【広報ふじ昭和56年】市民文化懇談会
文化都市建設のビジョンに取組む 市民の生きがいを求めて
54年9月に、渡辺市長の発案でスタートした市民文化懇談会が、1年有余にわたる論議を重ねてこのほど、その指針ともいうべき、“文化振興の中間まとめ”を発表しました。
この懇談会は、80年代の行政課題を「地方の時代」「文化の時代」に求め、自由な話し合いの中から生まれた成果を、今後の文化行政に反映しようというもの。
メンバーは、石田潔座長を代表に市内各層から選んだ知識人26人で構成しています。
物の文化と心の文化の調和
“中間のまとめ”で注目されるのは文化を単に芸術や文化財の保護などに限定せず、日常生活の中で、より良く生きようとするすべての営みといった幅広い視野でとらえていることです。
その中で、物の文化と心の文化の調和を基調に問題点をつかみ、豊かな文化の創造に向けて住みよい文化都市、富士市を建設しようと提言しています。
以下、その内容にふれてみましょう。
●事業欲が強い市民性
文化は、そこに住む人々と風土とのかかわり合いの中から生まれるといわれます。
富土市の文化の土譲は美しい富士山を背景に恵まれた自然条件。東海道ベルト地帯に位置し、交通の要衡という地理的条件。東海道の宿場町といった歴史的条件。そこに芽生え発展してきた製紙工業−これらが生産都市を形成する軸となり、一方では、働き者といわれ、勤勉事業欲の強い市民性に支えられて今日の生産都市を築いてきました。反面、持ち前のたくましい活力が、仕事中心に向けられて心の文化よりも経済優先の価値観が生まれたのではないかと思われます。
●開かなかった文化の花
江戸時代、幕府の直轄地であった富士市は城もなく、江戸と京との中間という恵まれた地理的条件から文化が素通りし、他の都市に見られるような城下町や宿場町としての文化の花が開かなかった。それだけに、よりよく生きようとする住民の活力が物の文化へたくましく発揮されたという富士市の文化の特性がうかがわれる。しかし、富士山に結びついた浅間信仰、実相時に象徴される仏教活動、毘沙門天大祭に代表される祭典大衆文芸としての俳諧など心の文化として歴史的にもいくつかあげられるものがあり、近年、市民の間から盛り上がってきている文化団体や社会教育団体の活動は心の文化への動きとして注目される。
心豊かなまちづくりをめざして
人が、よりよく生きようとする営みが文化だといわれる。それには自己形成、自己教育の活動が必要である。その意味では、文化活動や社会教育推進会活動などの生涯教育は他市より活発で遺跡の発堀、調査なども進められているが、芸能、風俗・習慣などの伝承的文化は忘れられがちである。これらをふまえて、問題点の掘起しを行い、今後の課題を次のようにまとめています。
1.富士山をシンボルにした美しい都市づくり
2.ふれあいのある地域社会、コミュニティづくり
3.生涯学習の推進、文化意識の啓発
4.家庭の健全化、家庭教育の推進
5.自発的な文化活動の育成と環境づくり
6.地域愛の醸成、伝承文化の保存
これらの課題は、市民一人一人の努力によって、市民自らが育んでいくものであり、行政が推進役となって市民と行政とが一体となった“手づくりの文化”を実現していく必要があると結んでいます。
このあと文化懇談会は、更に具体的施策を検討し、最終提言を渡辺市長に答申することにしています。
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( 写真説明 ) 現在も受継がれている鵜無ヶ渕の神明宮神楽(かぐら)
「市民文化講演会」が11月13日吉原市民会館で開かれ、講師のNHKアナウンサー鈴木健二さんは、講演の中で“文化”について次のように述べています。
NHKアナウンサー 鈴木健二さん
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高い生産力を誇る富士市に手づくり文化をつくるなら、市民みんなが自分の生活の中に文化の意味をしっかりつかむことが第一。
文化は、良きゆとりある生活の中から生まれるものだから−。そして、今日やったから明日稔るというものではなく、家庭の暮しという長い時間の中で、家族みんなが心を寄せ合い仲良く生きていく。そこに文化が生まれてくる。戸籍だけでつながっている家族の間からは決して文化は生まれてこない。
まず、お互いに家族同志、近所同士あいさつすることからはじめよう。あいさつは相手の心を明るくし、生きがいを生み、社会とのつながりを持つ。そこに地域社会の文化が芽ばえ、大きな富士市の文化が育ってくることでしょう。
文化にひとこと
活力を文化の発展に
県立富士東高校長 風間誠之さん
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産業の発展にそそいできた活力を、今後、文化の発展と創造に向けるべきでは…。それには、
●一人一人が文化人であることを自覚し、己を磨き他を愛し、社会に尽くすこと。
●旧くから住んでいる人と、新しく住みついた人とが融和し、一体となって新しい郷土を育ていく。
●家庭教育、社会教育を推進するとともに、大学等を設置し、教育機能の充実を計ることが必要。
もっと時間をかけて
朝日新聞記者 山田竜弥さん
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2市1町が合併して十余年。3地区が融合して、一つの個性を持つには時間が短すぎるようだ。
ブレンドしたての酒が舌にぎこちないのと似ている。たっぷりとした熟成期間が必要なのでは…
それぞれが、過去に培ってきた強烈な個性を持っているため、共同作業には不慣れなのかもしれない。もっと声高らかに自分を表現し、心の優しさを持って、互いの罪を戒め合うべきだ
真の美しさを追求
声楽指導者 渡辺康子さん
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近年、ママさんコーラスなどの盛況を含め、戦後の日本社会の歩みと同様、音楽も随分と変わってきました。
音楽文化は、私の住む周辺にまできています。
音楽は、楽器を通して人間の心を表現するので、一人一人が常に努力を重ねていかなければなりません。そして、真の美しさに触れたときこそ、本物の文化が生まれると思います。
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