ある救急隊員
○月○日 専用電話“119番”がけたたましく鳴る。「交通事故です。○○町○○屋の前で単車の人がたおれています」小雨の降る中を現場に行くと、近所の人がけが人をバスタオルなどにくるみ、保温しながら救急車のくるのをまっていてくれた。人のことには無関心な風潮のこのごろ、見知らぬ人を助けてくれた人たちの暖かい心が感じられうれしかった。
○月○日 「娘が睡眠薬を飲んだのです早くお願いします」母親のことばは悲壮であった。患者を病院に収容したのは出動して5分か6分くらいたってからだ。しかし、C病院では診断手続きだの、母親からの事情聴取に時間がかかり、医師がきたのは15分くらいしてからだった。服毒患者は素人が考えてもー刻も早く胃を洗浄しなければならないのに……。
○月○日 久し振りに東名出動。現場は薩垂峠の少し手前で署から約30分。患者は出血がひどく路上に伏せっていた。すでに県警の東名分遣隊の検証がはじまっていたけど、患者に手当がしてなかった。清水の病院に収容したが、翌朝死亡の連絡を受けて暗い気持ちにさせられてしまった。
○月○日 岳南鉄道で衝突事故が発生したという連絡があった。救急車2台で現場に向う。現場に着いて負傷者が多いので民間の救急車はもとより、消防車にも出動を依頼してピストン輸送で作業をすすめた。負傷者の収容をすませ、一息つくとともに多くの人命をあずかる輸送機関のミスに怒りを感じた。