竹とり塚
いく月かたって、月がおぼろにかすむころになると、かぐや姫は物思いにしずむようになりました。おじいさんとおはあさんが心配して、そのわけを聞くと、姫は泣く泣くそのわけを話しました。
「わたしは月の世界の人間です。今度の十五夜の晩に月からわたしを迎えにくるのです。おじいさんおばあさんに別れなければなりません。それが悲しくて……」と泣きふしてしまいました。
おじいさんは、たとえ月から迎えにきても、姫をわたすまいと数千人の武士にたのんで家のまわりを守ってもらいました。
十五夜の晩がきました。おじいさんとおばあさんは戸じまりをしっかりして、姫をだいていました。やがて月が曇ると東の空から紫の雲に乗った天使が、空飛ぶ車を引いて音もなくおりてきました。天使のひとりが「姫よ!さあ天国へ帰らなければなりません」というと、姫のからだはスルスルと空飛ぶ車の中へ入ってしまいました。
おじいさんとおばあさんはその場に泣きくずれ、武士たちは力がぬけぼうぜんとしてしまいました。
かぐや姫は「長い間おせわになりました。すえ長くお達者で…」と、不死の薬をかたみとして残し、手をふりながら月夜の空にのぼってしまいました。
おじいさんとおばあさんは、かたみの不死の薬を、日本一高い駿河の山に登って燃してしまいました。それ以来、この山のことを不二(ふじ)の山というようになり、煙のたえることがなかったといわれています。
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( 写真説明 ) かぐや姫の竹とり塚