を有しない人
○身障手帳(1級・2級)の所持者
○療育手帳(総合判定A)の所持者
○上記要件のいずれかを備えている人、又は同居の親族で市内に住所を有し、市税を完納し、自力で居室等の整備を行うことが困難である人
◇貸付限度額 150万円
◇貸付利率 年3パーセント
◇償還期限 10年以内
◇連帯保証人 2人
◇受付期間 9月16日〜30日
◇問合せ先 市社会課 内線 569へ
添付ファイル
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広報広聴課 (市庁舎8階北側)
電話:0545-55-2700 ファクス:0545-51-1456
メールアドレス:kouhou@div.city.fuji.shizuoka.jp