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【広報ふじ昭和49年】富士市民意識調査

“市民が日常生活を通じて市の行政をどのようにみているか”“何を期待しているか”などを知るために、昨年9月「市民意識調査」を行ないました。調査は市民の生活意識と市政評価、都市づくりと市民参加の2点を中心に18項目の質問を行ないました。この調査結果は、市がシビルミニマム(市民生活を営むうえで、都市が備えていなければならない最低限の基準)や、総合計画をつくるときの基礎資料に使っていきます。調査方法は、まず市内全域から24地点を選び、48年8月10日現在の選挙人名簿から1地点30人、720人を抽出しました。このほか補充分として109人を用意したので、総数は829人です。地域は旧富士、旧吉原市街、東名以北の3ブロックに別けて集計しました。
 調査は横山桂次中央大学教授を中心に、28名の学生の手で、面接調査、調査表の整理点検し、横山教授が調査内容を分析して次のような考察を発表しました。なお、調査に当たり該当者には大変ご迷惑をおかけしましたが、ご協力ありがとうございました。

◇もっと公害に対して厳しい施策を

市民の生活意識と市政評価
多い道路、交通安全に対する要望

■日常意識と実感
 公害を別にして、身の回りでいま一番こまっていることは何か、道路・交通安全、住宅など8つの例を上げて選んでもらいました。
 道路・交通安全28.5パーセント、下水・排水14.2センチメートル、公園・遊び場10.9パーセントなどが多くなっています。しかし、東名以北では住宅、し尿・ゴミ処理が高く新興住宅地としての特色が表われています。
 次に具体的に市の事業に対し市民がどのように評価しているか知るために、身のまわりのことが3〜4年の間によくなっているかどうかを聞いてみました。
 だんだんよくなっていると答えた人は4割以上で、行政の努力をかなり評価しています。しがし、富士42.8パーセント、吉原市街40.9パーセントに比べ東名以北は34.5パーセントと、東名以北では市政が市民の要望に追いつかないためか、評価がやや低くなっています。
 効果があがっているものとしては、全般的に道路・交通安全、し尿・ゴミ処理があげられています。地域別では、吉原市街が下水・排水、社会福祉が高く、東名以北では学校・保育園に対し効果を認めています。


70パーセントが公害対策はまだまだ

 公害は市全体の大きな問題ですから、もっとも悩まされているものをあげてもらい市民の公害意識を調べました。
 大気汚染が32.8パーセント、悪臭24.3パーセント、騒音16.9パーセントの順になっています。この3つを合計すると実に74パーセントにも達します。とくに、大気汚染を指摘する人は3分の1もあり、富士市の最大の問題のひとつが、いぜんとして大気汚染であることを示しています。
 地域別にみると、富士地区では「川や海のよごれ」を訴えるものが、東名以北では「とくに感じていない」という人が他の地域より多くなっています。また年代別では50代、60代にとくに感じていない人が多くいましたが、この年代は住んでいる年数も20年以上が多く、公害に対する“なれ”があるようです。
 そこで、市民が感じる公害が、ここ数年の間に良くなっているかどうかをみてみると良くなったという人は2割に満たず、変らない、ひどくなっていると感じている人が7割近くもあり、地域差もほとんどありませんでした。
 次に公害防止や規制のために、市民は行政に何を期待しているかをみると、約半数の50パーセントが公害防止装置を完備させる、次いで、公害の調査・監視を強化する21.4パーセントが多くなっています。
- 図表あり -
- 写真あり -
( 写真説明 ) 大気汚染の被害がもっとも多い…

老人福祉に高い評価が

■市政の個別評価
 市がこれまで重点施策として実施してきたもののうち、市民によって評価されているものを調べてみました。これは市民が日常生活のなかで経験したり、実感としてもった評価といえます。
 昭和45年以降市が重点施策として掲げたものは
・45年度 公害対策、道路、都市開発、小学校の新改築
・46年度 上下水道整備事業
・47年度 公害対策、緑のまちづくり、下水道整備、ゴミ処理施設、し尿処理施設の改良、老人医療費無料化
・48年度 道路整備、区画整理、市営住宅、上下水道、ゴミ、し尿処理体制の整備、自然保護、市民の森公園、0才児医療費無料化、老人医療費無料化拡充(寝たきり老人60才に下げる)
 以上のなかで、市民にとりわけ評価されているものは老人医療費の無料化です。次いで、市民相談室や懇談会などの実施、公害防止対策の順になっています。
- 図表あり -
( 図表説明 ) 市政の個別評価は


60パーセントの人が医療施設の充実を要望

■施策の要求
 医療施設、公園・遊び場、クルマ対策、老人対策の4つをあげて、それぞれの具体的要望を聞いてみました。

夜間や休日の病院を
 まず、医療施設については6割以上の市民が「夜間や休日にみてくれる病院、医院が少ない」と答えています。これは、実際にそうした経験をもったというより、むしろそんな場合を想定すると不安だということと思います。

気軽に行ける遊び場を
 公園・遊び場については散歩する場所が少いせいか「すぐ行ける遊び場をたくさん作る」が3分の1もありました。公園の要望は各種の機能をもったものに平均化されていますが、この質問では男女のちがいがはっきり示されています。男性ではスポーツ公園、都市公園、森林公園の順になっており、余暇の過ごし方があらわれています。これに対し女性は子どもの遊び場、森林公園、スポーツ公園の順になっています。

安心して歩ける道路を
 クルマ対策では「歩道・車道の区分をつける」と答えたものが3分の1以上おり、これに「安全施設」を要望するものを加えると、5割の人が安心して歩ける道路を求めています。
 市の道路行政に第1に要求しているのは歩行者のための道路整備ですが、それと平行してかなり思いきったクルマ規制をすべきだと考える人も多くいます。

年金の増額を
 老人対策では「年金の増額」を望むものが約38パーセントもあります。次いで、就職のあっせんや働く場所をつくる、老人医療費無料化の年令を下げる、老人のための施設をふやす、の順で、これらの施策や施設が不十分なことを物語っています。
 とくに再就職のあっせん希望者が多く、今後こうした施策がますます重要な課題になると思われます。なかでも若い世代に再就職のあっせんを望む声が多く、親の将来を自分の問題として考えているのではないだろうか。
- 図表あり -
- 写真あり -
( 写真説明 ) 男子はスポーツ公園、女子は子どもの遊び場に要望が


約60パーセントが市政を評価

■市政の全体的評価
 「市民を中心に考える市政」が、市政に反映されているかどうかを聞いてみました。この結果、まあ生かされている52.3パーセント、あまり生かされていない24.5パーセント、十分に生かされている5.7パーセント、まったく生かされていない2.6パーセント、その他14.9パーセントとなっています。
 積極的に評価しているのは5.7パーセントに過ぎませんが、これに消極的評価を加えるとほぼ6割の市民は現在の市政を評価していることになります。この数字は、多数の市民が不満はあるにせよ市政を一応は安定したものとみていることと思います。しかし、積極的評価が少いことは、市政の今後の努力が必要なことを物語っています。


都市づくりと市民参加

■市政への市民参加をもっと積極的に
 今日の地域問題、都市問題を解決しながら都市づくりを進めることは、もはや市議会や行政だけでは不可能になっています。どうしても市民の協力あるいは参加によらなければならなくなっています。「市民のための市政」から「市民参加の市政」、たんに市民の日常的な要求や不満をきくという段階から、さらに進んで都市づくりに市民の創意と自発性を行政に反映させることです。このためには、行政から市民への情報が重要な意味をもっています。
 そこで、市が昭和60年までの都市づくりの目標としてつくった「富士市第2次総合計画」がどの程度市民に理解されているか調べてみました。
 よく知っていると答えたのはわずか4パーセントにすぎず、名前ぐらいは知っているものを合せても全体の3分の1にとどまっています。残りの3分の2の人たちは名前すらも聞いたことがないということです。この総合計画は45年につくられ46年にパンフレットで全戸に配布されています。それにもかかわらず多くの人たちが知らないのは、総合計画の内容がほとんど机上プランであって、市がこの計画を積極的に市民に知らせ、市民とともに計画の実現をはかることをしなかったことも原因となっています。
 総合計画を知った方法としては、広報ふじやパンフレットが67.2パーセント、議員や市の職員から聞いたが12.3パーセントです。


ゴルフ場の開発などには73パーセントの人が反対

■都市づくりと市民の価催基準
 現在大きな問題となっている富士愛鷹山麓のゴルフ場開発問題と、将来ふたたび建設が示されれば市民の強い反対が予想される火力発電所問題をとりあげてみました。
 ゴルフ場開発計画では、自然破壊や洪水などをまねくから認めるべきでないという意見が73.2パーセントで圧倒的に多くありました。これは公害に悩まされている市民が、残された自然環境を守ろうとする意欲の強いことを示しています。しかし、地元の利益につながるから認めるべきだという意見も14.3パーセントありました。
 火力発電所の建設は、半数の市民が公害を理由に反対しています。しかし、それが産業発展に結びつくので、賛成している意見も31.1パーセントあります。なお、市民の38.8パーセントは火力発電所にもゴルフ場建設にも反対しています。これ以上の開発は、産業であれ、レジャーであれ環境破壊につながるから反対だという態度です。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 乱開発にはほとんどの人が反対

公共事業でも生活乱すものには反対20パーセント

■市民参加への態度
 富士愛鷹山麓の開発や火力発電所の建設など市民全体に大きな影響を与える問題を決定する場合、市はどのようなやり方をしたらよいか−。
 市政懇談会などで市民の意見をきき、それを参考にして決めるが3分の2の66.2パーセント、市は市民の判断に従うが21.8パーセントで、約9割の人が市政上の重要問題は行政と議会だけで決定すべきでないと考えています。これらの点に関する限り富士市民の意識は都市型を示しているといえます。
 都市計画なり都市改造など市が行なう公共事業が発表されたとき、どうするか−。
 ほぼ2割の市民は公共事業であっても、生活を乱すものには反対する態度を示しています。これに対し8割近い人たちは補償や公害対策が納得できれば賛成する。さらに積極的に公共事業には個人の利益や権利を主張すべきではないという態度を示しています。
 全体としては公共事業に理解ある態度とみられます。しかし、公害対策や補償が充分であればよいというなかには、対策や補償が充分でないと判断した場合には反対する可能性もあります。

■不満の解決方法
 市の仕事や自分の身近なことで、不満や問題がおこったとき、解決するにはどんな方法が一番早いと思いますか−
 議員、町内会、有力者など人に頼んで解決してもらうが全体の6割近くを示しています。しかし、自分で市役所に出かけたり、新しい住民組織をつくったりして、個人の権利や利益を自主的に市役所に対して主張する形も38.1パーセントと多くなっています。それだけ個人の権利意識が定着したとみられます。この傾向は東名以北の新興住宅地に強く表われています。
- 図表あり -


生活を守る運動には80パーセントが参加

■住民運動への参加態度
 生活環境を守るための住民運動が起きたらどうするか−
 この質問では住民運動への参加意欲がどの位であるか調べてみました。
 積極的に参加する、条件づきで参加の意思を示しているものを合計すると8割以上にもなり、市民の大部分は住民運動に参加する気持をもっています。これは、今日の市民の大多数によって承認されていること、つまり市民が利益を守る運動のひとつの形として定着していることを示しています。この数字はあくまでも可能性を示すものであって現実の住民運動は常に特定地域の小数の人の運動にとどまる場合が多くなっています。しかし火力発電所のような全市的問題には多くの市民が参加する可能性もあります。
 年代別でみると40代と60代に積極的に参加しようという人が多く見られ、住民運動が地域に定着し、生活を支えている人びとの運動であることを示していると思われます。
- 図表あり -
( 図表説明 ) 住民運動への参加態度
- 写真あり -
( 写真説明 ) 市政の重要問題は市民の声を参考に
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