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【広報ふじ昭和57年】ふるさとの昔話

竜になった吉野長者の娘

 竜は想像上の動物として千年以上も昔にあらわれました。いろいろな魔力を使います。
 しかし、恐ろしい妖獣(ようじゅう)というよりは、水の神としてうやまったといわれています。
 今回は竜になった娘の話の紹介を。

 むかし、天間の福泉寺の近くに吉野長者(ちょうじゃ)という大金持が住んでいました。なんの不自由のないくらしでしたが、子宝(こだから)に恵まれませんでした。そこで夫婦は氏神(うじがみ)に一心に祈りました。その真心が通じたのか、女の子が生まれ夫婦はたいへん喜んで「たまき」という名をつけて、かわいがって育てました。
 17、8の娘ざかりに成長すると、村でも評判の美しい娘になりました。


娘は長者ヶ池の主

 ある日、娘は死ぬまでに一度でよいから、白糸の滝の近くにある池をみたいと両親にお願いしました。両親はかわいい娘の願いに、さっそくカゴに乗せて、大勢の供(とも)をつけて長者ヶ池(田貫湖)へやりました。
 池につくと、娘はしばらく池をジッとみつめていました。すると、にわかに暗雲(あんうん)がたれこめ、稲妻(いなづま)が走り雷がおこると娘はみるみるうちに竜となり池の中へとびこんでしまいました。人々があっけにとられていると、間もなく池の中央にあらわれ「私は吉野の娘として生まれましたが実は、この長者ヶ池の主です。訳あってどうしても池に帰らなければならなくなったのです。どうか、私を大事に育ててくれた両親にくれぐれもよろしくお伝えください」というと、そのまま池の中へ消えてしまいました。
 人々は急いで家に帰り長者にそのことを話しました。悲しんだ長者が娘の寝床へいってみると金色の鱗(こんじきのうろこ)が3、4枚おちていたそうです。

- 写真あり -
( 写真説明 ) 福泉寺の山門
添付ファイル
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