【広報ふじ昭和48年】自然環境と土地保全
富士愛鷹山麓を総合的に調査診断
富士市内の富士山や愛鷹山麓地域は、これまで近隣市町にくらべあまり開発されていませんでしたが、最近ゴルフ場や別荘地などの開発計画が相次いでいます。なかには、活発に土地買収を進めているものもあり、標高400メートルから900メートルにかけた地域で、約1,400ヘクタールにも及ぶ広大な山林が開発されようとしています。
一度自然を破壊してしまうと再びもとの状態にもどすには長い年月が必要です。また、開発は自然を破壊するだけでなく、自然界のバランスをくずし災害を発生させます。
といって、広大な山麓地域をこのままにしておくことは不可能です。自然環境を守り効果的な土地利用をはからなければなりません。このため、市は大規模の土地開発を1年間凍結し、有効的な土地利用計画を策定するため、科学的専門調査を5月から49年3月まで行ないます。
標高200メートル以上の地域を調査
これまでの土地利用計画は、開発に重点がおかれ、自然環境の保全に対する配慮がなされていなかったといえます。この開発優先が各種の環境問題を引き起してきました。
富士市もその例外でなく、公害間題をはじめ幾多の都市問題を引き起していますが、最近、環境整備とともに自然保護と緑地保全についても、積極的な推進策が住民、行政の共通課題となっています これらのことを考えると、今後の土地利用については、「開発計画」と「保全計画」を同じ水準におき、地域の環境容量を住民の合意のもとに、つくらなければなりません。
特に、富士市内の富士、愛鷹山麓は住民生活に重要な係わりを持つ地域なので、常に植林なども行ない保全をはかってきました。しかし、山麓全域にわたる「自然環境と土地利用」については、部分的に行なわれているにすぎませんでした。
このため、富士市の都市問題施策の一環として、富士・愛鷹山麓の標高200メートル以上の地域の自然生態系の解明と、土地利用にあたっての科学的調査を実施します。この調査結果は、富士市の自然環境保全対策などの指針となります。調査は専門学者、市民、市職員で「富士・愛鷹山麓地域の自然環境保全と土地利用計画調査委員会」を組織し、新しい観点から調査研究にあたります。
植生や地形など8項目を
調査は専門学者、調査協力委員による「学術調査」と市民参加による「意識調査」を主体とする外部調査研究、市職員による内部調査研究とに区別し、それぞれの分野な通じ必要な基礎調査、分析、診断、計画の樹立を行ないます。
調査事項は、学術調査が地形や地質植生、気象、住民意識など8項目で、それぞれを専門学者が担当します。なお、学術調査委員には、次の8名の方にお願いしました。
■地形・地質・地下水・河川=原昭宏(愛知教育大学助教授)
■植生=奥富清(東京農工大学助教授)
■生物相=品田穣(文化庁文化財保護部記念物課)
■気象=三寺光雄(気象庁気象研究所)
■土地保全=田畑貞寿(東洋大学講師)
■住民意識=山本伸晴(東洋大学社会学部大学院)
■施策への提言=西尾勝(東京大学法学部助教授)、糸賀黎(環境庁自然保護局企画調整課)
市職員による内部調査研究は、土地保全(利用構想)の検討を中心に進めていきます。委員には青木武雄助役、西条弘企画調整部長、影山辰男総務部長、山本政雄衛生部長、小沢健夫経済部長、広瀬弘行都市開発部長、中川克美建設部長、長洲幹彦水道部長の8人です。
開発の波おしよせる山麓一帯
市内におけるゴルフ場などの大規模な施設や開発計画は、県市、民間を含めると28か所、2,112ヘクタールに及んでいます。
ゴルフ場関係では、現在大富士ゴルフクラブ1か所ですが、十里木カントリークラブが建設中でまもなく完成します。
このほか計画中のものとして、8か所あります。既設と建設中のものは58ヘクタール、36ホールで、計画中のものが1,391ヘクタール、293ホールとなっています。そのほとんどが標高200メートルから950メートルの地域です。この地域は、ほとんどが自然林、人工林で形成されており、総面積は約10,000ヘクタールあります。したがって、ゴルフ場建設計画は1,391ヘクタールですから、そのまま計画が進められると、この地域の14パーセントに当る面積が開発されることになります。
また、別荘地の造成計画は7か所あります。これらもゴルフ場計画と同じように、標高200メートルから1,000メートルにかけて計画されています。造成が計画されている面積は347ヘクタール。ゴルフ場建設計画と合わせると2,278ヘクタールにもおよび、200パーセントから1,000メートルの地域の約23パーセントが開発されることになります。
- 図表あり -
( 図表説明 ) 富士・愛鷹山麓のゴルフ場造成計画
- 写真あり -
( 写真説明 ) 計画中のゴルフ場は8か所293ホール
恥かしかったタバコの投げ捨て
一家そろってピクニックに出かけることなどは久しぶりのことだ。たまには家庭サービスも良いものだと思いながら、ハンドルを握る手も軽く、丸火自然公園に車を走らせた。車の窓から、どんどん走り抜けていく新緑が、目にしみ入るようであった。仕事のわずらわしさから解放され、後ではしゃぐ子どもたちも、うきうきしている。私も上気嫌でタバコを楽しんだ。
「パパ!タバコはちゃんと吸いがら入れに入れなくてはダメだよ。」なんの気なしにポイと捨てたタバコに、子どもが叫んだ。一瞬、私はハッとし、自分の行動が恥かしく思えた。そういえば、途中の道路には、ゴミがあちらこちらに捨てられていた。古くなった自転車やタイヤなどが、もう君の生命は終わったんだよといわんばかりである。周囲の緑が、長い眠りからさめ、新芽をふき出している時だけに、いっそうあわれに思えた。(石坂・渡辺)
- 写真あり -
( 写真説明 ) 山間部にゴミの山が……
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