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【広報ふじ昭和51年】ゴルフ場の造成計画とりやめられたい

太陽グリーンランド(株)へ勧告!!

 東京に本社をもつ太陽グリーンランド(株)が、かねてから市に届出していたゴルフ場造成計画について、市長から諮問を受けていた富士市自然環境保全会議(加藤源治議長、委員30名)は、5か月間に及ぷ審議の結果、“この造成計画を認めることは適当でない”との結論に達し、10月8日この旨を市長に答申しました。
 市長は、この答申をもとに「富士市の自然環境の保全と緑の育成に関する条例」の規定によって本年3月22日、太陽グリーンランドから届出のあったゴルフ場造成事業計画は、適当でないと判断されるので、事業計画をとりやめるよう、10月21日次のように届出者へ勧告しました。


88ヘクタール(大渕の富士本西)に18ホールを計画

 太陽グリーンランドが計画したゴルフ場の造成の場所は、富士山ろくの大淵富士本西地区地先の字鳥追窪州岳、小河窪にまたがる標高概ね550メートルから700メートルにかけての森林地帯です。このところへ約88ヘクタールの面積に、18ホール、6,300ヤードのゴルフコースとクラブハクスをつくろうとするものです。
 このゴルフ場計画用地は、ヒノキの樹令20年以上の人工林が約70パーセント、10年から20年未満のものが約12パーセント程度を占め、良好な森林相を形成しているところであり、これらの優良人工林は治山治水機能を有効に果していると評価されています。
 ゴルフ場造成によって、この森林を約44.5ヘクタールにわたって伐採し、コース造成のための40ヘクタールに及ぶ山はだを切開いて地形を改変する土砂の移動量は、切土65万立方メートル、盛土量60万立方メートルとなる造成工事を行なおうとするものです。
 この事業計画は、富士市の自然環境の保全と緑の育成に関する条例の第15条第1項の規定によって、本年3月22日、市長に届出がされました。

会社への勧告内容

<勧告の全文>
 本件ゴルフ場造成事業計画については、植生の保全、治山治水機能の保全、流域河川機能の保全、自然景観の保全、周辺農林地への影響、地域生活環境への影響等々自然環境を保全する観点から審査した結果、次の理由により本件ゴルフ場造成事業計画内容は、適当でないと判断されるので、届出に係る土地利用事業をとりやめられたい。

<適当でないとすることの理由>
1、本事業計画地域は、国土利用計画法に基づく静岡県土地利用基本計画に定める森林地域にして重点的に林業施業を推進する土地利用の位置づけがなされており、かつ、森林法に規定する地域森林計画の中では、保全を要する林班に含まれている森林の地帯であり、治山治水機能を有効に果し良好な自然環境を保有している。
2、本事業計画による約44.5ヘクタールに及ぶ森林の伐採と広はんにわたる土地の改変造成行為は、森林によって形成される治山治水機能を著しく減退化し、良好な自然環境を損う恐れがある。
3、本事業計画地域を含む河川水系凡夫川は現状においても出水時における河川機能が危ぐされる状態にあり、豪雨時の際の河川の安全確保が憂慮されるところである。
4、本事業計画地にかい在する市有林は、今後とも林地として保続育成していくため、これをゴルフ場用地とすることは、適当でない。

自然環境保全会議へ諮問 そして答申受ける

 このゴルフ場の造成計画は、富士山ろくの自然環境を保全する上で、大へん重要なかかわりをもっていることから、市長は4月23日、富士市自然環境保全会議にゴルフ場造成と自然環境の保全について諮問しました。
 諮問を受けた自然環境保全会議は条例にそって再三にわたる会議や、現地踏査を行ないあらゆる角度から検討を重ねてきました。その結果、審議の結論として、本計画地域は、その全域が富士山ろくの自然環境を形成する基盤となっている森林の地帯であるので、これらの森林を山林以外のほかの目的のために転用することには慎重でなければならず、大規模にわたる開発行為は基本的に適当でない…
 特に、市民の安全を守る立場から河川への影響を重要視することが必要であり、今後予測のかぎりでない気象現象などに備えて、安全を確保するためにも、森林の治山治水機能を減退化し、出水増につながる恐れのあるゴルフ場計画を認めることは適当でない、との一致した結論に達したのであります。
 自然環境保全会議からの答申(主文)は別記のとおりです。


大規模開発を抑制

 富士・愛鷹山ろくのすぐれた自然を守り良好な生活環境づくりのための基本となる事項を定めた「富士市の自然環境の保全と緑の育成に関する条例」を昨年12月に制定し、本年3月から施行しています。
 この条例の精神にのっとり、全市民の理解とご協力のもとに、市民の安全と快適な生活環境づくりに向っていろいろな施策に取組んでいます。
 台風や集中豪雨等の自然の気象から市民の安全を守るためには、山ろくの森林の果す治山治水機能など自然界のバランスの保持を特に重視しなければなりません。
 このことは、開発と災害の発生など、各地の事例において厳しく“人災”の指摘がなされていることからしても、私たちは認識を新にすることが必要です。
 毎日、私たちが仰ぐ富士山は、わが国の自然の象徴であり、市民の誇りです。そして、山ろく大地におい茂る“緑”があればこそ、私たちの安全が守られている、といってもいいのではないでしょうか…
 このように、富士・愛鷹山ろくの自然環境は、私たち市民共有の資産でありますので、これを大切に保全し、このすぐれた自然環境を次代へ継承していかなければなりません。
 このためには、これからも富士・愛鷹山ろく地域へのゴルフ場などの大規模な開発は、抑制する基本的な認識に立って、市民のみなさんとともに取組んでいきましょう。

答申の主文

 本市はその都市立地からして、富士・愛鷹山ろく地域の自然環境との一体性の中で、市民の生活基盤と産業基盤が形成され、かつ、人工林を主体とする森林の保続によって安定した生活域が保持されているといえる。
 したがって、われわれ市民生活にとって不可欠な構成要素をなしている自然環境に、人為を加え改変することには極めて慎重な配慮がなされなけれはならない。
 特に、河川機能面からみるとき、富士・愛鷹山ろくに現存する森林は治山治水等の公益機能に大きく寄与し、この森林の自然の恩恵のもとに市内主要河川はその安全が保持されるものであることを強く認識しなけれはならない。
 今後、都市化進展につれて河川への負担が増嵩するなかで、市民を災害から守るためには、富士・愛鷹山ろく地域の森林を引続き保全育成することが必要であり、富士・愛鷹山ろくの自然環境を市民共有の資産として保全するため、この地域への大規模な開発行為は原則として、これを抑制するところでなけれはならない。
 諮問のあった太陽グリーンランド(株)のゴルフ場造成に係る土地利用事業計画について、当保全会議は、植生の保全、治山治水機能の保全,流域河川機能の保全、自然景観の保全周辺農林地への影響、地域生活環境への影響等々に関し審議を行った。
 本件事業計画を自然環境の保全の観点から思考するとき、凡夫川上流部に現存する森林の治山治水機能を減退化し出水増につながる恐れのある本件ゴルフ場造成計画は、凡夫川への安全性の確証が得られないことからしても、これを認めることは適当でない。
- 写真あり -
( 写真説明 ) ゴルフ場が計画された森林地帯=富士本西地先
添付ファイル
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