りつ子
この間、近所に火災があって大変だったわ。あとの話し合いもまだ、ついていないようなの。
のり夫
そりゃ困ったね。消防本部の発表だと、市内で昨年1年間の火災発生件数は123件だったそうだよ。
りつ子
そんなにあったの。火災にあったら困るわ。
■知っていますか?失火責任の法律
のり夫
そうなんだよ。いつ自分の家が火元になったり、近所からのもらい火で類焼することになるかわからないからね。
りつ子
近所に迷惑をかけるわね。その場合、法律的にはどうなの?
のり夫
民法に故意や過失で他人の権利を侵害した者はこれによって生じた損害を賠償する責任があるという条文があるんだよ。
りつ子
そうなると火災の場合も、そういうことなの。
のり夫
ところが火災の場合は、一般的に被害額が大きく、その金額を負担しきれないことと、出火原因の究明が必ずしも容易でないというようなことから、特別に「失火の責任に関する法律」が定められているんだよ。
りつ子
民法よりも優先する特別な法律ってわけね。
のり夫
そうなんだ。これによると火を出した場合には、民法の不法行為の要件が適用されないんだよ。しかし、火を出した者に重大な過失があった時は、賠償責任がおきてくるけどね。
りつ子
重大な過失って?
のり夫
そうだね。通常の人なら火災発生の注意義務を怠った場合などだね。例えば、ストーブの火をつけっばなしにして、それに給油をしながら他の用事をして火災を起こすとか。
りつ子
普通は、ちょっと考えられないわね。
のり夫
この法律は、そういう極端な場合以外は失火という不法行為があったにもかかわらず、その損害を賠償しなくてもよいという内容が定めてあるんだよ。
■解決は誠意と保険で
りつ子
それなら、火元になったらどうしたらいいの。
のり夫
そうだね。まず、本人が被害者のところにいって、火災を出したことについて心から詫びることだね。
りつ子
誠意をみせるってことね。
のり失
うん。本人が一人でいってもいいし、親戚とか有力者に介添人として口をきいてもらってから、お詫びをする方法もあるね。そして、火災の後始末が終ったらお見舞いの金額が問題になってくるね。世間の相場のようなものがないから、むずかしいんだよ。
りつ子
困るわね。
のり夫
このような場合には、お互いが困っているんだから、その立場を理解しあいながら話し合っていく以外に問題解決の方法はないね。簡易裁判所へ調停の申し立てや最後に裁判沙汰にするわけにもいかないと思うよ。
りつ子
そうなると自衛手段しかないわね。
のり夫
そういうことになるね。普段から火災保険に入っておくとか、火の始末に十分注意したり、空地を持っている人は枯草を刈るとか、みんなが周囲に迷惑をかけないよう心がけることだね。
「のり夫とりつ子のやさしい法律問答」は今回で終了します。次回からは「公共施改案内」と「ぽくの夢・わたしの夢」を紹介します。