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【広報ふじ昭和53年】新総合計画の論文.作文入選きまる

明日の富士市を築くための計画

 市では、このほど新総合計画への市民参加の一環として一般市民、中学、高校生を対象に「明日の富士市を築くための計画に関する論文、作文」を募集しました。
 この結果、222点が応募され第1次審査(9月13日)と第2次審査を行ない次のとおり3賞3点および秀作8点、佳作17点がそれぞれ入賞、10月14日市役所で表彰式が行われました。

▲市長賞……矢崎洋一(吉原第一中2年)「僕の描く富士市の未来像」
▲市議会議長賞……山田美冬(主婦・中央町3)「明日の富士市のために」
▲教育長賞……酒井勇二(田子浦中3年)「明日の富士市に望む事」
▲秀作……遠藤美佐(吉原第一中3年)寺尾広美(富士中3年)望月芳美(岩松中1年)日向昭了(岩松中3年)稲垣信代(岩松中3年)田島久美恵(富士南中3年)秋山啓恵(富士南中3年)吉沢京子(主婦・五貫島)
 なお、今回応募いただいた論文作文は今後の市総合開発審議会等へ資料として提供、計画へ反映させていく方針です。

ぼくの描く富士市の未来像

吉原第一中2年 矢崎洋一
- 写真あり -

 「富士市」という名を聞けば、だれもが「公害」を連想するだろう。よいイメージではない。富士市を文化的なよい都市にするには、まず公害をなくすことが第一の問題だと思う。自分自身体験したことだが、小さいころは、ぜんそくにかかっていて何日も幼稚園を休んだことがあった。あの時のことは今でもはっきりと記憶に残っている。
 公害でいやなのは大気汚染ばかりではない。今はだいぶ解消されているが数年前には田子の浦港のヘドロの問題もあった。その他、地下水のくみ上げすぎや悪臭の問題もある。親戚の人が家へ来ると「臭い」と言う。何が臭いかというと大気のにおいだ。人間の鼻というのは臭い所にいればその環境に慣れてしまう。つまり慢性化してしまうわけだ。だから、ぼくたちは何とも思っていないが、ほかの土地の人が来ると、すぐにわかるようだ。工業が盛んになるのはよいことだが、製紙、製薬等の会社ではなく、例えば長野の諏訪にある時計、カメラなどの精密機械工場を誘致してほしい。そうすれば大気汚染や水質汚濁の問題も減少の方向に向かうであろう。また、現在の自動車はブレーキのところに石綿を使用しているが、これはブレーキをかけた時にその石綿が粉状になり、それが空気中に飛散され人が吸うと肺ガンになるそうだ。これらの公害は放っておけば永久におさまらないのは当然である。だから国立公害センターというのを設けて富士市を公害研究のメッカにしてはどうだろうか。
 ふと思ったが、20万都市で工業高等専門学校、短期大学、大学の一つもない都市は珍しい。また、静岡県内では医学研究をやっている大学は浜松医大だけである。富士市には、ぜんそくで苦しんでいる人たちがたくさんいるのだから、市内にも医科大学を設けて公害病の研究をすべきである。でも大学を建てるということはたいへんなことらしい。市長初め地元の有志に誘致運動をもり立ててもらいたい。
 現在、工場の数は大企業及び中小企業を合わせておよそ300ぐらいはあるだろう。それだけたくさんの工場があるのだから相当な電力を必要とする。しかし、この富士市の周辺にはこれだけの数の工場がありながら電力はみな市外、他県に頼っている(火力発電の横浜も全供給量の8割ぐらいと聞く)原子力発電の福島、水力発電の佐久間から供給している。聞くところによると、10年ぐらい前に火力発電所を田子浦地区に建設するという話があったが、市民の反対によって解消されてしまったそうだ。たまたま先日の新聞に載っていたが今、波力発電というやり方が実用化されつつある波力発電とは、船を沖合へけい留しておいて、その船の上に発電できる装備をし波のエネルギーを空気エネルギーに変え、タービンを回して発電する。自然の波をそのまま利用するので公害のでる心配は全くない。
 この方法はごく最近、海洋科学枝術センターが開発したもので、第1号船としては「海明」という長さ80メートル、幅12メートル、重量は500トンという船で、外観は3,000トン級の小型タンカーにそっくりだという。場所は日本海でも波の荒い日が最も多い由良海岸だ。
 火力発電所など大気汚染の原因となるものをわざわざ富士市に置かないで、波力発電を行えばよい。辛い鈴川海岸は波が強く水も濁っていて急深だし、海水浴場にもならないし、利用価値がないからちょうどよいと思う。
 ぼくは小さいころから思っていた。それは「なぜ富士市には東海道新幹線の駅がないか」ということだ。三島や熱海などの小さな市でさえあるのに、富士市にはないというのはおかしい。しかも新幹線を利用して工場へ通勤する人も少なくない、そういう人は三島か静岡で降り、またそれから東海道線に乗りかえるという。たいへん不便なやり方をしている。でも駅を造るといっても東海道本線の駅と新幹線の駅が離れているのでは不便だ。だから鉄道のようなものを敷いて2つの駅をドッキングさせればよいと思う。
 しかし、ただの鉄道では燃料費もかかるし連絡も悪くなるので、あまりよくない。この2つの問題を解消するような乗り物が雑誌に載っているのを見つけた。東芝府中工場で開発されている「ベルチカ」という乗り物だ。ベルトコンベアーの原理を応用したもので、レールの内側にタイヤが並んでいて、そのタイヤの上に客車がのっかって走るというしくみだ。これならタイヤを回すだけなので燃料費はかからないし次々と客車を発車することができるので連絡も良くなる。そうすれば通勤や観光客も不便なく富士市へ来ることができる。
 富士市のシンボルといえばもちろん「富士山」である。外国人も日本といえば富士山を連想する。しかし、その世界的観光地である富士山を訪れる観光客は、日本人、しかもその中のほんのわずかな人だけである。これは手軽に登れないからである。そこでぼくは富士市営の富士登山鉄道を造り、重装備をしなくても楽に頂上まで登れるようにしたらよいと思う。そうすれば富士山もたくさんの観光客であふれるであろう。これで観光都市富士市ができあがる。
 とりとめないことばかり、書いたけれど、公害の街富士市をなくすことが第一である。もし、これ以上公害が増えて、熊本の水俣市のような悲劇が起きたらたいへんである。新総合計画案のシビル・ミニマムの一つ「公害防止」の実施は必要不可欠のことであろう。これなくして「明日の富士市」「生産と生活が調和する産業文化都市」「21世紀に生きる富士市」の存在はあり得ないと強く思います。あの気高く荘厳な日本に冠たる富士山の麓のわれらの街に輝かしき前途を深く希望します。

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