いけにえの渕 1
今から400年くらい前、鈴川の6つめがね橋ふきん〈写真〉にあったお話です。大昔から潤井川の川尻は沼川や和田川が落ち込んで、さんまたと呼ばれた青黒く深い淵を作っていました。
そこに一匹の大蛇(だいじゃ)が住んでいました。この大蛇は、大水を出したり暴風をおこして田畑を荒し、お百姓さん達を大変苦しめていました。お百姓さん達は田畑を荒されないよう、毎年6月28日になると15〜16才の少女をいけにえとして大蛇にやることにしていました。
今年も6月になって、みんな庄屋さんの家に集まり、だれをいけにえに選ぶか相談しましたが、いけにえになる少女はなかなか決まりません。いけにえをやらなかったら大蛇は大あばれにあばれて、田も畑もひと押しに流してしまうでしょう。そしたらみんなうえ死にしてしまいます。
いろいろ考えた末、みんなはお金を出しあって、いけにえになってくれる少女に小判千両を渡すという大きな立札を東海道の吉原宿に立てました。
立札のうわさはだんだん広まって尾張の熱田にも伝わりました。熱田にうねめというやさしい少女がいました。うねめのお父さんもお母さんも長いこと病気で寝ていました。うねめの家は貧乏でしたから、もう薬やお米を買うお金もありません。「千両あれば…私がいけにえになろう」うねめはそう決心しました。 (つづく)
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