【広報ふじ昭和47年】山麓の雨水の地下浸透を調査
富士山麓一帯の豊富な雨水や雪どけ水は、マサ層によって、地下になかなか浸透しにくく、ほとんどが地表水として駿河湾に流れ込んでいます。このため、この水を地下水として利用することができないか、市では農林省農業土木試験場土地改良第2研究室長の落合農学博士に調査を依頼していましたが11月29日から1か月間、大渕の落合町と勢子辻の2か所で実験を行なっています。
マサ抜きをすると“水”はよく浸透
富士市は豊富な地下水によって発展してきました。この地下水は、富士山麓一帯に降る雨や雪どけ水が6,000年という歴史をへてためられたものです。しかし、工業の特色から豊富な地下水も多量に汲み上げてしまったので、水位が低下し塩水化を引き起すなど、水不足は深刻な問題となりました。このため、人工的な地下水源のかん養を十分検討しなければならない段階になりました。
とくに、富士山の降雨量は年平均2,000ミリ程度あるにもかかわらず、富士山麓特有の不透水層となっている“富士マサ地帯”が分布しているため、雨水のほとんどが地表流水となって駿河湾に流れてしまいます。
この水を地下水として、何とか利用できないか、落合博士に調査を依頼しました。落合博士らによる調査は、一般に富士マサと呼ばれているジヤリマサ、エカスマサなどが、雨水の浸透をどの程度拒み、水がどのように流れるかを放射線などを使って実験しました。実験は大渕の落合町と勢子辻の2か所へ、試験地をつくって行ないましたが、試験地には長さ25メートル、幅1メートル、深さ60センチメートルの溝2本をつくりました。1本は富士マサを取り去って埋めもどし、もう1本はそのままにして、溝の中央に5本のアルミパイプを立て、一定量の水を人工的に流し、パイプの中に放射線水分計を入れて、水の浸透幅量などを測定しました。
11月29日から3日間の放射線を使った実験調査では、落合町の場合マサを抜いた溝は浸透性が良く、放水後7分で地下50センチメートルまで達しています。マサを抜かない溝は、放水後1時間たっても、地下30センチメートルにも達せず、横へ浸透してしまいました。勢子辻では、マサ抜きをした溝が36分で地下50センチメートル、マサを抜かない溝は1時間たっても地下への浸透がほとんど見られませんでした。しかし、測定を打切る直前アルミ管の周囲に「タテ」に空洞ができそこから相当の速度で地下へ浸透しました。この結果、場所によっては、不透水層をタテ穴で抜くことによって地下水の賦存がはかられることにも実証されました。
マサ層は広範囲に分布
富士山ろく地域のマサ分布面積は、これまでの調査などから98平方キロメートルにわたっていると示されています。この分類としてジヤリマサが24平方キロメートル、エカスマサが74平方キロメートルと富士宮の山間部から大渕地域に帯状に分布しています。
マサ層は地表から平均3メートルぐらいの所に層をなし、緊密なので通気や透水性が悪く、作物の成長をさまたげ、干害、湿害を起し、土壌の侵蝕を招きやすく、農業に大きな障害となっています。
富士西ろくのマサは火山砂れきと玄武岩質で表面は黄色、赤褐色、黒灰色などで、岩石のような硬化したものもあれば指で簡単に砕くことのできるものもあり層の厚さは平均50センチメートルぐらいと思われます。それでは、ジヤリマサとエヤスマサの特質は−
ジヤリマサは火山砂れき層または火山泥流砂れき層で、きわめて固く、なかにはコンクリート状のようになっているのもあります。火山砂れき層の大部分は、円状の砂で形成されています。厚さは場所により数メートル以上のものもありますが、平均50センチメートルぐらいの層になっています。
砂れき層のうちでも強く固まっているのは、上部だけであり、特に地表に近い部分にこのような傾向が見られます。分布地域としては、富士宮市の上井出付近から万野原新田、大渕中野付近まであって、比較的広い扇状地をなしています。
エカスマサは玄武岩質のスコリア層が緊密化したものと、堆積後移動して他の土層とまざり緊密化したものなどがあります。表面は小起状に富むもので、山ろくの降雨量から見て、水蝕による移動集積はかなり活発に行なわれるものと考えられます。また、スコリア粒子はきわめて風化が進み他の粒子とまじるので、ジヤリマサなどと比べると粘土分が多く、固さも少ないので、手で砕くこともできます。粒子は玄岩質で、黒灰色、コークス状で、風化すると赤褐色となり無数の亀裂ができてポロボロに砕けやすく軽くなる性質をもっています。
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