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【広報ふじ昭和48年】富士・愛鷹山麓の調査診断中間報告

 富士、愛鷹山麓地域に、ゴルフ場や別荘地などの開発計画が相次いで出てきたため、無計画、無秩序の開発を防がなければなりません。このため市は、4月から来年3月までの1年間、山麓地域の大規模な土地開発を凍結しました。
 そこで、市民の共有的財産である山麓地域の自然を守るため5月に専門学者、市民、市職員で「富士・愛鷹山麓地域の自然環境保全と土地利用計画調査委員会」を組織し、新しい観点から調査研究にあたっています。調査委員会は、専門学者などによる「学術調査」と市民参加による「意識調査」を行なう外部調査研究、市職員による内部調査研究に分かれそれぞれの分野を通じて調査を行なっています。
 調査項目は、地形・地質・水文(地下水、河川)、気象 植生、生物相、土地利用保全、住民意識、施策への堤言の7分野で、各調査項目別の調査班を組織しました。
 これまで、各調査班による調べも順調に進んでいますが、このほど、気象調査班、植生調査班など5班から中間報告がなされました。
◇地形・地質・水文調査

開発が進むと少しの雨でも洪水の危険が

 地形・地質・水文(地下水、河川)調査班は、開発によっておこる流出の変化をテーマに研究を進めています。
 開発が進むにつれて、雨が下流地域にどのような影響をあたえるか調べるため上流部の開発が進んでいる伝法沢川と、まだ比較的開発されていない凡夫川で、流域の雨量と流量を観測しました。この結果、開発が進み森林が少なくなると、同じような雨の降り方でも、水の出方が早くなり、一度に流れ出る量も多くなります。したがって、少しの雨でも洪水が発生しやすく、下流地域では水害発生の確立が高くなります。
 地形・地質について行なっている研究のうち谷密度についてみると、谷密度は山頂付近と山麓に低く、中腹で高く、とくに標高800〜1,200メートルの部分で最も高くなっています。少なくとも富士市域では標高1,000メートル付近の斜面が最も侵蝕速度が大きく進んでいます。いい変えれば、この付近が最も雨量が多いことを示しているかもしれません。したがって、このような地帯を不用意に開発して森林がなくなってしまえば、侵蝕はますます早くなり、洪水や土石流の発生が多くなります。これらの被害は、いずれにしても下流の山麓地帯や平野部に発生することはいうまでもありません。
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( 写真説明 ) 各調査班から中間報告が
( 写真説明 ) 凡夫川で流量などを測定

◇気象調査班

標高300メートル以上の地域は低地の3〜4倍の雨量が

 気象調査班は、富士・愛鷹山麓地域の気候の特性や自然環境の変化、気象、気候が、住民にどのような被害を与えてきたか、などを調査しています。
 富士市の災害は、静岡県災害誌によるとこれまで水害が一番多く発生しています。水害の原因となる降雨量は、全般的に標高が高くなるにしたがって増加する傾向があります。たとえば標高300メートル以上の地域では、低地(80〜300メートル)の3〜4倍の降雨量が発生する可能性も考えられます。
 水害の発生は、河川流域の土地利用の移り変わりにも関連があるので、凡夫川伝法沢川、滝川について調べてみました。この結果、上流では今も昔もあまり大きな変化はありませんが、下流域では宅地化が急激に進行しています。したがって土地利用や開発にあたっては、水害に対する対策を慎重に検討しなけれはなりません。特に標高300メートル以上の地域には、集中豪雨の可能性が高いので、上流や中流地域で土地利用を安易に行なうことは大変危険です。


◇植生調査班

残された自然を大切に

 植生調査班は、山麓地域の自然がどのように残されているかということをまず調べ、それをもとにその自然を保護していくにはどんな方法がよいかということが調査の目的です。
 富士・愛鷹山麓の中核は、いうまでもなく自然景観です。山麓に残された自然は少なく標高1,300メートル付近のブナ林,スギ天然林、250メートル付近の社寺林などにすこし残っているスダジイ林などは保護していかなければなりません。富士山や愛鷹山の自然に手を加えるなら、自然の原則にそって実施しなければなりません。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 調査委員会で現地視察
◇生物調査班

62種の蝶類を確認

 生物調査班は、主として昆虫類を捕食するクモ類や昆虫の代表として蝶類、甲虫類、これらを捕食する鳥類について調査を行ないました。
 富士山の蝶類は、これまで富士山域全体で115種が確認されています。日本産蝶類が220種であることを考えると、富士山域全体で115種が確認されています。日本産蝶類が220種であることを考えると、富士山域は実にその半数が生息している地域といえます。今回の調査では、クロアゲハ、コムラサキなど62種の確認にとどまりましたが、一応、環境別の蝶類の特徴はある程度知ることができました。
 甲虫類はルイスオサムシ、コクロシデムシなど62種類を採集しましたが、現在作業を進めています。
 鳥類の調査は、繁殖後期になったため十分な調査とはいえませんが、カッコウ、ホトトギス、シジュウカラなど39種類を記録しました。
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( 写真説明 ) 生物調査班による昆虫採取


◇住民意識調査班

ゴルフ場建設に賛同者なし

 住民意識調査班は、住民が日常生活を通して、自然環境をどのように考えているか調べるとともに、住民の生活構造をつかむことが調査の目的です。そこで、市内に住んでいる成人500人を対象に、個別訪問して面接調査を行ないました。
 調査の結果によると、市民は自然のなかに配置された市民施設の整備にむしろ積極的であるといえます。しかし、レクリェーションのための交通手段として自動車を利用していることが多く、山麓に新しい市民施設を整備すると、道路網の整備が必要になります。ところが林道の整備や改良は、とかく周辺開発の導火線となり、自然環境の保全と矛盾してくるおそれがあります。
 また、開発そのものに対して、市民みずからの参加という方法がとられる限りにおいて、全面的に反対していないことがわかりました。しかし、ゴルフ場や大規模なレジャーランドといった、地域の大きな移り変わりに対しては、強い拒否反応が出ています。ゴルフ場建設に対しては1人の賛同者もありませんでした。
 したがって、今後、富士山南麓における保全・利用計画を策定していくにあたっては、市民の積極的参加を進めていくことが重要です。
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