いけにえの渕 2
そのころ、伝法村の保寿寺に、芝源という立派なおしょうさんがいました。おしょうさんは、なんとかうねめを助けたいとさんまたの淵にやって来ました。「大蛇よ、いけにえをとるなどそんな悪いことをしてはいけない、おまえのおかげで、みんながめいわくしているんだぞ」と熱心にさとしました。
その夜、真夜中のことです。「おしょうさま、おしょうさま」と呼ぶ声がしました。「私はさんまたの大蛇です。いままでずい分みなさまを苦しめてきましたが、今日のおしょうさまのお話で自分の悪いことがよくわかりました。どうぞお許しください。」おしょうさんはそれを聞いてほっとしました。「よし、その話にまちがいはなかろうな。それなら何かしょうこになるものを置いていってもらいたい。」夜が明けると、おしょうさんのまくらもとには、大蛇のうろこが7枚置いてありました。
うねめがいけにえになる日です。うねめの乗った石のかごが、だんだんどす黒くうずを巻いた淵におろされていきます。その時、「お〜い、まてよお」と遠くから走ってくる人があります。保寿寺のおしょうさんです。おしょうさんは、きのうの出来事をみんなに話しました。うねめは夢かと思いました。もういけにえにならなくてもよいのです。
うねめの話は全国に広がりました。うねめは千両とそのうえたくさんのごほうびまでいただいて、お父さんお母さんのまつ熱田へ帰って行きました。
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( 写真説明 ) 保寿寺に保存されている大蛇のうろこ