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【広報ふじ昭和50年】渡辺市長!!今後の行財政運営はどのように

地方財政の危機が叫ばれている昨今、市の財政はどのような状況か−今後の市政運営はどのように行っていくのだろうか−と心配なさっている方が多いかと思います。そこで、渡辺市長に今後の行財政運営、当面する諸問題について伺ってみました。
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◇自治体の財政危機はどうして引き起されたか、またこの危機をどのようにのり切っていきますか−


インフレと不況が地方財政の危機を

 たしかに地方財政はかってない深刻な状態にあるといえます。全国の都道府県をはじめとして、各都市は既に昭和49年度決算見込みにおいて赤字決算を余儀せざるを得ないことが報ぜられていますが、当市はお蔭をもって相当額の繰越し、即ち黒字決算を行うことができます。しかし昭和50年度の市税収入は当初予算で見込んだ額の確保がやっとというところで、殊に法人関係の税収状況は極めて悪くその意味で今後多くの財源を望むことは不可能だと考えています。
 では、どうしてこのような危機に見舞われたかというと直接的には“スタグフレーション”(インフレの中の不況)によってもたらされたところが大きい。より根本的には、高度経済成長政策の下での、中央集権的財政が一挙にその矛盾を噴出させたというべきでしょう。具体的にいくつかの問題点がありますが、国の経済政策が昨日までは高度成長政策であり、今日はよってもたらされたインフレと物価高を沈静させるための総需要抑制政策がとられたわけで、即ち手の裏を返したように低成長時代に入ったわけであります。低成長時代になりますと、日本の税制度では税収は低下するのは当り前であります。そこで税収入が少くなったので一般的にいう財政危機だといわれるわけです。


超過負担をなくし仕事の区分を明確に

 私は我が国の行財政制度には多くの不満をもっています。殊に中央対地方についてで、国民の税金は国が70パーセント、地方が30パーセント、仕事は国が30パーセント、地方が70パーセントのため地方交付税や国庫支出金、補助金という制度で、地方の自主性を拘束しています。その結果国から地方が委任されている仕事に対して、国が支払うお金がきちんと支払いされていないし、また国の補助金にしても補助割合いが決められているにもかかわらず、その割合で補助金が支払われていません。これを称して超過負担といいますが、当市で昭和48年度だけでも約6億円、全国では1,000億円もあるとされています。全国市長会でも政府に対して強く要求して地方の財源を確保していく行動を起しています。更に中央がやるべき仕事と地方がやる仕事を明確に区分して、その費用分担をさせることが大切です。また、当市のような人口急増都市には当然のことながら義務教育施設をはじめとする各面の行政需要が一杯あるのですから、これらの措置に対する制度的なものも大いに注文をつけていくべきだと思います。
 また、反面市政運営に当ってはこうした低成長時代が長期化することを覚悟して能率的、効率的な事務や事業を行っていくことは当然であります。お役所仕事といわれないよう新たな決意で臨んでいきます。2か年にわたって職員の新規採用を中止して人員配置を工夫したり、一般経常費の節減や更には事業の重点主義をとってこれらに対応して参りたいと思います。
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( 写真説明 ) 1週間にわたり市内100数か所を視察
◇9月定例市議会では、補正予算をどの程度考えていますか−


事業の重点的実施を
 
道路より都市排水・河川に政策の転換を
 過日も1週間100数か所にわたる行政視察を行いました。たくさんの注文があります。まず第1番に雨が降ると川や堀がはんらんして、たいへんな災害を受けるということです。私自身、もはや道路より都市排水・河川問題に重点を置いた政策の転換をしていくべきだと考えています。
 しかし、9月の補正で財源の見通しなどを考えると、どのくらいの追加ができるかという点は、非常に希望がうすいわけですが、緊急に必要な所は見ているので、手当てをするべきものについては工夫しながら実施していくし、やるのが当然だと思う。ただ、多くを期待するのは今の状況下ではむりだということです。


◇義務教育施設の充実と県立高等学校の誘致についてはどのように考えていますか−


教育施設の整備に要求が殺到

 PTAの皆さんをはじめ多くの方が非常に心配しているのは義務教育関係で、校舎、屋内体育館、プールなどの要望が殺到しています。これもお金が有る無しにかかわらず、教育が基本である以上、色々な工夫をしながら思いきった措置を行います。
 また、高校について考えてみると富士地区にある中学を卒業して、高校に進学する子供の約1,000人が沼津、三島、清水、静岡に通学しています。このような状況ですからどうしても中等教育の高等学校の設置が必要です。先日も富士地区へ県立普通科高等学校を誘致するため期成同盟会を結成し、私自身が会長となり、いまPTAの皆さんの手をわずらわせながら、全市民の署名活動を行っています。
 この問題については、県知事ともよく話しをしながら早い時期に当地区へ建設できるように猛運動を続けていきます。当然場所選定用地買収などもありますが、方針が決まりしだい、市としてもこれらの問題に決着をつけていきます。
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◇改善されてきたとはいえ、公害問題は重要な課題のひとつといえます。今後の公害行政についてはどのように−


よくなった大気や水質

 公害、環境問題は、おかげさまで大気や水質の関係についてはおおむね軌道に乗っていい傾向を示しています。しかし、現状のままで充分だと思っていませんから、今後も計画どおり進めていきます。
 これまで水質の分析は庁舎内で行っていたが、年間約1,400検体も分析するようになり手狭となったため、旧鷹岡事務所に新しく分析センターをつくりました。ただひとつPCB分析の中で放射線を使う関係について少し遅れているので、近々その分野まで手が出せるようにします。これだけの分析センターは、市町村クラスでは全国一だと思います。充分に利用していきたい。
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においを総量で規制

 このほかむずかしい問題として、臭気と色素の関係があります。においについては、いま公害対策審議会に諮問していますが、総量で規制する方針です。総量規制しないと、一部でよくても片方で悪いということになるので、全体の中でどう対処していくかが重要なポイントです。審議会で対応策ができたようなので、答申を得て実施していきたいと思います。
 色の問題、光化学オキシダントなどについても専門家の手によって調査研究が進められているので、これらの成果を待って施策を展開し、よい環境の中で生活できるようにしていきます。
◇自然保護についてはいかがですか−


 自然保護の問題は、岳南に住む多数の住民の将来展望に立って、人間生活と自然との兼合いを考えながら対処していきます。非常に重要な問題と同時に遠大な計画でありまして日本一の富士山をもつ当市でありますし、富士山麓の自然によって産業が発展し人口も集積してきているという歴史的な事実をよく認識をすべきだと思います。乱開発を規制する方針を変えることはありません。


◇福祉には非常にお金がかかるといわれていますが、かってない深刻な財政状況の中で、どのように充実してまいりますか−


形よりも内容の充実した福祉施策

 福祉関係については、全般的に低成長のもとで財源的にも困難な状況なため、足踏みするようなムードがあります。こうした考えは誤りだと思います。日本の社会福祉はまだ立遅れているのですから、足踏みは許されません。福祉は形だけでなく、内容的にも充実していくことが必要です。特に、福祉は施設をつくればよいというものではありません。その中味が大切であります。福祉を前進させるため特に強調したい点は、福祉は市民全体に支えられているものであり、そのためには多くの市民の協力を得られてそのことが社会全体の連帯責任だという気運を醸成していくことが最も必要だと考えています。
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( 写真説明 ) くすの本学園の作集風景

◇市民の要望が複雑多様化してきていますが、限られた市の財政、動力でどのように応じていきますか−


生活を守るための“住民要求”

 十数年来、市民要求というか住民要求が急速に高まってきております。このことは一面において自治意識が高まってきたことと、生活水準の上昇が価値感を変えたともいえるし、反面、日本経済の不公平さから誘発される社会的要求でもあると考えられます。
 そこで、政治や行政に自分の生活権をどう確立してもらうか、守ってもらうかという要求が自然発生的に「住民要求」「市民運動」という形で出てきます。これは当然のことだと思いますが、低成長時代はなにからなにまで注文されてもおのずから限界があります。行政にしても限られた財源で、どれが市民生活により効果的だという選択をしなければなりません。


自分でできることはやってもらうそこで出た余力を大切な所へ

 ただいえることは、個人のエゴ、地域のエゴだけでは市政運営は成り立ちませんから、住民自身も増えてほしい−。よくいわれるように戦前は義務と忍耐の時代、戦後は要求と権利を主張した時代、70年代後半は自治と連帯の社会に入ったといわれております。
 これからは、自分が住んでいる地域、自らがどうしたらよくなるだろうかという「自治」自ら治めるという発想の中でもはや、個々、地域のエゴではなく地域の連帯性の問題が問われることになると思います。
 たとえば、自分の家の前のドブに砂がたまったからすぐ役所が来てくれという。かりにこのようなことが各所から出され、市が振り回されていては、ほかの仕事に手が回らなくなってしまう。住民自らが地域の問題について、自分ができることならやってもらう−そこで出た余力を市がもっと大切な所に力を注ぐということです。
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( 写真説明 ) 住民自ら地域の問題を考えよう

市民参加のまちづくりを

 最近、市民の中から自分達でできることはやろうというムードが高まってきておりますことは非常に喜ばしいことだと思います。これは何も行政が責任を回避するということでなく、なんでもかんでも市役所に行けばやってもらえるという時代は過ぎたと思う…。その意味で自治と連帯性ある市民というものが望まれてきている時代に入ったと考えます。
 市というものは、市長や職員、議員だけで運営されるものではありません。市民全体が町づくりを考えない限りよい町はできません。このことを特に期待します。
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