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【広報ふじ昭和47年】富士市長に聞く昨年(1971)と今年(1972)2

“公害防止”市民のなかに根をおろす

記者
 富士川火力、そして、こんどの終末処理場建設をめぐる一連の公害問題をキッカケに、富士市にも住民運動の目ばえ、いやそれ以上のものが出てきたように思うね。ことわっておくけれど、結果がいいか、悪るいかは別ですよ一。
記者
 公害は繁栄のヒズミくらいにしか考えていなかった市民が、口ぐせに“公害”はいやだというムードが、市民の中に一歩一歩根をおろしているといえると思うな。
記者
 僕は富士川火力のときにくらべて“公害反対”が純粋になってきたような気がするね。
記者
 それは、どうかな。
市長
 公害が困る、なんとかしなくちゃというのは、19万人の市民の共通の願いであり、最大の課題ですからね。
記者
 そういう意味でも、企業も住民パワーにおされて、仕方なく“公害防止”をやるんじやなくて、どんどん先取りしてやるくらいの責任がなくては、ダメだよ。住民も納得し協力もしないと思うんだ。
記者
 企業も行政依存をほどほどにしないと、だめなんじゃないのかな。自立精神をつちかわなくては…。
記者
 自己処理(*企業が個々に、法律にあうように水をきれいにして、排出することになった)をするには、敷地がない、金がないからつぶれるというが、実際は一軒だってつぶれたりしないし、転業も廃業もないんだからね。やれば、できるんだよ。
市長
 それは簡単に結論づけるわけにはいかないと思うんですよ。私が終末処理場に固執したのは、水をきれいにするだけでしたら個別処理も可能なんです。しかし、あとのスラッジの始末、焼却、それをまた、運ぶ交通事情を考えたから、個別処理を積極的に業界にもいえなかったわけです。公害対策は局部的なものでは解決できないと思うんです。都市全体の中で考えていかなければ、恒久的な方策にはならないんじゃないですかね。もちろん、一たん、自己処理が決まったからには、法は守ってもらわなくては困りますがね。
記者
 “ザル法”と批判されないように毅然とした姿勢で望んでもらいたいな。
記者
 僕はね、終末処理場がご破算になったことで、いま市長がいわれるようにそれぞれ功罪があると思うんですよ。市サイドからみても罪ばかりだけじゃないと思うんです。僕が一番評価していることは、企業が自分たちの手でやらなければいけない−という自覚をしたということです。とにかく、これまで行政は、企業に依存させるような、姿勢をとってきたと思うんです。行政がそういうものを続けていこうとした結果が、終末処理場と思うのだが。
市長
 行政というのは市民全体のことを考えて、対処しなければなりませんからね…。

’72年市民ぐるみの緑化運動進める

司会
 公害問題の論議は、つきないと思いますが、この辺で、みなさんの目から見た渡辺市政3年目に対する期待感みたいのものを聞かせては、いただけませんか。
記者
 われわれの言う前に、市長の考え方を聞かせてもらいたいな。いま、ちょうど新年度予算の編成期でしょ。財政の見通しや具体的な施策といったものを…
市長
 そうですね。新年度予算を編成するにあたって、一言でいえることは経済が好転しないかぎり、税収の歳入増が期待できないので、近年にない苦しい台所になると思うね。しかしね、金がないから何にも出来ないじゃ困るので、行政のムダなものはできるだけ省いて、前向きにやりますよ。基本的な方針は、昨年進めた4本の柱(*1.健康と安全を守る快適な環境づくり、2.都市基盤の整備、3.教育環境の整備充実、4.こどもの健全育成と老人福祉)を中心に今年もやっていきたいと考えています。中でも、富士駅前や庁舎周辺の開発、住工分離をはかる企業の団地化、社会体育施設の整備、緑のまちづくり−といった快適な都市生活を再現する行政を進めたいと思っています。それから役人のカンや経験だけでは、総合的な地域開発をしていくことがなかなかできないので、コンピューターシステムを、もっと充実していきたいと思っています。
記者
 グリーン作戦は、大いにやってもらいたいね。しかし、理想論だけじゃ困りますよ。遠大な計画はもちろん必要なことだが、だれでも木を植えられる、例えば一軒一鉢とか、子どもが生まれたら記念に苗木を無料でくれる−といった身近かなことから、やってもらいたいね。

足りない文化・スポーツ施設

記者
 僕らが転勤で富士駅に着いて、アッと驚くのは、ここが富士の玄関口かということですよ。田舎の駅前広場って感じだな。住民も本気になって改造をやる必要があるじゃないのかな。
記者
 富士、吉原,鷹岡の核を結ぶ幹線道路を早急につくることが大事じゃないかと思う。何につけても、合併前の3つの核が大きくたちはだかって、スムーズな運営がされていないような気がするね。渡辺さんが、3つの核を払いのけるような施策をしたら、ほんとの“革新”だと言う人もいますよ。
記者
 僕は20万都市にしては、あまりにも文化施設やスポーツをする場所がないと思うんだな。皆無といっても、いいんじゃないのか。
記者
 有形、無形の文化財保護はもとより、自然の保護に力を入れてもらいたいね。とどまることをしらない開発を、野放しにしておくと大変なことになるね。例えば、僕は釣りが好きだから言うんじゃないが、須津川の“ヤマメ”、なんかの保護も考えてもらいたいね。あれは貴重な魚ですよ。市民にうるおいをもたせる施策をどんどん進めてもらいたいね。
市長
 みなさんから、いま忠告を受けたように、どれもこれも必要なことはわかっていても、財源難などから市民の要求をさばききれない、うらみもあります。しかし、昨年から森林公園を5か年計画で着手もしたし、総合運動公園も青写真が描ける段階にきています。市民プールは今年中につくりたいと思っています。公民館活動の拠点となる社会教育センターの建設にもとりかかりたいと思っています。祖先の遺産を残す郷土史料館のようなものは、今年は無理としても、ぜひつくりたい施設ですね。
記者
 3年越しになっている産業廃棄物処理場の建設の見通しは、どうです。
市長
 大渕富士本町のみなさんをはじめ地元の方々のご理解も得られつつあるので、今年中には何んとか具体化したいと思っています。
記者
 河川浄化にもっと本腰をいれてもらいたいな。どこの川もきたないね。市民のモラルに訴えるしかないかもしれないが、折角ある河川課の方でも、もっとリーダーシップを発揮して、どんどんやるべきじゃないのかな。
記者
 川といえば、富士団地の排水をさばく滝川は、あれで大丈夫かね。あのままでは、和田川の二の舞を踏むことは、必至だね。

市民意識を高めるムードづくりを

記者
 ほかの自治体で、ぼつぼつ始めた老人医療の無料化はどうですか。どうも渡辺さんは、おとしよりに冷たいようだが…。
市長
 老人福祉は、市政の重点事項にかかげてやっていますよ。老人医療の無料化は、国県のかねあいがあるので、市独自の考えはありません。ただ、今年中にオープンさせる社会福祉センター(*老人、身体障害者、心身障害児、母子世帯の人たちが、レクリェーションと機能回復に利用するところ)を充実するので、そうした中でカバーしたいと思っています。
記者
 市役所は立派だが、ほかの公共施設の管理がどうもいただけない感じがするんだな。例えば町の中にある公園なんだが、折角つくっても、あとの管理が悪いので、草はぼうぼう、小石はごろごろ−あれじゃ利用する人なんかいないと思うよ。
記者
 同感だが、僕は市民意識というか市民の方も反省する点があるんじゃないのかと思う。公共施設は誰れがつくったわけではなく、一人一人の税金の結集だってことを忘れちやいけないね。
記者
 そういう意味で、昨年ある会社の従業員が“われわれが手本になろう”といって、会社ぐるみで海岸の清掃をやったが、こういう市民意識を大いに育ていく必要があるね。
記者
 官制だけではうまくいかないね。市民がやる気をおこすようなムードづくりを、大いにやってもらいたいね。

市役所の沈滞ムードふきとはせ

記者
 ムードといえば、僕は取材をして感じるんだが、市役所に沈浄ムードがただよっているような気がするね。渡辺さんも、もう2年も市政をやってきたのだから、おおよそのことは、わかったはずだと思んだ。今年は、思いきった人事の刷新なんかもやってみて、職員のエネルギーを、市民のために引き出してもらいたいね。
記者
 大いにやってもらいたいね。
記者
 そのとおりだね。
市長
 いろいろ勉強させていただきます
記者
 勉強だけじゃ進歩はないと思うね実行に移してくださいよ。市長が口ぐせのようにいう“19万人”の市民が、市長の勇気と英断を望んでいると思うんです………。
司会
 今日はお忙しい中を、ヘドロ問題にはじまり、一連の公害に対する市長の姿勢、あるいは、市政の各般にわたる、貴重なご意見ありがとうございました。これからも、どんどんご批判をうけたまわりたいと思いますので、よろしくお願いします。
 では、この辺で……。
市長
 ありがとうございました。(おわり)
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