【広報ふじ昭和44年】44年度施政方針
3月定例市議会において、斉藤市長がのべた44年度施政方針の大要をご紹介します。
公害対策など5施策を推進
新生「富士市」が誕生してから、早くも2年有余が経過しました。この間、市勢もたゆみない伸長を続け、本年3月1日現在の人口は17万4,884人で、増加数は約1万人です。
昭和43年における農業生産額は46億円で、昭和41年に対し11億円の増、商業販売額は690億円で昭和41年に対し140億円の売上増となっています。また、工業出荷額は昭和41年の1,811億円に対し、昭和43年の推計は2,400億円と、いずれも驚異的な伸びを示し、名実ともに東駿河湾工業整備特別地域の中核都市である「青年富士市」の面目躍如たるものがあります。
予算編成には経済の動向と国の予算が地方財政へおよぼす影響を念頭におき、既定の行政経費の再検討を行ない、消費的経費の節減をはかりながら投資的経費の充実につとめ、均衡のとれた財政運営をはかります。これをもとに、住民福祉の向上を根底とする社会開発、経済開発のための諸施策を推進するとともに、市の象徴である新庁舎建設事業を最重点項目としておしすすめてまいります。
また、長期ビジョンを基本とした富士市第2次総合開発計画の策定も重要であります。この計画は、昭和45年度を初年度とし、昭和50年を目標とする6か年計画で、これを前期と後期にわけ、現在の新都市建設計画も組み入れます。なお、新計画の策定については審議会を設置しますが、審議会は市長の諮問機関とし、議会の代表、一般市民代表の参加を得て審議をしていきます。
新年度の一般会計予算総額は53億2,400万円で、42年度の当初予算37億7,260円に対し41パーセント増の15億円余、43年度の43億4,500万円に対して23パーセント増の9億円余と、大幅な伸びを示しています。
また、国民健康保険事業を含む特別会計18会計の予算総額は10億7,899万円、水道事業、病院事業の両企業会計予算総額は11億7,214万円です。あわせて22億5,113万円で、前年との対比は30パーセントの増となっています。
さて、私はこれらの予算を通じ、新年度の重点施策として、次の5点をとりあげてまいりたいと考えております。
すなわち
第1に市庁舎の建設と事務合理化の推進
第2に道路交通行政の推進
第3に産業公害ならびに都市公害対策の積極的推進
第4に社会福祉施設の拡充整備
第5に教育施設の整備
であります。
1.庁舎建設と事務合理化
新庁舎の完成こそ私の信条とする、市民総親和のなかの、明るい市政運営の基調であると確信し、重点施策の第1にかかげた次第であります。庁舎建設の基本理念である「市民のために働くことのできる庁舎」「市民に喜んで来庁していただける庁舎」としての設計を完了し、すでに昨年12月には起工式も行ないました。
なお、この財源措置ですが、庁舎建設のために他の諸事業に圧迫を加えることのないよう配慮しました。新年度は庁舎建設費として総額8億9,000万円を計上しました。このうち、1億6,000万円を市債に求め、5億3,898万円を積立金の繰り入れなどで措置し、一般財源からは1億9,101万円のみを計上しました。
事務合理化計画の推進は、合理的な事務処理体制の確立こそ、地方自治体に課せられた責務であると感じ、この問題に積極的に対処してまいります。このため42年12月に設置した事務合理化委員会を中心に、組織機構の改革、窓口事務の統合、文書管理体制の明確化、電子計算システムの確立をはかっていきます。これにより、企業的経営精神の導入をはかりつつ、可能な限り事務能率を高め、財政圧迫の要因の一つである、人件費、物件費を抑制して、効率の高い財政運営を行ないます。
2.道路交通行政の推進
さいきんの自動車台数の驚異的な増加は交通禍はもとより、都市機能をもマヒさせかねない状況にあります。この対策として、道路網の整備、交通安全施設の充実こそ、市民の日常生活における安全確保のうえからも最も緊要な施策と考えます。
具体的には、予算総額の21パーセントに相当する11億1,597万円を土木費に計上し、道路の改良舗装、都市計画街路の築造、庁舎関連道路の改良などを重点的に配慮しました。また、市民からの強い要望のある本州製紙南側水路の駐車場化、吉原市民会館前広場の利用について、新しい観点から対処するため駐車場特別会計を設置しました。
交通安全対策は、前年度に引き続き一般市道の安全施設整備、通学路の安全施設整備を行なうとともに、国、県に当市の交通事情に適応した対策が講じられるよう働きかけていきます。
3.産業公害ならびに都市公害対策
公害発生の防止は一朝一夕に解決できるものではありません。新年度は「大気汚染防止法ならびに騒音規制法の地域指定」とともに、市民が良好な環境のなかで健康な生活ができるように対策を講じます。このため、科学的な根拠にもとずく長期的公害防止計画の策定、汚染状況観測体制の充実強化などを実施していきます。特に長期的公害防止計画の策定については、電子計算機を活用して、既存企業の大気汚染発生源別影響率を算出する作業を行なっており、近くその結果を得ることができると思います。
このデータを基礎に各企業別に改善を指導するとともに、具体策については、それぞれの企業と防止協定を結ぶ努力をしていきたいと考えています。
都市公害対策は、ゴミ収集車の整備と定時収集による収集業務の近代化、家庭汚水の排除、浄化などをすすめます。また、畜産公害に対してもこれを防止するため積極的に行なっていきます。
4.社会福祉施設の拡充整備
私は健全な心身に恵まれない人の救済と更生をはかることが、政治にもっとも必要なことだと確信しています。社会の連帯意識を基礎に,国、県、福祉団体と協調をとり、積極的に市の施策を推進するべきと考えております。予算として民生費に4億4,550万円を計上しました。
具体的な施策としては、15歳以上の心身障害者が社会活動へ復帰できるための通園施設を、市立ふじやま学園の隣りへ建設します。さらに、交通事故などによる18歳未満の遺児を対象にした福祉手当20歳未満の在宅重度心身障害児を対象とした福祉手当を新設しました。今後はさらにこれらの制度を充実させていく考でおります。
5.教育施設の整備
教育施設の整備は、次代の富士市をになう青少年の能力開発の基礎的条件ですので、例年重点施策として取り上げています。新年度は総額7億9,122万円を計上しました。
このうち、小学校施設の整備として鷹岡小学校、富士第二小学校の改築、吉原団地の小学校敷地造成、岩松小学校のプール新設を行ないます。
中学校施設の整備は、大淵中学校の改築、吉原第三中学校の体育館新設、富士中学校の給食施設、元吉原中学校の特別教室などの整備を行ないます。また、富士南幼稚園(仮称)の新設も行なっていきます。
以上、5項目を重点施策とし、その大要を申し上げました。このほか、商工業および農業の振興についても、積極的な配慮をいたしました。
すなわち、中小企業の労働力不足への対応策、業界の基礎的総合診断の実施、融資制度のわくの拡大などをはかるため労政費ならびに商工振興費として7,552万円を計上しました。土地改良事業費には市債負担1億8,960万円、農林業の振興対策費としては2,851万円を措置しました。
市立病院の増改築事業
■水道事務も一本化はかる
企業会計、特別会計の20会計はいずれも重要ですが、ここでは国民健康保険事業および病院、水道事業について申し上げます。
国民健康保険事業特別会計の予算総額は5億9,300万円で、前年度に比べ26パーセントの増となっています。これは制度の改革、医療費の増加によるものと考えられます。
この歳出規模に対し、国庫支出金、保険税によるのが当然ですが、いろいろな情勢から一般会計から前年同様3,000万円を繰り出し、この運営を助成することになりました。
病院事業会計について申し上げます。市立病院の増築事業は、起債の獲得に努力してきましたが、3億2,000万円の企業債が認められ、新年度完成をめざし、近く着工することになりました。
経営収支は、現状の施設を最大限に活用し、効率的な運営を行ない、できるかぎり増収をはかっていく考えです。しかし、人件費の増加などにより、一般会計から3,360万円の繰り出しを行ない、収支の均衡をはかりました。
次に水道事業会計です。この会計は新市が発足してから3水道方式で行なってきました。これを、経費の節減と事務能率の向上をはかるため、新年度から3水道の事務を一本化し、予算の編成を行ないました。なお、料金の改訂については合併したときの事情もありますので、ただいま検討しています。
■既存の公害対策にはきびしい態度で
次に、当面する市政の重要な課題について申し上げ、みなさんのご協力を得たいと思います。
まず第1は富士川火力発電所問題です。私は、さきごろ開かれた市議会合同委員会で所信を表明しましたが、既存公害の対策などもおおかたの見とおしがついた現在、東京電力の回答を誠意あるものと認め、富士市として諸条件を了承する時期であると判断したのです。
この問題の経過をみてみますと、昨年3月22日に建設協力の申し入れを受けてから、1年間にわたり市当局、市議会が一丸となり調査、研究をすすめてきました。この調査結果を、前例がないと言われるきびしい条件、20項目にまとめ会社側に提出しました。その後、会社側と数多にわたって交渉を重ね、これを全面的に受け入れるという回答を得たのです。
私は、今後とも18万市民の快適な生活環境を保持するために、決意を新たにして本問題ならびに既存の公害対策には、きびしい態度でのぞむ所存でおります。
第2は国道1号線バイパス、国道139号線バイパスおよび東名高速道路関連街路についてです。
これらについては、新市が発足してから早期実現をはかるため積極的に運動を続け、いずれも明るい見とおしとなりました。
国道1号線バイパスは、すでに着工され,依田橋以東の路線決定も近く行なわれることになりました。139号線バイパスおよび東名インターと国道1号線を結ぶ都市計画街路、田子の浦臨港線も近く路線の決定、着工の決定などが行なわれる予定となっています。
以上、新年度予算を中心に施政方針の大要を述べました。
予算総額76億円におよぶ超大型予算を執行することは、今後の財政事情を考えるとき、容易ならないきびしさを感ずるものがあります。特に、一般会計における29億9,200万円の市税収入をはじめ、財源の確保につとめることはもちろん、それぞれの実施にあたっては、私をはじめ職員一同が総力を傾注していきます。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 施政方針をのべる斉藤市長
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広報広聴課 (市庁舎8階北側)
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