【広報ふじ昭和47年】昭和50年度までに環境目標値を0.03PPmに
住みよい生活環境をつくるため、昨年11月に市民ぐるみで審議する「公害対策審議会」を設け、渡辺市長が第1回の諮問を行ないました。この答申が4月27日にありました。答申をどうするか、これから具体的な施策を検討し、昭和50年までに、大気の汚れを防ぎ、住みよい環境づくりを行ないます。諮問事項、答申内容は次のとおりです。
イオウ酸化物に係る環境基準達成計画の考え方を諮問
富士市は、自然の資源と地形的な条件にめぐまれ、紙産業を中心に工業生産都市として発展してきました。しかし、産業の発展は私たちの生活を豊かにした反面、大気汚染をはじめとする各種の公害問題をひきおこし、私たちの健康や動植物の生存をおびやかす状態になっていることは、みなさんすでにご存知のとおりです。
こうした状態は、私たちの生活と自然環境を破壊していることです。したがって、公害のない明るい町づくりを進めるには、自然環境との好しい関係を取りもどさなけれはなりません。
このため市は昭和45年12月に「公害のない明るい町づくりのための基本方針」を定めました。基本方針は大きく3つに分けられます。
第1は、富士市は市民が健康で安全、かつ快適な生活環境を保障する義務があること。
第2は、市民の健康と生活環境を守ることは、すべてに優先すること。
第3は、公害の発生はすぺて発生原因者の責任であること。
この基本方針を実施するには「現状がどうであるのか」「それをどうするか」「本来はどうあるべきか」というルールで進めることが必要です。ということは将来の目標を定め、現状を正しくは握して、適格な対策をたてなければならないということです。
富士市の公害問題のうち、イオウ酸化物による大気汚染は、過去5年間の実測資料、気象観測資料もまとまり、汚染の現状、濃度分布の算定、発生源の実態などが明らかにされています。今後は、住みよい環境づくりをするにはどうしたらよいかという段階になりました。
そこで、昨年11月に市民ぐるみの審議機関である富士市公害対策審議会(百津孫一会長)を設け、「イオウ酸化物に係る環境基準達成計画の基本的な考え方」について、渡辺市長が第1回の諮問をしました。
富士市独自の規制を検討
市内のイオウ酸化物の量は年ごとにふえています。しかし、富士市にはイオウ酸化物の排出規制や工場立地規制などの権限はなく、国や県の法的措置の範囲内で規制しています。ところが、法的な措置や指針だけでは規制は困難です。住みよい環境をつくるには、地域の実態に適した富士市独自の方法を見い出すことが必要です。
そこで、諮問事項は次の3点について行ないました。
1、燃料の燃焼によって発生するイオウ酸化物の総量はどこまで許されるか。それをどんな方法で規制すべきか。
2、工場ごとに排出量を定める方法について。
3、環境の場における規制について。
審議は市民の環境権確保を原則に
諮問を受けた審議会は、専門的に検討するため1月に小委員会(委員長山本丈夫薬大教授)を設け、次のことを審議の基本にして答申(案)を作成しました。
■審議するための基本事項
1、「公害のない明るい町づくりのための基本方針」の精神を正しく理解して審議する。これは、市民には一種の「環境権」があり、それを確保することがすべてに優先することを大前提に考える。
2、公害対策は感情論で行なうべきでなく、常に科学的に行なう必要がある。しかし、現時点では科学的に行なうには不十分なことも多いので、最善のものを見つけて採用する。
3、企業に対する制限や指導は、長期的な見通しをもって行なうべきで、企業の最大限の努力によって実現の可能性が十分にある具体策を答申する。
4、諮問事項にはイオウ酸化物だけを取り上げたが、実際の大気汚染はほとんど他の汚染物質との複合になっているのでイオウ酸化物は大気の汚れを示す一つの示標にする。
以上のことを基本に、環境基準の検討、人体影響、富士市総合開発計画との関連、エネルギー施策の検討などを審議し、4月27日に答申がだされました。
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答申内容
▼富士市民の健康を保全し、住みよい生活環境を確保するため、富士市におけるシビルミニマムとして、昭和50年度のイオウ酸化物の環境目標値を年平均0.03PPmにする必要がある。
この目標値を達成するには、燃料の確保、脱硫技術の開発など困難な問題が予測されるので、適切な行政指導を行なうべきである。
▽富士市は、国の環境基準(年間1時間値0.05PPm)を達成しても、市民が健康で安全な生活環境を回復したとはいえません。国の環境基準改正がまだ明確にされていませんが、厳しい基準値になることが予測されます。しかし、市独自に昭和50年度の目標を0.03PPmに定め、今からその対策を実施していくことが必要です。
目標値を達成するには、企業の責任と努力がなによりも必要です。それとともに、低イオウ燃料の確保、技術開発、経済的な指導などに行政が適切な指導をしていくことが必要です。
▼環境目標値(シビルミニマム)の達成については、現状の富士市内の最大汚染地域の濃度と目標値の割合いに応じて、市内全域のイオウ酸化物の総排出量を規制する必要がある。
▽市民はどんな所に住んでいても、環境目標値以下のきれいな空気を呼吸する権利が保障されるべきです。したがって、市内の最も汚染されている地域を目標値以下にし、現在あまり汚染されていない地域は現状維持することが必要です。
このためには、市内のイオウ酸化物の総排出量を規制することを考えなくてはなりません。これを実施するには、工場ごとに負荷率(どの工場が、どの地域をどれくらい汚しているか)を定めていくのが、一番いい方法です。
▼イオウ酸化物の総排出量は、地域開発や経済成長を見込んで、既存施設の排出量削減計画を明示し、確実に実施していくため、公害防止協定の締結などの措置を講ずるべきである。
▽長期的な視野にたって排出規制をするには、産業の発展、エネルギー使用量の自然増などを正しく見込み、既存施設の排出量削減計画をたてなければなりません。そのためには、市が各企業に対して削減率を明示し、企業の最大限の努力を求めていくことです。以上のことを確実に実施するには、企業と協定などを取りかわしていくことが必要です。
▼環境目標値を達成し、さらによりよい環境を回復するには、イオウ酸化物の発生源である燃料、製造工程の改善、脱硫技術などの指導を行なうとともに、工場立地規制をはじめとする汚染防止の地域改善計画を総合的に樹立すべきである。
▽環境目標を達成しても、よりよい環境にするための努力は必要です。しかし、これを実施していくには企業の努力だけではなかなか困難です。
そこで、市が富士市の特徴をとらえて総合的な計画をたて、積極的に進めていかなくてはなりません。なお、中小企業に対しては公害防止のための費用の長期貸付けなどを考慮することが必要です。
▼汚染源の改善、工場移転、工場新設などのときは、総排出量規制を考慮するとともに、浮遊ばいじん、窒素酸化物などの排出についても総合的に考慮すべきである。
▽大気汚染はイオウ酸化物だけで起るものではありません。その他の汚染物質も「イオウ酸化物の特別排出基準」に準じて規制するべきです。特に、浮遊ばいじん、窒素酸化物は厳しい規制が必要です。
▼公害の状況を正しくは握し、公害防止に関する規制措置、および協定事項の履行、確認などの監視体制はもちろん、公害行政の充実をはかり、その状況を市民に公表すべきである。
▽国、県あるいは大阪や横浜などの政令市とちがい、富士市には規制する法的な権限がありません。富士市の公害行政を進め、住みよい環境を回復するには、市民の正しい認識と企業の責任の自覚がなくてはなりません。
そのためには、市民に正しい情報を伝えるように努力すべきです。また、企業の努力を正しく評価できる態勢をつくることが必要です。
答申を受けて
富士市長 渡辺彦太郎
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私は、昭和45年に市長に就任してから、市民すべてが“住みよい環境”で生活できるように、公害防止に努力してきました。その一つとして今回「望しい生活環境を作るための考え方」について諮問しました。
答申された「イオウ酸化物の環境目標値は0.03PPm以下が望しい」ということについては、富士市の実状をよく理解し、現状を踏まえたものであると思います。この答申をだすために努力された委員のみなさんに深く感謝いたします。
これからは、答申されたものをどうするか、公害課が中心になって具体的な実施計画を作成し、議会、公害対策審議会にはかり、実行に移していきます。そして、目標値を一日も早く達成していきます。しかし、行政がいくら努力しても目標を達成することはできません。企業の努力と市民の正しい理解がなくてはなりません。富士市をだれもが住みたくなる町にするため、私は全力投球をしてまいりますので、みなさんのより一層のご協力をお願いします。
添付ファイル
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