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【広報ふじ昭和57年】つくし作業所 子どもの自立を目指す

障害者にも働く場を

 心身に障害を持つ子の親にとって、子どもの就職は大きな悩みの1つ。
 家から通える職場があったなら……。このような望みを実現しようというのが、心身障害者小規模授産施設です。ちよっと聞きなれない名前ですが、市内にはこのような施設が3か所あります。
 今回は、この中の1つ「つくし作業所」を四丁河原下に住む主婦、亀田美由紀さんにレポートしていただきました。

レポーターの亀田美由紀さん 主婦(28歳) 四丁河原下
- 写真あり -

より多くの仲間と

 岳鉄吉原本町駅の踏切から東へ150メートル程の商店街の一隅に「つくし作業所」はあります。
 間口二間の小さな玄関を入ると、ややきゅう屈そうに感じる作業場で、テーブルを囲んだ子どもたちは、手際よく作業をすすめていました。
 1階が作業場と台所、2階が休憩室と更衣室。木造2階の建物は面積75平方メートル。
 この作業所ができたのは昭和55年4月。家の中に引き込もっている障害者を、1人でも多く外に出し、より多くの仲間と話したり、仕事ができるようにしよう、というのが始まりだそうです。初めは3人でスタート。その後、5人、6人と増え、現在では7人の子どもたちがここに通っています。ただし、子どもといっても17歳から48歳までの人たちです。
 作業所には、子どもたちの他に指導員の岩川さんとそのお手伝いをしてくださる川島さん。それに子どもたちのお母さんもいます。
 川島千津子さん(50歳)は、自分の娘さんも心身障害児でしたが、「1人で自立できるように」ということから7年前に喫茶店を始め、現在ではほとんど娘さんに店を任せているそうです。指導員の岩川和子さん(54歳)は、県の施設「太陽の丘」にいましたが、今はここで作業や生活の指導を行っています。
 子どもたちは、最初、作業所へ通うことすらできず、親が送り迎えをしていましたが、今ではバスに乗って通うこともできるようになりました。その途中、親切に声をかけてくれる人たちにとても感謝しています。

仕事は単調だが…

 仕事の内容は、たこ焼の箱と電卓部品の組立、それに、おもちゃ箱の印紙貼りの3種類。作業内容は比較的単調ですが、子どもたちは飽きることなく、とても楽しそうに作業をすすめています。仕事の発注業者からも、仕事を正確にやってくれる、ということで評判もいいようです。
 ただ1日に何個作るということでなく、1週間、1か月という単位で、納期限にもゆとりを持たせていただいてあるとのこと。
 これらの仕事は、民生委員や福祉関係団体の方々の紹介でいただいたそうです。また、「社会福祉事業協会」の応援も大きな支えとなっています。
 作業は、月曜日から金曜日までで、時間は午前9時頃から午後3時半頃まで。毎週金曜日は、子どもたちのお母さんが集まって、昼食の仕たくをし、みんなで楽しく昼食会を開きます。
 あるお母さんは、「子どもが一生懸命頑張っている姿を見ると、逆に親が励まされます。本当にここへ来てよかった。」と話していました。
 ところで、ここで働く1か月の報酬は、と聞くと1人3,000円位だそうです。それに皆勤賞が2,000円。この他に春・夏・秋にそれぞれ1万円のボーナスを支給。バスの定期代とお弁当のおかず代をみると、赤字になるそうです。しかし、ここで働く人たちはとても明るく感じられます。
それは、自分たちと同じ仲間と毎日あえ一緒に仕事をしているということが、心の大きな安らぎとなっているからではないでしょうか。

親が差別する場合も

 指導員の岩川さんは、作業所の子どもたちについて、次のように話してくれました。「子どもたちはここへ来る前は、家でテレビばかり見ている状態でしたが、ここへ来てからは仲間もいるし、仕事が励みになっているようです。身体も丈夫になってきました。私が心がけていることは、みんなで仲良く仕事をすることと、思いやりを大切にするということです。」 また、あるお母さんは、「障害児を持つ親は、子の代弁者といわれます。しかし、自分の子どもについて知っているのは親かもしれないが、その親が自分の子どもを差別している場合もあるのでは……」と。
 さらに、川島千津子さんは、親としての考えを語ってくれました。
 「障害児をもつ親としては、子どもが社会へ出たときに、どうしたらよいかを考えてしまいます。本人を中心とした考え方より、まわり、たとえば親や兄弟を中心として考えがちになってしまう。これでは、本当に子どもが自立していくことはできません。まわりのことを気にせず、ある程度、子どもをつき離すことも必要だと思うんです。親はいつまでも元気でいるわけではないのですから。」

川島千津子さん
- 写真あり -

取材を終えて

 今回の取材で初めて小規模授産施設というものを知りました。私だけでなく、このような施設をほとんどの人が知らないのではないでしょうか。もっと多くの人たちに知っていただき、在宅の障害者の人にも、ぜひ参加してほしいと思います。
 また、直接この施設に関係ない人でも、遊びにきて仕事を手伝ってくれると助かるそうです。小規模授産施設は、仕事をする場だけでなく、皆さんとおしゃべりしたり、身体や心を丈夫にする場でもあります。最後に、このような施設が市内にもっと多くできたら、と思いました。
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