現在の青少年は、経済的な豊かさよりも愛情の豊かさを求めている。総理府が一昨年おこなった青少年の意識調査では、このようなことが明らかになりました。15歳から23歳までの男・女3,000人を対象にしたこの調査は、家庭・学校・職場など、生活の中での連帯意識、人生観などを調べています。
さらに総理府では、この調査をもとに10年前の調査との比較もおこないました。この結果、現代の青少年には、人と人とのつながりをより一層強く求めている傾向があります。
今回は、この調査の中から家庭・学校・職業・生活などの意識の変化について紹介します。
■家族と家庭生活 母親には「家庭中心型」を
家庭についての悩みや心配ごとを持っている青少年は1割程度と少なく、10年前に比べ、24.1パーセントから10.4パーセントへと減少しています。
家庭についての悩みや心配ごととして多くあげられたのは、「収入が少ない」(24.6パーセント)、「親が自分を理解しない」(20.4パーセント)などです。
両親との話し合いは、母とは非常に盛んであり、父ともかなり行われており、10年前と比べると、父母とも、よく話す者が増加しています。
子どもに対する望ましい父母の態度としては、子どもに対する理解を前提としたうえで、父親について厳父型(55.3パーセント)、母親については慈母型(49.4パーセント)が最も多く支持されています。これとは反対に、子どもを理解しないで何ごとも厳しかったり、自由放任の父母は望まれていません。
つぎに、仕事や家庭に対する父母の態度としては、父には「家庭中心型」を望む者が58.9パーセント、「仕事中心型」を望む者が40.7パーセントですが、母には、96.7パーセントの者が「家庭中心型」を望んでおり、このうち家庭を何よりも大切にする母を望んでいる者が59.7パーセントありました。
10年前と比べると、「家庭中心型」の父を望む者は、47.1パーセントから58.9パーセントへと大きく増加し、一方「仕事中心型」の父を望む者は、52.0パーセントから40.7パーセントへと大きく減少し、順位が逆転しています。
家庭観では、家庭生活を送るうえで、経済的に豊かなことよりも愛情の豊かさを大切にする青少年が84.7パーセントの多数を占め、10年前の78.5パーセントより増加しています。
■学校生活 望ましい先生は「接触型」
次に、学校についてですが、3ページの表でもわかるように、今通っている学校に満足している青少年は75.4パーセント、不満は7.1パーセントでした。
学校への不満の内容は、「授業や授業科目」及び「先生」が多く、10年前とほぼ同じです。
望ましい先生としては、「サークル活動を通じて生徒と接触する先生」が53.5パーセントで最も多く支持され、「生徒の家庭や一身上のことにも相談にのってくれる先生」が31.9パーセントで、これにつぎ「授業や学問を重視する先生」は13.9パーセントにとどまっています。
これを10年前と比べると、「接触型」と「世話型」は、ほとんど変わりませんが「授業重視型」は減少しています。
■職業生活 「才能が生かせる職場」を希望
現在の職場に満足してしている青少年は66.2パーセントにのぼり、10年前の61.1パーセントより増加しています。
職場への不満の内容は、10年前と同様、「賃金や待遇」(35.5パーセント)及び「労働時間・休暇」(32.2パーセント)が多くなっています。
なんでもうちあけて話せる上役を持つ青少年は38.5パーセントで、10年前よりやや増加。
仕事への定着意識をみると、青少年の約半数は「今のままでよい」と考えており、仕事や勤め先をかわりたいと思っている者は25.6パーセントあります。希望する職場としては、10年前と同様、「自分の才能が生かせる職場」「気持のよい人が多い職場」「将来の不安がない職場」が上位を占めています。
勤労観についてみると、「働くことは社会人としてのつとめである」という者が38.4パーセントで最も多いが、10年前と比べるとやや減少しています。
「お金を得るために働く」者は、28.1パーセントで、「才能を伸ばすために働く」の32.8パーセントを下回っています。
■団体生活・友人関係 「仲間を得たい」が第1位
団体・グル−プに加入している青少年は38.5パーセントで、10年前の35.2パーセントよりやや増加。
加入団体の種類は、「スポーツ」(56.8パーセント)と「趣味・教養」(39.9パーセント)の団体にほとんど集中しています。
団体加入の動機は、「よい仲間を得るため」(57.3パーセント)が第1位で、「特技を身につける」(33.3パーセント)、「余暇を有効に生かす」(32.2パーセント)と続いています。心をうちあけて話せる親しい友人を持っている青少年は93.4パーセントに達しており、10年前の75.6パーセントに比べ大きく増加しています。また、親しい友人を2〜3人持つ者が最も多く、(58.1パーセント)。
親しい友人を得た場所は「学校」(88.5パーセント)が圧倒的に多く、「職場」(18.6パーセント)がこれについでいます。
これ以外の「グループ活動」や「近所」「盛り場」は少なく、青少年の交友範囲が「学校」と「職場」に限定され、10年前と比較しても広がりをみせていないことを示しています。
高度成長期から安定成長期へ。経済や環境の変化は、青少年の意識にも大きな影響を与えています。
健全な青少年の育成は
家庭内暴力や校内暴力が社会問題となっている現在ですが、反面、青少年が家庭や学校に対して、愛情を求めているのも事実です。健全な青少年を育成するには、まず、大人の理解と協力が第一では……。
- 図表あり -
( 図表説明 ) 家庭について
( 図表説明 ) 青少年の生活信条(20〜24歳)
( 図表説明 ) 生きがいを感じる時(20〜24歳)
( 図表説明 ) 学校生活に関する満足度と不満の理由(昭和55年)
( 図表説明 ) 望ましい先生像(%)