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【広報ふじ昭和47年】富士市長に聞く昨年(1971)と今年(1972)1

新聞記者 新春座談会 渡辺彦太郎

出席者
富士市長    渡辺彦太郎
- 写真あり -

朝日新聞   熊川亮記者
サンケイ新聞 小串勝征記者
静岡新聞   天野正治記者
東京新聞   山田元春記者
日本経済新聞 北島洋次郎記者
NHK    中津川貞記者
毎日新聞   池田文洋記者
読売新聞   高山次彦記者
司会 企画調整部長 西条弘
(五十音順)

 富士市政は「生活行政の推進」を基本方針にかかげ、みなさんと一緒になって、問題の解決と、富士市の未来像の追求につとめています。しかし、この市政に対する評価はどうか一日頃、富士市の取材にあたられている富士記者クラブ加盟8社の記者と、渡辺市長に、昨年の回顧、今年の抱負、期待などを話しあってもらいました。

’71年ヘドロに明け ヘドロに暮れる

司会
 今年は、渡辺市長が市政をおあずかりしてから3年目なるわけですが、予算の裏付け面だけからみると、昨年が実質的な新年度ともいえるわけです。その1年間を一言で回顧するならば、かつて経験したことのない“大変な年”だといえそうです。
 その辺のところから、お聞かせいただきたいと思います。
記者
 ヘドロに明けて、ヘドロに暮れた365日じゃなかったのかな。
記者
 全日空機遭難事故という飛入りもあったが、やっぱりヘドロ処理に終始した1年といえるね。
記者
 消防署の119番応答なしもあったけど。あれは市民の非難を浴びたね。
記者
 僕は、全日空機事故のあとでこの町にきたので、終末処理場建設問題が、一番印象に残っている。
記者
 ヘドロにからんだ、富士市政がどうだったかということになるんじゃないですか…。ヘドロ退治は、富士市民の共通の願いだと思うんですよ 
記者
 私も同感だね。
市長
 みなさんのご指摘のように、ヘドロ処理に東奔西走の1年間でした。ジャーナリストのみなさんからみれば、ヘドロ処理は一歩も前進していない。といわれるかもしれないが、曲りなりにも“ヘドロ退治”ができる機運が高まり、一つの見通しがたったと思っています。
記者
 しかし市長、一昨年が公害告発の年であり、昨年はその解決をはかる年としてスタートしたと思うんだが、期待どおりに進行できなかったというのが、本音じゃないですか。
市長
 残念ながら、そんな結果になってしまいました。
記者
 問題は今年に持ち越されたということですね。
記者
 旧ろう、再び県から田子の浦のヘドロ処理(*田子の浦港にたい積している約130万トンのヘドロを、春までに30万トンを富士川河川敷で処理する計画)をやりたい、という話しがあったが、これとても、港のヘドロをこう処理していくという全体計画といいますか、抜本的なものを立てて、やるということじゃないようですね。今回もその場しのぎのようですけれども…。
記者
 だから、そういうところから見ると、まだ、メドがついたというのは早すぎるような感じがしますね。
市長
 ヘドロ対策(*田子の浦港のヘドロ処理と発生源対策のこと)のちゃんとした見通しができたのか、といわれるとまだ、相当問題があるので、ここで、自信をもって“イエス”とはいえないのですが、昨年来の問題をキッカケに、一つの手法を進める基盤ができたことは確かなんです。
記者
 ヨチヨチ歩きをはじめたという感じですね。
記者
 それも、自力というよりも、法によってがんじがらめになったから…。
記者
 一連の住民パワーによる公害告発によって、遅々ながら企業も目ざめたことは確かだな。
記者
 企業が公害にほんとうに目ざめたかには、僕は異論があるが、一つの公害に本腰になって取組みはじめたことは、評価に値いするんじゃないかな。
記者
 企業も、住民に言われたから、法律ができたから−公害防止をするんじゃなくて、モラルというか社会責任において、公害をなくしていって、もらいたいものだね。

公害対策審議会の諮問に期待

司会
 “ヘドロ対策”は、富士市にとって確かに重要な問題ですが、そのほかの点については、どうですか。
記者
 ぜん息児童の医療救済(*市内の小学6年生以下の児童が、公害病に認定されると無料で治療を受けられる)は、渡辺市政のヒットといえるんじゃないかな。
記者
 それに関連して、この2月ころ、国の公害病認定地域の指定があるようだが、それによって国の方の認定を受ける患者も何人かでてきますね。そうすると市独自の医療救済に幅というか、例えばそれ以外の地域とか、年齢の幅を広げる考えはありますか。
市長
 え一。その落ち穂ひらいをやらざるを得ないんじゃあないですか。国は線引きをやりますからね。線引きからはづれたものについては、認定委員会の認定さえあれば、救済していかなければならないと思います。
記者 
 しかし市長、医療救済はあくまでも消極的な戦法ですからね。公害をなくすことが一番いいんですから。それがすぐにできないならば、医学的治療しかないわけですね。しかし、富士市の場合は中央病院の空気清浄器くらいでしょ。もっと治療器具をそろえるとか、大学病院とタイアップして専門医の治療も受けられるようにしてほしいものだね。
市長
 一生懸命やらせていただきます。
記者
 先ごろできた公害対策審議会(*公害をなくすためにできた市長の諮問機関で、29人の委員で構成されている)は注目すべきことですね。
記者
 僕は審議会委員の選抜方法に、若干疑問があるんですがね。というのはメンバーの中に、市民代表が何人か入っているけれど、大学の先生などの専門家の人たちと、同一問題を検討しあうことに問題があるような気がするんだな。市民代表が折角参画しても、その人たちの意志がどれくらい審議会の中に反映させられるか、など疑問が多いんだな一。
市長
 いいですか。公害対策は専門的な係数や方程式がなければ、理論的な裏付けができないと思うんですよ。しかし、私が市民代表の方々に期待していることは、例えば、大気汚染については、今、国が示している環境基準(*国の基準は0.05PPMになっている)で富士市民はいいのか、もっと、きびしい基準にしろという意見があるのか−そういった公害退治の市民の生の声を聞くために、お願いをしたわけなんです。
記者
 わかりました。公害対策審議会に大いに期待しましょ…。
記者
 市民が総ぐるみで公害防止に取り組んでいる、わが国の地方自治体のモデルケースにしてもらいたいものだね。

打ち出したい渡辺カラー

司会
 渡辺市長は就任いらい、市民生活を優先する、いいかえれば、誰もが住みたくなるような都市づくりをしたい、という姿勢で市政にあたられているわけですが、そこらあたりの評価はどうですか、ズバリ言ってください。
記者
 どうも、行政の中に渡辺カラーが出ていないような気がするね。
記者
 僕も、いままで市長は、あまりにも大過なく過そうという、なまじ“革新市政”のレッテルを張られているばかりに、それにちぢこまりすぎている気がするね。もっと、市民のために“大過”をおかしてほしいと思うんですよ。
記者
 大きな問題に忙殺されすぎましたかな。
市長
 具体的に渡辺カラーといわれても困るんですが私の気持は、いつでも市民サイドに立った物の考えをし、実行に移しているんですよ。しかし、ある一面では、この2年間に私のとった姿勢で市民からご批判もあるかもしれません。私はね、日本国中がそうであるように、富士市も終戦後4分の1世紀の中から生まれた難問題があまりにも多いんですね。当面こうした課題を始末することに専念せざるを得ないんですよ。ある場合には、取り組み方で“高姿勢”とおっしゃられるかもしれませんが、その辺のところをご理解いただきたいんですが…。
記者
 僕はね、前市長でもできたものを渡辺市長がやっても“革新色”は出ないと思うんですよ。いわゆる保守の市長だったらできないものを、やるべきじゃないのかな。どうです市長さん。
市長
 うん……。
記者
 残る2年間に、どのようなカラーを出していきますか。
記者
 その前に、僕がお聞きしたいことは、ほんとうに市長が、私は革新という立場で、市政を行なってきたか、どうかなんですが…。
市長
 いまの日本の都市問題の中で“革新市政”とは何だといったら、「市民サイド」の政治をするということと、私は思うんです。私はこの道を真っ直ぐ進むつもりでいます。
記者
 渡辺市政は、この2年間、市民の上に立った市政をやりたい、ということで、やれアンケートだ、懇談会だといって、市民の声を吸いあげてはみたものの折角の声が、どうも市政の中にはねかえってきていない感じがしますね。これは市長ばかりせめられないことだが、市の職員も“市民のための行政”に本気になってもらいたいね。笛吹けど踊らずじゃ市民が不幸ですよ。
記者
 渡辺市政は間口を広げすぎたという見方もあるが、僕は非常にいいことだと思うんだ。渡辺市長は、公害除去のピンチヒッターだけで市長の座についたわけじゃないのだから。それと、極端にいえば郷土愛みたいなものを、どうやってかもし出していくかという“至上命令”があって登場したと思うんだ。だから、市長はもっと間口を広げるべきだし、広げ方が少ないような感じもするね。
記者
 広げるだけじゃ意味はないよ。広げたらそれを生かさなければ…。
記者
 市民党市長といわれる渡辺さんが全力投球した終末処理場の建設(*中小120工場の製紙汚水を富士岡耕地で1か所で処理する計画だったが、地元の反対で建設できなかった)の波紋は大きかったね。
市長
 うん…。不徳のいたすところです市民の方々にいろいろご迷惑かけたことを、反省しています。
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