【広報ふじ昭和57年】3月定例市議会で渡辺市長が施政方針演説
希望と誇りがもてるまちに
渡辺市長は、3月定例市議会本会議で、昭和57年度の施政方針演説を行いました。
この演説の中で市長は、市民ひとりひとりが希望と誇りを持つことができる、人間尊重のまちづくり、すなわち「生産と生活が調和する産業文化都市」の建設に、一層努力していくことを強調しました。
今回は、渡辺市長の施政方針演説の主な点について紹介します。
高まる文化の香り
新年度の市政運営については、次の4項目を重点にすすめていきます。
まず、第1は「人間を大切にする福祉と心豊かな市民文化の創造」です。
これからの福祉を考える場合、福祉を市民ひとりひとりが自らの問題として真剣に受けとめていくことが重要だと思います。そして、市民の間に福祉の心が定着し、さらに家庭に、そして地域に、福祉の実践活動が根づいていくことが大切です。
こうした、心のかよう地域福祉の発展を図るため、ボランティア活動やコミュニティ活動の助長に努め、障害者福祉都市推進のための事業を積極的に推進します。
また、富士見台地区に統合新設した(仮称)市立老人ホーム駿河荘は、単なる収容施設としてではなく、市民との交流や生きがいづくりのために、地域社会に開かれた施設として運営していきます。
一方、市民の間からは、物質的な豊かさから精神的、文化的な豊かさを求める、文化の時代への要請も高まっています。このようなことから、文化を高めるための条件づくりと、文化活動の場を、行政のあらゆる機会を通じてすすめていきます。
たとえば、教育文化奨励賞の創設や富士市を紹介する映画の制作など。
あるいは臨港富士線潤井川へ架ける新設の橋についても、単に交通機能のみでなく、吉原・富士の両市街地を東西に結ぶ象徴的な橋として、文化の香りづけを配慮します。このほか、各公共施設の建設に際しても文化性を加味し、個性的な施設づくりをすすめていきます。
●富士山をシンボルにしたまちづくり
第2は、「富士山をシンボルにした健康で明るいまちづくり」です。
今、潤いと安らぎのある美しい環境をもとめて、全市民による運動が始められようとしています。
富士市をきれいにする市民懇談会の提言をもとに、今年の2月、「富士市をきれいにする市民運動推進連絡協議会」が発足しました。みどり豊かなまちづくり、清潔できれいなまちづくりを目標に、環境美化運動が全市民的な実践活動として展開されることとなりました。
こうした活動が持続的な運動として定着することにより、きれいで美しいまちづくりが期待されます。
このようなことから、市民と行政が一体となり、富士山をシンボルとする、健康で明るいまちづくりに取組んでいきます。
一方、新年度はこうした市民運動に加え、明るい家庭づくりへの啓発と社会教育活動の推進とともに、青少年対策の一環として、青少年補導センターの機能の拡充強化を図ります。また、地域の美しい自然を守り、育て、より良い郷土の担い手となるみどりの少年団を育成するなど、青少年の健全育成に努めていきます。
●地域産業に活力を
第3は、「活力のある地域産業経済の振興」です。
都市の活力は、健康で文化的な市民のエネルギーと、市民生活を支える地域産業経済の発展によってもたらされるものと思います。
富士市は、地場産業を中心に、工業製造品出荷額県下第2位を占める工業都市として発展し、生産の場、雇用の場が確保されてきました。
しかし、今日、国の内外にわたる経済の動向は厳しく、特に地場産業をとりまく環境は一段と厳しさを加えています。工業都市である富士市にとって、これらの産業の振興は、市政上極めて重要な課題です。
こうしたなかで、新年度は、引き続き中小企業の合理化、集団化に向けての事業推進と、商業近代化対策の検討をすすめます。また、廃棄物処理対策等を含めた産業基盤の条件整備に積極的に対処していきます。
さらに、当市の産業経済の現状を踏まえ、かつ、将来的展望にたつ業界の体質改善やより附加価値の高い産業構造へ向けて、業界はもとより、広く各界の方々のご意見等を求めつつ、活力ある地域産業経済の振興策を考えていきたいと思います。
●行政事務の合理化を推進
第4は、「行財政事務の刷新合理化」です。
国の財政再建や行政改革とともに今日、地方自治体をとりまく厳しい環境の中で、自治体が自らの事務事業を見直し、財政の効率化や行政組織の活性化を図るための努力は当然のことであり、極めて重要な課題です。こうした認識のもとに、職員の自主研究グループの育成、事務事業の見直し、さらに経費の節減などを推進し、行財政事務の刷新合理化に取り組むとともに、組織の簡素化、効率化に努めていきます。
一方、今まで、県の所管となっていた都市計画法に規定する開発行為認可等にかかわる事務については、市民サービスの向上をはかるため、知事権限の委譲を受け、直接市において処理します。
また、市民サービスの向上と事務の近代化を目途に、一昨年来から取組んできた住民情報オンラインシステムは、いよいよ新年度半ばから一部導入実施します。
なお、オンライン処理にともなう個人情報の保護に関する条例を提案し、新しい事務処理システムの適正な運営を期したいと思います。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 3月定例市議会本会議
( 写真説明 ) 本会議で新年度予算などを審議する議員の皆さん
( 写真説明 ) 3月定例市議会を傍聴する市民のみなさん
市政に望む私のひとこと
医療体制の確立を
主婦 富士岡 一ッ山紀世子さん(32歳)
- 写真あり -
5歳と6歳の子どもをかかえているので、子どもが病気になったときのことが一番心配になります。急病の場合、すぐに診ていただける医療体制を確立してほしいてす。
新しい中央病院ができるそうですが、現在の中央病院では駐車場も狭いので…。立派な病院を早くつくって下さい。
ひとりひとりの意見を大切に
農業 川尻1丁目 水野寿郎さん(59歳)
- 写真あり -
農業をやっているけれど後継者問題などを含め、むずかしい時期だと思う。
農業政策にも市や国がもっと力を入れてほしい。これとは別に、町内会の役員をやっているので、下水処理場など地域的な問題もいくつかある。市は、一人一人の意見を大切に行政をすすめてほしい。
3月の議会を見学
浮島婦人会長 西船津 後藤かつ子さん(53歳)
- 写真あり -
浮島婦人会では、婦人学級の閉講式にあたり、市政を知ろうということで、3月の議会を傍聴しました。初めての議場見学でしたが、議員さんの質問などが、私たちの身近なことでしたのでよくわかりました。
これからも市政についてもっと知りたいと思います。
施政方針に手堅さはあるが…
新聞記者 中央町 山田元春さん(51歳)
- 写真あり -
市長の市政方針演説については、手堅さというものを感じる。しかし、もっと冒険的なものを取り入れてもよいのでは……。たとえば、青少年の夢や冒険心を育てるようなものを。
十数年前の公害デパートといわれた時代から脱却しはじめた時だけに必要では。
57年度の財政運営と重点施策 活力ある福祉社会を実現するために
=市民生活優先の予算編成=
次に、新年度の財政運営について申しあげます。
昭和57年度の一般合計予算額は、362億3000万円で、前年度の当初予算に比べ15億6,000万円の増加となり、4.5パーセントの伸びを。
企業会計を含む特別会計は、184億759万円で、3億5,098万円の増加となり、1.9パーセントの伸びを。
総額では、546億3,759万円となり、19億1,098万円の増加で、3.6パーセントの伸びを示しました。
このように、予算編成にあたっては、国の財政や厳しい経済環境を踏まえ、健全財政を堅持しつつ、活力ある福祉社会実現のため、限られた財源の重点的、効率的配分に努めました。その結果、一般行政経費の節減合理化をもとに、新総合計画を中心として、市民生活に直結した社会資本の整備と多様化する行政需用に対応する意欲的な取り組みをしました。
次に、予算の歳入面をみてみます。
自主財源の根幹をなす市民税、固定資産税などの市税収入総額は、215億7,370万円で、前年度に比べ10.7パーセントの増加となり、比較的安定した伸びを示しています。しかし、法人市民税には多くを望めない状況にあります。
また、国庫支出金、市債などの依存財源については、行政改革等による国庫補助金の削減、公共事業の抑制、さらに地方債の充当率の引き下げが行われたことにより、前年度に比べ9.3パーセントの減となり、緊縮型の財政構造を示しています。
一方、歳出面については、経常経費の節減合理化と、人件費を中心とする義務的経費の増加を極力抑えました。反面、新病院の建設、公共下水道をはじめとする、生活関連施設の整備、福祉の充実、産業経済の振興並びに、教育文化の推進等の諸事業を積極的に計上しました。
●5つの重点施策を中心に事業を実施していきます
続いて、新年度の事業を中心に、その実施計画をあげてみます。
まず第1に、いのちと健康を守るための実施計画では−。
新しい病院の建設については、昭和56年度に用地の取得及び、設計委託を行いましたが、いよいよ建設工事をすすめます。
新病院は、地域の基幹病院としてその機能を十分に果せるよう、診僚科目17科、一般病床500床、伝染病床20床となります。
第2に、快適で住みよい豊かなまちづくりの実施計画では−。快適な生活環境と河川等の水質を保全するための下水道事業は、東部処理場の基本設計と一部管渠の布設に着手。また、富士川河口に自然観察コースを設け、植物や水鳥の観察ができるようにします。
○厳しい経済環境の中で
第3に、子どもや老人等の生活を守る実施計画では−。
在宅心身障害者が家族の病気や事故により、介護を受けられなくなったとき、短期間安心して保護を受けることができる、心身障害児者短期保護事業を実施します。この他に、障害者の居住環境を改善するため、住宅整備資金貸付制度を新設します。
第4に、教育や文化の水準を高める実施計画では−。
吉永第一小学校の校舎改築をはじめ、元吉原小屋内運動場改築及び、原田小、吉永第一小のプ−ルを建設します。また、大渕第二小の校地拡張にともなう用地取得と、仮称岩松第二小の用地取得についてもすすめていきます。
第5に、豊かな市民生活を支える産業経済の振興を図る実施計画では−。中小企業をとりまく経済環境は、長期にわたる景気の停滞から依然として、厳しい状況下にあります。
こうしたことから、新年度も緊急不況対策資金貸付金利子補給及び、商工中金への預託、公害除去資金貸付利子補給等についての配慮をするとともに、中小工場の集団化を図るための事業化に向けて対処していきます。
○市民と行政の役割分担を明確に
これからの自治体経営は、以前にもまして、経営能力の向上と行政の執行体制や職員の意識改革が必要です。健康で明るく、豊かな、生きがいのあるまちづくりは、行政のみならず、市民自らの意欲的な参加と努力があってこそ実現します。
したがって、行政と市民の役割分担を明らかにし、市民と行政の共同の力によって、新しい理想的なまちづくりへ一層の努力をしていきます。
新総合計画でみた新年度予算
新規事業を中心に
富士市の昭和57年度予算案が、3月定例市議会本会議で審議されました。審議された新年度予算を、新組合計画の課題別総額と新規事業を中心に、その主な事業をみてみました。
◇いのちと健康を守るための計画 62億3,391万円
市役所を訪れた人に利用していただけるよう、2階へ自動血圧測定機を設置。地震対策事業として、各医療機関へ救急医療機器を配備し、事業所へは、個別受信機を設置。河川防災対策として、東名インター附近に雨水貯溜池を設置。この他、消防通信施設整備や消防団詰所整備など。
◇快適で住みよい豊かなまちをつくるための計画 93億7,497万円
入山瀬駅南へ200台収容の自転車駐車場を設置。富士見台団地へ市営住宅を建設。斉場整備事業として、用地の取得と基本計画の策定。総合運動公園陸上競技場の開場につづいて、テニスコートの造成に着手。
水鳥の観察などができるように、富士川河口へ自然観察コースを整備。
◇子どもや老人等の生活を守るための計画 39億3,124万円
保育所の整備事業として、浜保育園の改築、小百合保育園用地取得。
在宅の心身障害児を一時的に預る心身障害児短期保護事業。障害者の居住環境を改善するための、障害者住宅整備資金貸付制度。
この他、ねたきり老人短期保護事業や老人入浴車事業など。
◇教育や文化の水準を高めるための計画 41億4,929万円
原田幼稚園の改築と浜幼稚園の改築設計委託。吉原東中、岩松中、吉永第一小の校舎増築と吉原第一中の校舎改築。(仮称)岩松第二小、大渕第二小の学校用地取得。富士見台公民館の新設。
芸術・文化を高めるために教育文化奨励賞制定。
◇豊かな市民の生活を支える産業経済の振興をはかるための計画 23億4,871万円
長期にわたる景気の不況対策として、今年も緊急不況対策資金貸付利子補給及び商工中金への預託、公害除去資金貸付利子補給等。
農業振興に、大渕畑地帯総合整備、富士東部圃場整備事業等。林業振興に、林業構造改善事業等。
添付ファイル
※PDFを初めてご覧になる方は、ソフト(Adobe Reader)のダウンロードが必要です。
「Get Adobe Reader」のボタンをクリックし、説明に従いAdobe Readerをダウンロードして下さい。
広報広聴課 (市庁舎8階北側)
電話:0545-55-2700 ファクス:0545-51-1456
メールアドレス:kouhou@div.city.fuji.shizuoka.jp