【広報ふじ昭和48年】富士503計画を実施
青い空、きれいな空気を取り戻すために昭和50年度を目標に「富士503計画」を実施します。富士503計画は、公害対策審議会から答申された「当面維持することが望ましい値0.03PPm」を達成するためにたてられたものです…………。
環境目標値を50年度までに0.03PPmに
「富士503計画」は、富士市公害対策審議会から答申された「イオウ酸化物に係る基本的な考え方」を基につくられました。その答申は大別して次の5項目にわけられます。
第1は、市民の健康を守るために、昭和50年度までにイオウ酸化物の年平均1時間値を0.03
PPm以下にする。
第2は、達成するための方法は地域の汚染濃度、環境目標値との割合いに応じて汚染物質の総排出量を規制する。
第3は、総排出量は経済成長率を見込んだ量とし、規制は公正に実施する。
第4は、環境目標値を達成し、さらによりよい環境を回復するためには、企業努力はもちろん、適切な行政指導を実施するべきである。
第5は、工場の新増設、煙源の改善などを行なうときはイオウ酸化物だけでは、粉じん、チッ素酸化物についても考慮する。
「503計画」とは……
富士市を住みよい環境にするための対策を、みなさんに理解していただき、親しんでいただくため、審議会の答申の柱となった「昭和50年度までに0.03PPm以下」という環境目標値と達成年次からつけたものです。
なお、審議会は昭和50年度までに0.03PPmにするのが望ましい環境目標値であって、それで市民の健康を守り、住みよい町になるとは答申していません。すでに国でも昭和52年度以降は、0.02PPm以下という目標値を検討しています。また、現在、県が作成中の第4次公害防止計画でも昭和52年度までに0.015PPmから0.018PPmにすることを目標に検討されています。
したがって、市は昭和50年度までには責任をもって環境目標値を達成し、よりよい環境づくりを進めていきます。
「503計画」の概要は後で述べますが、昭和50年度には市内のどの地域でも亜硫酸ガスの濃度を0.03PPm以下にするため、総排出量を規制し、煙突ごとに削減率をだして、各工場ごとに最大排出量を決めたということです。
環境目標値を達成するにはどのくらい削減すれば……
環境目標値の0.03PPmを達成するには、だいたいの削減割合いをださなければなりません。そこで、審議会の小委員会で検討された「比例モデル」を採用しました。この比例モデルというのは、もっとも汚染されている所の濃度と、亜硫酸ガスの総排出量との割合いをみて、その量を減らしていくという考え方です。
従ってたとえば、市内でもっとも汚染されていると思われる富士保健所を0.03PPm以下にすれば、その他の地域も0.03PPm以下になるということです。こうしたことをもとに試算すると、昭和50年までのだいたいの削減割合いは50パーセント前後になります。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 煙突ごとに亜硫酸ガス排出量を規制
亜硫酸ガスの排出規制を富士市独自の方法で
法律による規制は、亜硫酸ガスの量を煙突の高さに応じて地上濃度で基準を決めています。したがって、1本1本の煙突は基準を守っていても、工場が密集していると重合したり、複合して高濃度の汚染が現われます。
このため、先進都市では早くから亜硫酸ガスの総量を規制する方法を検討してきました。大阪府や川崎市では地域やブロックごとに亜硫酸ガスの総量を規制しています。しかし、富士市の場合は工場地帯と住居地帯の区分がむずかしく、地区やブロックの決め方ができません。
そこで、だれにでも理解でき、効果があり、実現できる、富士市独自の削減方法を検討してきました。
その方法は、昭和46年度に実際に測定した資料をもとに、「どこの煙突が」「どの地区を」「どのくらい汚しているか」ということを調べ、汚している程度に応じて削減率を決めるというものです。これは、全国でもはじめてで、富士市独自の削減方法です。この富士方式は、長い年月と、ぼう大な資料、関係機関の良き指導があってはじめて完成したものです。
煙突ごとに汚染状況を拡散式で推定
ある煙突が、どの地域を年間平均して汚しているか、ということを推定する方法を「拡散理論」といいます。拡散理論は、第一次世界大戦のとき、ドイツ軍が有毒ガスを風上で放出したら、どの範囲を、どれくらいの濃度で拡散するか、ということを推定したのがはじめだといわれています。今日では煙の広がりと濃度を推定するために、いろいろな式が発表されています。日本でも大気汚染防止法にそのうちの一式を利用し、排出基準を決めています。
しかし、この拡散式は、広くて平たんな地形には比較的に合うといわれていますが、富士市のように地形が複雑なところでは、実測と合うのがむづかしいといわれています。
このため、富士市域の模型をつくって煙の広がりを調査する風洞実験、ヘリコプターを使って高度別に煙を出して流れを調べる実験、また地上風や1,000メートル以下の高度別の風向風速などを調べました。
その結果、富士市の気象は富士山、愛鷹山、富士川の彰響な受け、まったく複雑な表われ方をすることがわかりました。 その資料をもとに、富士市の年間の代表的な気象現象をだし、資料を十分に活用できる拡散式を求めました。拡散式を求めるために、気象観測とその解析は日本気象協会に委託し、理論については気象庁気象研究所の指導を受け、計算には市の電子計算機をフル活用して実施しました。
採用した拡散式でだした推定濃度分布は、実際に測定した数値と多少の差がありました。拡散式によるものはあくまでも推定値ですが、実測値との相関は十分考えられるので、煙突ごとの削減割合いをだしました。
計算の結果、昭和46年度にもっとも汚染されていたのは今泉地区と依田橋地区であることがわかりました。47年度に設置した基準観測局の今泉小学校に高濃度が出現していますので、それを裏付けています。また、このことは煙突の高さが30メートル以下の場合は、比較的気象に左右されず、つねに3キロ範囲にその排出量の70パーセント以上が着地するということからも十分に理解されます。
今泉地区と同じように中小工場が集まっている伝法地区(弥生通り)や鷹岡地区も同じことがいえますので、削減割合いを上乗せしていくことになります。
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( 図表説明 ) 実測値・計算値別の濃度分布図(実測は46年度・単位はPPm)
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( 写真説明 ) 計算では今泉地区にもっとも高い汚染濃度が……
■503計画の対象地域は180平方キロ
503計画の対象地域は、西は富士川から東へ15キロメートル、南は海岸線から北へ12キロメートルの180平方キロメートルです。180平方キロメートルのなかに基点を市庁舎に置き、1平方キロメートルの格子に切り1平方キロメートルごとの平均濃度を計算でだしました。
この推定濃度は、煙突ごとに影響を調べて出したものですから、環境目標値を達成するには、どの煙突を、どれくらい減らしたらよいか、ということがわかります。
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( 図表説明 ) ブロック別の濃度推定図(単位PPb)
平均56パーセントのカットで目標値を達成
前にも述べましたが、おおよその削減割合いを50パーセント前後という考えを基本に作業をすすめてきました。ところで、工場の密集などによって汚染濃度は平均していませんので、すべての煙源を同じにカットすることはできません。したがって各煙突ごとにカット率を計算した結果、最終的には最低で30パーセント、最高で70パーセント、平均すると56パーセントのカットをしなければ環境目標値を達成できないという結論が出されました。
削減の対象になる煙突は133本ありますが、この内訳は次のとおりです。
- 図表あり -
すでに施設改善などを行なっている企業は…
前段で各煙突に対するカット率を出しましたが、すでに亜琉酸ガスの除去や煙源の改善を行なっている企業と、そうでない企業があります。前表の削減率にはそうした企業努力が考慮されていません。
これは答申にあった「公正」を欠くことになり、行政指導を行なってきた効果も生されていないことになります。
計算の結果をみてもそうですが、過去に高い濃度が測定された原因は、低い煙突によるものと考えられ、煙源の改善などによって高い濃度が減っていることが実測されています。
過去におけるこうした企業の努力をプラス、マイナスして、それぞれの削減率に補正をしました。
各煙源に対しそれぞれカット率を補正
どの地区でも目標値を達成できるように…
削減率に対する補正は二つの方法で行ないました。
第1の補正は次のように行ないました。大気汚染防止法の適用を受けた昭和44年には、市内には対象になる煙突が26本ありました。その平均は22.4メートルで、全国でもっとも低い煙突の平均値でした。このため、低イオウ化や排煙脱硫をするまえに、まず煙源の改善が必要でした。
大手企業は基準の先取りを含めて余裕のある高さに改善し、中小企業は排出基準を守るために新設やかさ上げをして煙源を改善してきました。今日ではこうした努力によって、70メートル以上の煙突が21本になり、平均は47メートルと大幅に改善されました。 昭和46年以降は施設ごとの排出基準でなく、集合煙突による排出基準(K値)を守るよう指導してきました。現在ある133本の煙突を集合方式でK値をだすと、平均6.06になり、基準(K=7.59)以下になります.しかし、煙源別にみると最高は18.42から最低1.39とバラツキがありますので、それをそれぞれに補正しました。
第2の補正は、各ブロックごとの削減率に対して行ないました。180平方キロメートルの範囲内のどこでも目標値を達成しているかどうか検算し、再度の補正をしたものです。この検算による補正によって、どの地区も環境目標値を達成できる見通しになりました。
以上の二つの補正が最終の削減率となり、各煙突ごとの最大排出量を設定しました。
50年度のイオウ酸化物の排出量は……
昭和46年度のイオウ酸化物の排出量は195.6トンと推定されますが、これを削減率をあてはめると、昭和50年には総排出量は96トン(51パーセントカット)になります しかし、経済成長などを見込み、行政担保を1割確保したので、最終削減率ほ56パーセントになり、各工場別の最大排出量は86.4トンになります。
この数値ですと昭和50年度には環境目標値の0.03PPmを十分に達成することができます。しかし、この目標を達成するには燃料の確保、脱硫技術の開発などまだまだ多くの問題があります。
とはいっても、市民の健康を守り、住みよい生活環境にすることが何よりも優先されなければなりません。そのためには、市は適切な行政指導を行ない、企業にも最善の努力をさせます。と同時に、この富士市に青い空、きれいな空気を取り戻すため、市民みなさんの総意として計画を推進するためご協力なお願いします。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 煙脱などの施設改善をした企業には補正を
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