富士市長 渡辺彦太郎
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まさに公害問題など高度成長経済の矛盾に埋没した昭和40年代が過ぎ福祉充実の年、昭和50年の新春を迎えるに当りまして謹んで新年のごあいさつを申しあげます。
昨年は、石油ショックから引続く物価高騰、インフレ不況という経済情勢のもとで市民生活は極度に圧迫されるとともに,建築資材や政府の総需要抑制政策のあおりを受けて、各種建設事業などはかなりの影響を受けたことは事実でありますが、市民生活に直結する生活防衛的施策や未来を託す子供の教育環境施設などは一刻も猶予が許されません。このような困難な時こそ、市民生活の不安を解消し、市民の要求に応えるべき積極的施策を推進しなければならないと考えます。
私は、過去5年間「都市の主人公は市民である」という基本的理念にたち、困難に遭遇すれば勇気を振いおこし、危機に臨めば身を挺してこれを克服する姿勢をもって市政運営に当ってまいりましたが、年改まるを契機に、過ぎし一年をふり返りつつ更に新らしい年への飛躍を期したいと存じます。
まず、私が就任以来市政執行の主柱としている老人やこどもを大切にし、市民の命と健康を守るための施策として、ねたきり老人に対する巡回入浴車「いずみ号」による入浴サービスと医療費の無料化を60才以上に拡大し、心身障害児をもつ親の皆様の懸案であった通園施設「そびな学園」の開園、更には精神障害者医療費助成と重度身体障害者介護手当など、福祉指向の施策を積極的に実施するとともに、公害から市民の健康を守り快適な環境をとりもどすために、環境監視機動隊を発足させ、市民と一体となった環境保全啓蒙運動の展開をいたしております。
また、人口の集中や都市化の進行とともに、富士山麓を中心にした自然破壊が大きな社会問題となっておりますが、当市では専門学者などによって行われた学術調査結果によって、これら富士・愛鷹山麓におけるレジャー施設、別荘等の大規模開発事業は一切認めないという方針を打出しました。この方針は、市民の生命財産の保全を目的とする防災対策であることはもちろん、自然と緑の宝庫であり、かけがえのない国民的資産を守るためにも、富士南麓に位置する私達の当然の責務であろうと思います。
更に、学校数育、社会教育の面では幼稚園小中学校の校舎の新・増改築をすすめるとともに、大自然の中で集団宿泊生活を通じて太陽のように明るい心身ともにたくましい子供を育てる少年自然の家が完成するほか、富士川緑地公園のオープンや大淵地区に建設中の総合運動公園も鋭意事業が進行中であります。なお生鮮食料品を中心とした流通機構の整備を図り、生産物の安定供給の体制を確立するため、約30億円の巨費を投じて建設する公設卸売市場も12月9日起工の運びとなり、昭和51年の3月を目指し、突貫工事に入りました。以上昨年の主たる事務事業の一端を申し述べましたが、折りから地方財政の危機的状況にもかかわらず、いささか意とするところが達成されたことと考えております。
さて、いま新しい年を迎えるにあたりまして、昨年来の悪性インフレ、不況等の経済情勢は更に一段と厳しく、行財政運営はかつてない試練の年となることが予想されます。
しかしながら、インフレによって拡大していく格差と不平等をなくし、激しい物価の高騰から市民生活を防衛し、持に社会的弱者救済のためにきめ細い施策を実行するためには、いささかもちゅうちょしてはならないと考えます。こうした基本的姿勢を踏まえて、現在進行中の各種諸事業の完成を急ぐとともに、国一バイパスの早期完成、富士・吉原海岸の浸蝕防止事業促進ならびに富士山麓の大規模開発の抑止、製紙スラッジの処理問題等には、市議会のご理解と、ご協賛のもとに、全精力を傾注してこれらの解決にあたるとともに現在当市が策定中のシビルミニマムの達成を目標に、より一層の効率的行政運営を図り、市民参加の明るい住みよい郷土富士市の建設に邁進する決意であります。