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【広報ふじ昭和56年】ふるさとの昔話

実相寺の仁王さん

●日本のふしぎな話「におうとどっこい」から

 岩本(いわもと)の実相寺(じっそうじ)に行ったことがありますか。実相寺は今から735年前の久安(きゅうあん)年間に建てられた市内で一番大きなお寺です。
 ここにある江戸初期に作られた一対(いっつい)の仁王の木像はすばらしく市の指定文化財になっています。
 今回は、この仁王さんのお話です。
 
 昔、日本に仁王(におう)という力持ちが住んでおった。相撲(すもう)を取っても、綱(つな)引きをしても一度も負けんだった。「わしと力くらべをするものはおらぬか」仁王は日本中を回ったが、だれも相手になりません。「仁王どん隣(となり)の国の中国に「どっこい」という力持ちがいるそうな」と教える者がいた。「よし、力比べをしてみよう」仁王は船をこいで中国へ出かけていった。
 ほうぼう探(さが)し、どっこいの家を見つけたがどっこいは留守(るす)で、ばあさまがいた。「わしは、日本一力持ちの仁王だ。力くらべをしようとやってきたのに残念じゃ」というと、ばあさまが答えた。「そろそろ、お昼じゃもどってくるから、お待ちなさい」仁王が待っていると、ばあさまが飯のしたくに取りかかった。大きな釜(かま)に米を何俵(びょう)も入れ飯を炊(た)きだした。ふしぎに思って「だれが食(く)うんじゃ」と聞くと「息子のどっこいじゃよ」仁王はびっくり、これはかなわん。今のうちに逃げようと思っていると、ズシン、ドッシン、ズシン…。「ばあさま、あれは何の音じゃ」「あれか、あれは息子の足音じゃ」仁王はあたりを見まわしたがどっこいの姿は見えない。まだ遠くを歩いているらしい。そのうちに、地震のように家が揺(ゆ)れ出した。「便所をかしてくだされ」仁王は便所から逃げた。
 どっこいが帰ってくると入口に大きなわらじがあった。「お客さん?」「日本の仁王がお前と力くらべにやってきた。今、便所に入っている」ところがいつまでたっても出てこない。そっとのぞくといない。「力くらべに来たのに、どうして逃げるのだろう。連れ戻してくる」とどっこいは、大きないかりを持って追いかけた。
 遠くに仁王の船が見えた。どっこいは「力比べをしないで逃げるとはひきょう」と言うと、船めがけていかりをなげた。いかりは船につきささった。仁王は船をこぐ。どっこいは網を引く。お互いに力持ち。とうとう網が切れてしまい、仁王は海に落ち、どっこいも力余って海に倒れた。ドドド…大きな津波が起きて日本と中国に押寄せ大勢の人々が死んだ。
 「悪いことをした。もう力くらべは一生しないから許してくだされ」仁王は中国に行ってあやまり、日本に帰ってからはお寺の門番になった。どっこいも日本にやってきて、あやまり「もし何か力のいる時は、おらを呼んでください。そうしたら一生懸命働きますから」そう言って帰っていった。それで、今でも力を出すときに人々は「どっこいしょ」とどっこいを呼ぶのだとさ。

- 写真あり -
( 写真説明 ) 実相寺の仁王門
( 写真説明 ) 桧材で作られた高さ241cmの実相寺の仁王像

- 図表あり -
( 図表説明 ) 地図
添付ファイル
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